金蝉が死んでから、500年が過ぎた。 大罪として、下界に落とされ人間として転生してどれだけ経っただろうか? 通常最上級神、上級神のもつ力が天界を支える場になっている。 だから、その人数は一定だ。 人数と言うより、天界を支える力が一定なのだ。 だから、最上級神の支える力は強い。 天帝の支える力も強大だ。 不死の天上人であるから、入れ替えなどないのだが、希にそれが存在する。 罰として下界に落とされたり、命自体を落とし消滅したりと原因はその度違う。 つまり、欠員が出るとその場を埋めるため新しく上級神は誕生するのである。 そうして、金蝉も生まれた。 めったに、生まれることのない上級神として。 彼が生まれる原因も、もちろん欠員のためだ。 どれだけ昔だろうか、かなりの高位神が消滅した。 多くは語られなかったし、皆口をつぐんでいる。 天帝に背くものは死罪、消滅を意味した。彼は天帝に真っ向から刃向かった。 理由は彼にしかわからない。 それとも、この長い命から解き放たれたかったのだろうか? 彼の代わりに生まれた金蝉はかなりの力量があった。 支える力として、最上級神とまでいかなくとも、失う訳にはいかない存在だった。 しかし、下界に落ちて無くしてしまった。 天は新たな上級神を誕生させるはずだった。 しかし500年間も誰も生まれていない。 こんなに長い間の不在は明らかにおかしい・・・。 観世音は考える。 天は、金蝉を見捨てていない。 天は、金蝉をあきらめていない。 天の意志は絶対だ。 この天界を天帝が治めていても、天意は別にある。 観世音にとってもわからないことがこの天にはある。 普段、天上人は滅多に逢うこともないが、菩薩としての立場上三大如来や天帝にも観世音は逢うことができる。 しかし、その上となると観世音であっても存在があやしいのだ。 如来の上に君臨しているはずの大日如来と言われる存在。 光の存在。 見たこともない。 確かにいると聞いているが見たことも声を聞いたこともない存在を認めることは難しい。 つまり、天とはそういうものなのだ。 天意など、そうそうわかろうはずもない。 金蝉の不在は天意として認められていないということなのだろうか? 下界に落としたことは、天意に反すると・・・。 このまま一定の力量が欠いたままであると、天界の秩序が崩れる。 場が崩壊してくる。 まだ、今なら支えて持たせることもできるが、そろそろ崩れて来るだろう。 天界の歪みは下界に大きく及ぼす。 下界の歪みも天界に現れる。 この相互の世界はどうなるのか? これが天意なのだろうか? 天上界を滅びることを望んでいるのだろうか? 観世音は思う。 金蝉、玄奘三蔵よ・・・。 天は、お前をあきらめてはいない。 天は、お前を再び天上界に導くかもしれない。 この天上界に、お前はやってくるのだろうか? その時、お前は何者なのだろう? それは天意しか知らない。 END |