淡い恋とブルセラ

あれはぼくが中学二年のことだった。

その秋、僕は、とある女子校の文化祭に行った。

「また文化祭かい」というあなたの声が聞こえてきそうだ。

だが、こういう事件があったのだからしかたない。

その女子中学は、小田急線沿線にある中高一貫の私立学校で、そこそこ名の通った女子校だった。

なぜだか知らないが、そこの文化祭には、ウチの野郎どもをたくさん発見してしまったのを

いまでもよく覚えている。

その女のコの名前は、ここでは仮に「由佳」ちゃんとしておこう。

その仮名の由来はいまグラビアアイドルの頂点に立つ「優香」からきているのだが、

その理由はいずれわかるだろう。

由佳ちゃんは、目立って美人だった記憶がある。

お互いに中学二年の話だが、彼女が模擬店で働いてた姿はいまでも鮮明に覚えている。

僕「あ、コーヒーとクッキー下さい」

由佳「はい。少々お待ち下さい」

そして出てきたコーヒーは一杯200円もしたのに、非常に薄かった。

おそらく、各自が前日に焼いてきたであろうクッキーは、管理状態が悪かったのか、しけっていた。

ぼったくりやん。

もしここが女子校でなく男子校だったら間違いなくケンカになっていただろう。

っていうかそのまえに来ていない。

それでも文句を言わなかったのは、由佳ちゃんがびっくりするほど美人だったからだった。

でも、お金とクッキーを同じ手で扱うのはよくなかったよ。

どちらが先に声をかけたのかは覚えていない。

しかし、それまでの行動パターンからして、

まちがいなくオレだ。

天気が悪かったことも幸いして、お客さんの数は少なく、由佳ちゃんを含む数人は、

僕らと話すヒマがあったみたいだった。

っていうか、外にでて営業活動しろよ。

まあ、売上が予定以下でも問題はないらしかったが。

それでも、カネゴンとか一生懸命働いてたやん。

カネゴン「由佳ちゃん、ちょっとこっち手伝ってぇ〜」

由佳「ええ〜、やだぁ〜」

カネゴン「だって、今はまだ由佳ちゃんの当番だよ」

由佳「うっさいんだよ

このときの由佳ちゃんは、怖かった。美人は美人にはやさしいけど、

そうでないコには厳しいのかもしれない

そんな会話を楽しみながら、いつのまにか時間はたち、

「文化祭終了の時間になりました。お客様は速やかにお帰りくださるようお願いします」

という悲しいアナウンスが入った。

結局3時間ほどそこにいた計算になる。

由佳ちゃんは結局仕事をカネゴンにおしつけたままだった(笑)。

 

その後、校門の外で彼女らを待っていると、大粒の雨が降ってきた。

僕は用意よく折りたたみ傘をもっていたのだが、

友人らは持っていなかったので、一本の傘にオトコが肩を寄せ合うという

非常に気持ち悪い姿がそこにあった。

しかし、立ち去るわけにはいかない。

だって、数少ないチャンスを捨てるわけにはいかなかったからだ。

しばらくして、彼女らがでてきた。

どうやら、彼女も傘がないらしい。

友人と由佳ちゃん。

僕は迷わず、選ぶことができた。

駅までの道のり、

「濡れてない?」

といいつつ肩を引き寄せる図は、エロオヤジそのものだったに違いない(笑)。

中学二年にしてすでにオヤジ化現象が入っていたとは、

自分でも驚きである。

そのあと数人で新宿のシェーキーズに行ったのであるが、

そこでウィンドーガラス越しにうちの親父が休日出勤帰りに

僕らを発見し、微笑を浮かべて通りすぎたのは、いまでもからかいのネタになっている。

僕には忘れたい過去の一つだ。

なぜなら、その日、小遣いに困った僕は、

「駿台の試験受けてくる」

といって小遣いをせしめ、家を出たからであった。

浅はかな考えで行動した、雨の秋の日であった。

 

続く

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