フォン・シーボルトの測量による長崎湾（1828年）　
われわれは長年出島に滞在している間、あらゆる機会を利用して長崎湾、町およびその周辺の地図作成のための観測を行った。しかし周知のように、土地の測量はもとより、状況を詳細に描写することさえ禁止されていたので、この地図を作製するにあたって数多くの障害に直面した。幸いこの地図を完成できたのは、ひそかに機会を作ってくれた日本の友人たちと停泊している船から援助してくれた数人のオランダ人船長たちのおかげだと言わなければならない。
　すでにケンペルが『日本誌』のなかで明らかにしている第19図の地図の写しに似ているのだが、われわれは日本人の作成した長崎の町と港の数枚の見取り図以外には出島滞在中は何も知らなかった。クルウゼンシュテルンの世界周航地図も持っていなかった。またオランダ人の手書きあるいは印刷された日本航路の昔の海図も当時知らなかった。…（シーボルト「日本」雄松堂より）