あたたかい雨にふれて。。。
窓の外に目をやると、静かに、、、けれど重々しく雨が降っている。
ふれたら凍ってしまうくらいに冷たく見える雨、、、まるでぼくの凍えた心を映しているみたいだ。
”雨粒に手を伸ばしたら、あまりの冷たさに何も感じなくなって、、、心の凍えさえも消し去ってくれるかもしれない。。。”
ぼくは、何だかとても雨に打たれたい衝動にかられた。自分の凍りついてしまいそうな心と同じくらいの冷たい雨に包まれてしまいたいと思った。
”何も感じなくなったら楽になれるかもしれない。。。”
とっさに窓をあけ、ぼくは静かに降り続く雨に手を伸ばした。
”そんなはずは、、、”
ぼくは一瞬言葉をなくした。
”雨がこんなにあたたかいなんて、、、”
いや、実際は本当に凍りつくほどに冷たい雨のはずなのだ。ただ、、、ただぼくの心がそれ以上に凍えているせいであたたかく感じてしまうだけなのだ。
ぼくはしばらくあたたかい雨を手のひらに感じながら立ち尽くしていた。
あたたかい雨が、、、少しずつ凍えていたぼくの心を溶かしていく。すると、まるで氷が溶け出したかのようにぼくの目から涙が溢れ出した。今まで心の奥に封印していた悲しみが、、、枯れることをしらない泉のようにあとからあとから涙となって溢れ出す。
ぼくは、、、胸の奥からこみ上げる嗚咽を必死にこらえながら目を閉じた。溢れ出した涙が静かに頬をつたう。その涙は手のひらに感じる雨と同じようにあたたかい。
どのくらい時がたっただろうか、、、気がつくといつのまにか雨はやんでいる。ぼくの手のひらにはあたたかい雨のぬくもりと、そして、、、胸のかすかな痛みがだけが残された。
雨がやみ、、、ぼくのまわりに静寂が訪れた。あたりの空気はぴんと張りつめて、ふたたび凍えそうな冷たさで包まれていく。
ぼくは、、、心が少しずつ凍えていくのを感じながら静かに窓を閉めた。
2000.12.17 written by kanon