〔野瀬農園のおいたち〕
　わが家がこの小笠原で農業をして生活するようになったきっかけは、明治初期に日本政府によって小笠原島開拓が始まった頃にまでさかのぼります。わたし達の先祖はこの頃初めて島に渡って来ました。船には政府から開拓を命じられた「小花作介」も乗船していたという記録があるので、島のパイオニアの一員であったとも言えるでしょう。
　初代を継いで２代目がさらに開墾を続け、やっとの思いで現在の基盤となる畑をつくりました。しかしその苦労もむなしく、昭和１９年、戦争で強制的に内地へ引き上げさせられることとなってしまいました。当時子供だった私の父はうしろ髪をひかれる思いで”畑のあるわが家”から離れざるを得なかったのです。その後、戦争が終わってもなお、島はアメリカ軍の統治下に置かれることとなり、結局２３年間もの長い間、開墾した畑は放置されジャングルとなってしまいました。

　内地の疎開生活のまま、思い出の残るこの島に戻ることは出来ず、畑も手をつけられません。父は、その”祖父の思い出”に、ただただ惜しい思いが募るだけだったといいます。せめて返還のための運動等に参加することが唯一の行動だったのです。
　そして昭和４３年、アメリカから島が日本に返還され、その５年後にようやく帰島することが出来ました。父は”待ってました”とばかりに、当時の畑を蘇らせようと独り再興に取り組んだそうです。
　ジャングルの開墾、更には例年の台風被害にかなりの長い時間がかかり、なかなか思うように進展しませんでしたが、現在ではやっとマンゴー・パッションフルーツ・コーヒーなどのフルーツ栽培に家族で取り組むことが出来るようになりました。
　父の悲願であったこの「農園のくらし」は、今では私にとっても最高のお気に入りです。季節の移り変わりとともに生長する作物に心癒される毎日を過ごしています...。そしてこれからは、島を訪れてくれる、できるだけ多くの人々の心を、同じように癒してほしい…...そんな気持ちで作物を可愛がって育てたいと思っています。

　こんにちは。東京の島、小笠原諸島・父島の「野瀬農園」です。亜熱帯性気候の島ならではのトロピカルフルーツを栽培しています。主な作物はマンゴーとパッションフルーツ、そして近年ではコーヒーの栽培にも力を入れています。毎日楽しく農作業しています。
　”ファームガーデン”というネーミングは、作物の栽培の他熱帯・亜熱帯の花々や観葉植物で飾ったトロピカルガーデンを目指しガーデニングをしているところから付けたものです。
　島へは東京から船で２５時間かかります。農園の全てをお見せできず残念ですが、ページ上ではクリックひとつ。
ぜひぜひ立ち寄ってみてください。