雪の朝に。。。

 

”ふっ”と、、、僕は寒さに目をさました。

まだ夜明けにはずいぶんと時間があるようだった。

だけど、、、窓に目をやるとカーテンごしに外がほんのりと明るい。

不思議に思った僕は、カーテンを開けて窓の外に目をやった。

 

”雪だ、、、”

しばらく僕は、白いヴェールにおおわれたひっそりとした世界に心奪われる。

”白い静寂。。。”そんな言葉がしっくりとくる白い、、、そして静かな世界。

 

不意に、、、僕はそんな静寂に触れたくなって外に出た。”キン”と張り詰めた空気が身にしみる。

 

静かな眠りに包まれた世界。。。

雪は、、、ひとひらひとひらゆっくりと絶え間なく大地を真っ白に染めていく。音もなく、、、けれど着実に、、、。

 

僕は、庭の片隅にある一本の樹に目をやった。

すっかり葉を落としたその樹は、、、枝に白いベールをまとい沈黙している。呼吸をしているのかもわからないくらい音もなくひっそりと。。。

 

”あの樹は、、、いったい何を考えながら沈黙しているのだろう。。。”

僕は”ふっ”とそんなことを考えてみた。

 

春には淡いピンク色の花を咲かせて人の目を楽しませ、初夏には輝かんばかりの若葉に包まれ生命力に溢れていた。そして、秋には、枯葉をゆっくりと落としていく姿に悲しみを漂わせていたその樹、、、。

今、白い雪に包まれて静かにたたずんでいる姿から心の声は聞えてこない。

静かに無心で眠っているのかもしれない、、、。寒さに凍えながら来(きた)るべき春を今か今かと待ち望んでいるのかもしれない、、、。いや、もしかしたら自分を白く染める雪のべールに心弾ませているのかもしれない、、、。

 

僕は、積もった雪を落とさないように静かに樹の枝に触れてみた。心なしか手のひらが暖かく感じられる。

 

”私は元気ですよ、、、。”

そんな風に樹が僕に語りかけているような気がした。

 

僕は、樹の枝に触れたまましばらく耳を澄ましていた。”白い静寂”の中、、、樹の暖かさを感じながら、、、。

 

気がつくと、、、夜が明け始めていた。いつのまにか静かに降り続いていた雪は止み、日の光で枝に積もった雪がきらきらと輝いている。眠りについていた世界が、、、”白の静寂”から少しずつ解き放たれ始める。

 

”またね、、、。”

僕は心の中で静かにつぶやき、そっと樹の枝から手を離し歩き始めた。

 

                                                   2000.2.20 Written by Kanon