ことばの宝箱☆ 〜夏のお歌編 〜



” 夏 ” と聞いて、みなさんはまず何を思い浮かべますか?昔の歌人の多くは”郭公(ほほとぎす)”や”橘”のお花を思い浮かべたようです(*^^*)春や秋にくらべてお歌の数は少ないんだけれど。。。古人の夏への思いをちょっとでも感じ取れたら。。。






夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに 月宿るらむ


− 清原深養父 −


” 古今集 ” 巻三・夏の歌において、 ” 月のおもしろかりける夜 、暁がたによめる”として載せてあるお歌。確かに夏の夜は短くって、、、せっかく月がきれいに出ていても、夜が明けてしまうと明るい光に姿はかすんでしまいます。月のきれいな姿を見ていられる時間は本当に短いですね。詠み人が月を惜しんでいる様子がよく伝わってきます(*^^*)




夏の夜の臥かすとすれば郭公(ほととぎす)鳴くひとこえに あくるしののめ

− 紀貫之 −

季節の順番的には、深養父のお歌よりも前にくるべきお歌なのですが。。。これも古今集に載っている夏の夜の短さを詠ったもの(^^)横になったと思ったら、もうほととぎすが明け方の訪れをつげているといった意味で、ストレートですが爽やかなお歌ですね(*^^*)




恋ひ恋ひてあふ夜はこよひ天の川 川霧立ちわたり あけずもあらなん

− よみ人しらず −


天の河 もみぢを橋にわたせばやたなばたつめの 秋をしもまつ


− よみ人しらず −


今はとてかわるる時は 天の川わたらぬさきに 袖ぞひちぬる

− 源むねゆき朝臣 −

これら三首は、本来 ” 古今和歌集 巻四・秋 ” に選ばれているお歌。旧暦では七夕月は”秋 ” なのですが、、、現在の季節にあわせて夏のお歌としてとりあげました(^^)”よみ人しらず ” の二首は ” 織り姫 ” 、 ” むねゆき朝臣 ” のお歌は”彦星 ” の気持ちを歌ったもの。 ” 夜が明けてしまったら彦星と別れなければならないという辛い気持ち”、 ” 秋のもみじがいつでも彦星が天の川をわたれるようにしてほしい ”といった織り姫のせつない思いや、織り姫との別れで、涙で袖が濡れてしまうといった彦星の心情が心にしみますね(*^^*)


春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山


− 持統天皇 −

桜のお花に心動かされた季節もいつしか終わってしまい、夏になってしまったみたい。白い衣をほすのが夏の習い。あの香具山にも白い衣がたなびいていることでしょう。。。過ぎ去った春へのなごりおしい気持ちとやってきた夏を歓迎している気持ちが入り交じったようなお歌ですね(*^^*)




さつきまつ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする


− よみ人しらず −



( 陰暦の ) 5月にやっと咲く ” たちばな ” のお花の香りは、昔親しくしていた人が袖にたきしめていた香りで。。。昔大切に思っていた人を”たちばなのお花”の香りをかいでなつかしんでいるちょっとせつない気持ちがよぉく伝わってきますね(*^^*)みなさんにもそういう”香り”はありますか?



消えとまるほどやは経べきたまさかに蓮(はちす)のつゆのかかるばかりを


− 紫の上 −

契りおかむこの世ならでもはちす葉に玉ゐる露のこころへだつな

− 源氏 −

” 蓮 ( はす ) ” は夏の季語。同時に ” はちす ” と読ませて ”極楽の池にみられる蓮”のこともさします。この2首は、”源氏物語”の一場面。二条院で病み伏している紫の上を光源氏が見舞った時に、前庭に涼しげに蓮が咲きわたり、露がきらきらと光っている様子を眺めながら二人が詠んだお歌です(*^^*)紫の上が自分の生命を”蓮の花の露のようにはかない”と感じている一方で、源氏”が、蓮の葉の上にある玉(露の玉)のように、あの世での二人の契りを誓っている、、、紫の上の不安と源氏の上を思う気持ちが伝わってきますね☆