インドのヴァラナシ、そこはバックパッカーとしてアジアを旅をし始め、そしてその中でも最も魅力的な場所があると思われるインドに入った僕にとって、一つの大きな最終目的地だったのかもしれない。ガンガーを目の前に横たえるこの街、行く前から他のバックパッカーの体験談や旅人たちの旅行記、映像などから想像ばかり膨らんでいた。ところがいざその街に着いてみるとなんてことはない、他の街と大差ない普通の街だった。むしろ日本人も多く、肝心のガンガーも乾季のためか最大時の半分ほどの川幅になっていてかなり落胆したのを覚えている。結構こんなもんかもしれない。予想していなかったところで感動し、期待していたところで失望する。旅をしているとよくあることだ。ところが翌朝６時前、カジュラホから一緒に旅をしてきたイギリス人のMatt、ポーランド人カップル、そしてフランス人カップルの計６人でボートを貸し切るためガンガーに出て息を飲んだ。不思議な雰囲気、なんだろう。ワケがわからない。でも紛れもなくそれは僕が見たかったガンガーだった。この街の魅力は早朝にあったのだ。写真はそのときとあるガートから聖なる川ガンガーに向かって祈りを捧げる老人。騒々しいインドにおいてこれほど静寂を感じる瞬間はなかった。