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本書は、安政五年(一八五八)日本との通商条約交渉のために来日したエルギン卿使節団を運んだ
フューリアス号艦長、イギリス海軍士官シェラード・オズボーン(Sherard Osborn. 1822-1875)が著した
Japanese Fragments, with facsimiles of illustrations by Artists of Yedo. London,
Bradbury and Evans, 1861の全訳である。
1856「年イギリスが再び中国との交戦となったアロー戦争では、フューリアス号艦長として
戦艦の護衛や、エルギン卿使節団を護送し、1858年6月の天津条約締結に貢献した。
条約調印までの合間、使節団は日本に向い、上海から長崎、下田を経由して八月十四日、
江戸に到着した。二週間近い江戸湾停泊、宿所となった芝西應寺での滞在、条約交渉の
かたわら、オズボーンは江戸の町を散策し、東海道の一日旅を経験した。 江戸滞在中、
歌川廣重「六十余州名所図会」「東海道五十三次」、葛飾北斎「富嶽百景」「北斎漫画」など
数百点におよぶ浮世絵、絵本などを収集したオズボーンは、ヨーロッパにおける日本歴史に
関する初期の知識、イエズス会宣教師の記録、江戸初期の日英関係に関する文献、
「鎖国時代」オランダ商館員らによる記録などの研究の上に、北斎などの挿絵を添えて日本の
歴史、江戸の旅を紹介した。廣重による風景画のカラー・ファクシミリ版を挿絵に採用し、
風景画、絵本を通して日本の歴史、自然、地理、日本人の性格、生活習慣、実体験した
江戸・東海道の旅を描き、特に、北斎、廣重らの絵画の芸術性、史料的価値を見出し、
それを当時の欧米の出版においてはまだ初期の段階にあったカラー復刻で実現している。
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