「お前、好きだよな………」 しみじみとした感情を込めた言葉を金蝉は呟く。 そこには呆れというか、あきらめというか、物好きというか様々な思いが込められているが、別に馬鹿にしてる訳でも嫌っている訳でもない。 ただ、事実を述べただけ、口に付いただけ、だ。 「好きですよ。とっても、楽しいです」 それに天蓬は素晴らしく嬉しそうに答える。 (それも、どうかと思うぞ天蓬………) 金蝉は内心、変な奴だと新たに認識する。その認識は毎回毎回更新されるのだけれど、これまたその度に、思うのだからしょうがない。 何を金蝉が呆れているかというと、それは天蓬の右手に握られたブラシが物語っていた。 金蝉の金の長い髪を先ほどから天蓬は嬉々として櫛けずっているのだ。 ブラッシングは丹念に。 毛先から初めて、中盤に来て、最後に全体をかける。 面倒極まりないというのに、静電気など起こして金蝉の髪を痛めるものかと天蓬は丁寧に櫛をかける。 このブラシも豚の毛でできた高価なもので、静電気も起こらなければ、枝毛にもなりにくく、滑らかになると評判のものであった。 ナイロン素材は静電気を何ボルトも起こすし、マイナスイオン効果のあるヘアドライヤーもどこか信用がおけない。ウッド素材で動物の毛が一番いい、というのが天蓬の弁である。 「綺麗ですよね………」 天蓬は金蝉の髪が光に反射して天使の輪を作るのを嬉しそうに見る。 自分が振れる金蝉の髪。 一本一本が絹糸みたいな滑らかさで、触れるだけで心地いい。 金蝉に触れることができて、髪をとくことができて、その権利を与えられて天蓬は満足であった。 正に至福の時間………。 幸せそうに微笑む天蓬に金蝉は小さく吐息を付いた。 そんなに幸せそうに笑われると、何も言えなくなる。 こんなことで幸せを感じるなんて、やっぱり物好きとしか思えない。 でも天蓬が幸せそうに笑うなら、いいかと思う。 「まあ、好きにしろ。どうせ俺は手間なんてかけないし………」 自分では、そこまでやる気も起きない。 長いから精々一つに縛るくらいである。それも極力簡単に………。 天蓬はブラシングに命をかけるが、その後飾り立てようとはしないから、金蝉としても好きにさせていた。 金蝉本人が絶対嫌がりそうなので、天蓬はやらないのだけれど、それはもちろん知らなかった。飾っていいと許可がもらえたら、どれほど探求心が満足されるか知れない。 金蝉を美しく保つことは(健康で、麗しくがテーマである)天蓬の生き甲斐でもあるのだから。 「ありがとうございます。じゃあ、これからもやらせて下さいね」 ブラシングの許可が降りたので、天蓬はにっこりと微笑んで、これからも、と金蝉に言っておく。 「ああ………」 金蝉は頷いた。 満足そうに天蓬が微笑むので金蝉も、しょうがないなと笑う。 結局、天蓬にどこまでも甘い金蝉であった。 |
みのりさまより下界パラレルな、ちび天金を頂きました。 ありがとうございます。 可愛いですよね〜、やぱりちびはいい! ちびだというのに、どうしてこんなにお似合いなんだ? そんでもって、天蓬甲斐性ありすぎです。←でもそこがいい。 あまり可愛かったので、ちょっとしたSSを付けさせて頂きました・・・。 |