Sweet Sweet Summer Moning

「ふぁ?」
 目がさめた。
 なぜかって強い日差しが直接顔にぶつかって、熱いというよりも寧ろ殆ど拷問で。
 なんかこう、まるでドラマの中の刑事にライトを当てられている犯人のようだ。すいません、僕がやったことにしていいんでそれ外して下さい。
 じゃなくて。
「うぁぁ、あつぅぅい」
 口にすることでその不快感は増殖して、僕は慌てて枕もとにおいてある筈のエアコンのリモコンをとろうとした。が、手ごたえは無く、スカスカ虚しい気配だけがそこには満ちる。
「あれ?」
 あ、そうか。
 ようやっと機能してきた頭を、かき回す。汗でじんわりしていて、兎に角風呂に入りたいなと思った。
 でも、ここは家(アパート)じゃない。
 大阪府警の道場…雑魚寝の場で、僕のもう一つの、<家>で、仕事場だ。
「う〜。体中ばべきべきいぅ〜」
 硬いところで寝てたかあらなぁ。
 そう思いながら、同時に昨日の…まぁもう殆ど<今日>だったんだけどさ…のことをおもいだす。
 昨日、とりあえず帰ろうかって時になって、いきなり火村先生が謎解き始めて…そのまま証拠固めから解決まで一気に突き進んじゃってみんなとりあえず仮眠、て話になって・・・
 えあ?火村先生?
 そぉだ。なんだかんだであの人たちも泊まった筈。
 僕は時刻の確認と同時に、何人かの先輩たちがゴロロゴしている中での昨夜(いや、だからついさっき)の立役者殿を探した。
 時間が7:40頃を回ろうとしていることを、備え付けの掛け時計で確認してから、そのすぐ下あたりの日差しの直接当たらない、多分一番いい場所を陣取っている人影を見つけた。
 見つけて、見なかったことにした。
 したかった、と言い換えてもいい。
 だってあれを邪魔する度胸は流石に起きはしないので。

 昨夜の捜査には、2人の民間人が参加していた。
 民間人、といっても、なんとなく、毎回恒例といった感じは、無きにしも非ず。
 何せほぼ毎回、厄介な事件を解決してくださる、ありがたぁぁい<探偵>殿とその…一応…助手氏なのだから。
 因みにその本職は大学の社会犯罪学助教授と、推理作家。
 前者はともかく後者は普通、警察なら敬遠したくなるだろうと思っている人もいるかもしれないが、それは実は、微妙に誤解だ。
 日本全国みわたすと、結構素人探偵(本職も然り)さんとの交流やその探偵氏につく、ご友人だという作家さんの王道コンビは、結構いたりするのだ。横浜とか、大阪の僕らの部署でも何班かには表立ってでも裏でも大概ブレーンがいて、実は結構美味しい思いをしている人がいるとかいないとか。
 何はともあれ、閑話休題。
 僕達みたいに雑魚寝が半日常となっているのと違ってごく基本的には自宅…尤もこのお2人はお互いの家がそのままセカンド・ハウスになってたりするご様子だが…にこういうところは大変じゃないかなぁ、と。
 でもそうでもなかったらしい。
 火村先生は壁にもたれるようにして、悠々と足を伸ばして、そうつらそうな様子も無く寝入っている。
 それはいいんだ。そこまでは。
 しかし有栖川さんは…推理作家で火村先生とは大学時代からの付き合いだという割には随分外見の若い方だ。因みにフルネーム有栖川有栖さん。本名。でも男性である…寝入った頭を肩口にあづけ、尚且つ細身の方を抱かれていた。そう。火村先生の腕に。
 それはどう見たってコイビトドウシノカンケイにしか見えない。
 大体なんで花が散ってみえんだよ!30過ぎの男性2人の寝姿に!
 は。なんか錯乱していた。
 そりゃ、なんとなく、ちょっとだけ怪しいかなぁ、とか思ってたけど。
 現場とか、時々会うプライベートでも……

 そう反応していいかわからぬまま僕の耳に聞きなれた鮫山サンの声。
 寝ぼけた仕草で頭の上においてあったトレードマーク化している眼鏡を引き寄せ、カチャリと音を立てている様子は、確かに火村先生より「先生」といった気がする。
「どうした?、森下」
「あ、えぇっと。」
 まさか「なんか素でドラマのワンシーンかましている方々眺めていました」とも返せず、曖昧に挨拶してから下手な誤魔化し(自覚はあるんだ、自覚は)にかかる。
「あ、鮫山さん。朝食買いに行きませんか?どうせ昨日からろくに食べていないですし!」
「そりゃ構わないが…」
 どうした?と問い掛けてくる目に曖昧な苦笑いで逃げて。
 よれたスーツのまま、僕らは道場を出た。
 なんと無しに邪魔しがたいお二人に、せめてもう少しでも時間を、と思いながら。




利剣さま。
ありがとうございます。
リクエスト通り甘いですわ。うふふ。
気を使う森下君がプリティ♪
私まだ、地雷の話渡してないというのに・・・、先にもらってしまって申し訳ないです。
がんばりますわ!


BACK