第1回 日本トランスパーソナル学会



The 1st Japan Transpersonal Association Conference


会議開催のお知らせ

■境界を超える対話■

人間/自然、科学/宗教、東洋/西洋、こころ/からだ
学問/芸術、意識/物質、男/女、知性/感性、地球/宇宙

開催日程と場所

1996年5月24日(金)〜26日(日)、南伊豆国民休暇村(下田)

プレゼンター(予定)

安藤治/伊藤雄二郎/上田紀行/上野圭一/江夏亮/おおえまさのり/岡野守也
河合隼雄/鎌田東二/北山耕平/菅靖彦/高岡よし子/津村喬/ティム・マクリーン
土沼雅子/藤見幸雄/星川淳/見田宗介/宮迫千鶴/吉福伸逸 ほか(五十音順)

アート・パフォーマンス(予定)

喜多郎:ピース・セレモニー
高橋実:舞踏

ワークショップ(会議後27日に開催予定)

ホロトロピック・ブレスワーク/エクスプレッシブ・アート
プロセス・オリエンテッド・サイコセラピー(POP)/ドリームワーク
イメージワーク/ヴィパッサナ瞑想/ハコミ・セラピー/気功 ほか



 私たちは「日本トランスパーソナル学会」をはじめます。
 学会といっても単に論文発表だけをするような堅苦しいものではありません。
ワークショップやアート・パフォーマンスなども取り入れ、創造性、情熱、知性の刺激という「学び」の原点を大切にしながら、アカデミックな研究にも対応できる「出会いの場」を創っていこうとするものです。
 誰でも参加できます。
 場所は静岡県下田。鎖国していた江戸のニッポンが黒船で来訪したアメリカの使節と条約を結び、世界に開いていくきっかけとなったところです。東西そして南北の思想の交流・融合をめざし艪アれからの日本が世界に発信できるような普遍的な価値観/世界観を探っていく試みの場となるでしょう。
 会場は潮騒が聞こえるほど海に近く、温泉にも恵まれた国民休暇村。完璧な弧を描く弓が浜の入り江に打ち寄せる穏やかな波、豊かな松林、小さな神社に囲まれた場で、「境界を超える対話」を深めていきます。

主催:日本トランスパーソナル学会準備委員会

会議とワークショップのプログラム内容については、講師の都合等により予告なく変更する場合がありますのでご了承下さい


日本トランスパーソナル学会(JTA)設立に当たって

 トランスパーソナル学は、過去25年以上にわたり主にアメリカで成立・発展してきました。近代合理主義や個人主義的価値観の限界が明らかになるにつれ、そうした価値観の制約を受けた、これまでの学問方法自体を問い直す動きとして注目されています。
 「トランスパーソナル」は、知性・こころ・身体性・スピリチュアリティ(精神性)・コミュニティ・エコロジー・アートといったさまざまな角度から、包括的でバランスのとれたアプローチを目指します。特定の価値観や信念を奉じるものではなく、むしろできるかぎり制約なく、さまざまな意見や立場に対し十分心を開いて耳を傾けることを契機としながら、差異の奥底にある普遍的な価値観を探ることを意味します。そして体験に焦点を当てることにより、多次元的解釈が可能になり、そこから得られた洞察は豊かなものとなります。
 それはまた、これまで近代合理主義の枠組みの中から外れたり、軽視されてきた諸側面にもタブー視することなく光を当て、検証することにより、人間経験の本質や世界のリアリティに、より豊かで包括的な視座を提供することにもなります。また日本という場においては、西洋的な合理主義を受け入れる一方で存続し発展してきた固有の精神風土に、トランスパーソナルな立場からあらためて眼を向け、検証し、私たちの精神性を見つめ直すことにもなるでしょう。
 そしてこの視座は、日常の生き方にも反映される必要があります。近年のさまざまな社会と環境の危機的状況をしっかりと見据えながらも、近代、そして歴史を超えた眼をもつことにより、トランスパーソナル学は、未来に対して希望を抱けるヴィジョンの形成に貢献します。トランスパーソナル学会は、それに関わる人たちが、さまざまな立場を取りながらも、ヴィジョンや人間の成長の可能性をどのように社会の具体的な状況の中で実現していくかを議論し、実践を深めていく、ネットワーキングの場でもあります。

日本トランスパーソナル学会の成立経緯

 1977年に初めて国際会議としてボストンで開かれたトランスパーソナル心理学会は、回を重ねる毎にその関心領域を拡げ、1978年の第4回国際会議の際に、心理学の枠組みを超えて「国際トランスパーソナル学会」(ITA)を発足させました。
 1985年には京都で、第9回の国際トランスパーソナル学会が開催され、当時まだ日本では「トランスパーソナル」という言葉があまり知られていなかったにもかかわらず、多くの関心を集めて成功を収め日本におけるトランスパーソナル学の本格的な紹介への足がかりとなりました。
 以来ほぼ10年が経過し、主要な理論的書物も公刊され、その実践も行われて参りました。欧米での四半世紀に及ぶ歴史やその発展には、注目されるべき数々の知見が積み重ねられており、わが国でも本格的に取り組む必要性がますます高くなってきたと思われます。このたび設立する「日本トランスパーソナル学会」(JTA)は、日本における初のトランスパーソナル学会です。

日本トランスパーソナル学会の活動計画

 日本トランスパーソナル学会は、トランスパーソナル学の研究促進および発展を目的に、一般社会への普及活動や海外も含めた研究成果の発表や紹介、交流を行います。具体的には、次のような活動があげられます。

トランスパーソナルとは……

 英語で言う Transpersonal とは、「個(Personal)を超える(Trans)」ないしは「個の境界を横断する」ことを意味します。それは個の確立を踏まえながらも個にとどまらず、自他の境界を超え、あらゆるものがつながっているという視点や意識に着目します。
 トランスパーソナル心理学者、ロジャー・ウォルシュは、「トランスパーソナル」体験とは、自己やアイデンティティの感覚が、個人的なものを超え、人類、生命、魂(psyche)、宇宙(cosmos)のより広い諸側面を含むものへと拡がる体験であるといっています。
 このことは個人(自我)的なものを軽視したり、除外することにはなりません。むしろ、個人的およびトランスパーソナル的体験の双方の重要性を認め、より広い文脈の中に位置づけるものです。「トランスパーソナルなるもの」は個人を通して(超えて)表現されるものであり、何を表現するかのみならず、どう表現するかが大切です。そして、個を大切にすることが、個を超えることにつながるという視点が求められています。

トランスパーソナル学とは……

 「トランスパーソナル学」はまず心理学の分野で生まれました。行動主義心理学、精神分析学、人間性心理学に次ぐ第4の心理学の潮流として、1960年代後半にアメリカで成立しました。人間性心理学は、行動主義心理学や精神分析がそれぞれ、人間の行動主義的側面や病理に主に着目していたのに対し、人間を生成過程にあるものととらえ、それまであまり研究対象として取り上げられなかった人間の価値、自由、意志、可能性などに目を向けました。そしてさらに高度な自己実現を遂げた人間が向かう先として、個人性をも超えた次元や価値が認識され、研究されるようになりました。またユング系の心理療法やさまざまな身体技法の成果、東西の諸宗教や哲学、シャーマニズムの体験的理解や比較考察等も相まって、西洋近代の自我を超えた多層的な意識の領域が明らかになり、トランスパーソナル心理学が発展してきました。
 近年、トランスパーソナル心理学の成果と関心は、次第に医学や人類学、哲学、科学、教育、社会学、宗教学、エコロジー、死生学、ビジネス、アートなどの分野にも波及するようになっています。そしてトランスパーソナル心理学を専門とする大学院、「トランスパーソナル心理学研究所」の他に、学部レベル、大学院レベルでトランスパーソナル心理学およびトランスパーソナル精神医学を専攻したり選択科目とできるところも増えています。
 近代合理主義や個人主義的価値観の限界が明らかになるにつれ、さまざまな分野におけるトランスパーソナル的視点の重要性が認識され、再発見されています。「トランスパーソナル学」は、日常の営みや社会の具体的な諸問題に照らし合わせ、検証することにより、トランスパーソナル的視点の探究と精緻化を目指しています。


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