「新ちゃんとしろいまほうつかい」

水無月あきひ様、ありがとうございます。
大感激です。「パパとしんちゃん」の小さな新ちゃんと白い魔法使いのKIDさま。
ううーん、素晴らしい。私とっても幸せ者です。
だって、盗一さん大好きですもの。もちろん新ちゃんは当たり前の上、快斗も
好きですけど。
本当は、コナンはやっていないのに、無理を言って描いてもらいました。
そして、ちびな新ちゃんと快斗も描いてくれるって本当ですよね?
確かに聞きましたよ(読みましたかな?)・・・。(笑)
それを楽しみに、がんばります。うふふ。


お礼を込めて、ちょっとしたお話をつけさせて頂きました。
 
                                 春流


 白い魔法使いがやってきた。
 月の明るい夜だった。

 新一の誕生日、熱を出して寝ていた部屋に、純白の衣装を身につけた、少々現代には見られない変わった装束の男が現れた。白いシルクハットに長いマント、スーツ。シャツは青でネクタイは赤。右目に片眼鏡。こんな一風変わった姿を見たら、普通はあやしいと思うのだが、残念ながら新一は欠片も不信感を持たなかった。それは、彼が「お誕生日おめでとう」と言ったことから自分を知っている人間であると認識したせいでもあり、好奇心旺盛で謎が大好きであるせいかもしれなかった。常々、知らない人には付いていってはいけないと言われていたのだが、別段付いていった訳ではなく向こうから来たのだ。だから、新一は約束を破った訳ではなかった。
 それにいくら純真無垢な子供でも、新一の人を見る目は本物だった。自分に危害を加える人間に心を許すはずもない。その点魔法使いは決して彼を傷つけることなどしないと断言できるだろう。

 翌日新一はすっきりと目を覚ました。
 
 (きのうのことは、ほんとうだよね?」

 熱が下がり、幾分ぼんやりとはしているが、思考能力は正常だ。
 昨日の魔法使いと彼の魔法の数々を思い出すと嬉しくなって顔が自然にほころんでくる。
 
 (またきてくれるかな?きてくれるといいな)

 一応約束をしたけれど、来てくれるだろうかと新一は頭を悩ます。

 「あら、もう起きて大丈夫なの?」

 そこへ母有希子が顔を出した。ベットまで歩いてきて、横に座る。そして新一の白い額に手を伸ばして首を傾げる。

 「うーん、下がったかしら?一応熱計りましょうね」

 枕元に置いてある体温計を取って新一の口にはいと挟む。口中用だから、新一は黙ったままじっとしている。

 「お粥を作ってあるからこの後で食べましょうね。栄養を取らないと元気になれないもの」

 有希子は顔色が良くなった新一を見つめながらにっこりと微笑む。新一も話せないからこくんと頷いて返事をする。
 
 (まほうつかいのちからをたくさんもらったからかな?)

 そんなことを考えているとピピッと電子音がする。有希子は新一から体温計を取り表示された数字を見て、「よかった、下がったみたいよ」と安心させるように笑う。

 「そうね、まだ動くの辛いかもしれないから、ここにお粥もってくるわ。待っててね」
 「うん、ママありがとう」

 有希子が立ち上がり部屋から出ていく後ろ姿へ新一もお礼を言った。そんな新一に有希子は「ちょっと待っててね」と手を振って去った。
 新一は、昨日のことを父親と母親に話してはいけないような気がした。誰にも言ってはいけない。だって相手は魔法使いなのだ。きっと来てくれなくなってしまう、と幼心に新一は思う。
 新一が読み聞かせられた絵本の中にも「誰にも言ってはいけないよ。そうでなければ夢は覚めるんだよ」と魔女が語っていたことを覚えていた。

 (そう「ひみつ」なんだ。ぼくとまほうつかいだけの「ひみつ」)

 そう新一は結論付けて、満足そうに微笑む。

 (それに、まほうつかいがまよわないように、めじるしつけないと。ここがぼくのへやだってわかるようにしておかないと………)

 工藤邸は広い。部屋数も掃除が大変だと有希子が嘆く程ある。だから、普段使われない部屋や客間や衣装部屋や物置になっているものなど多数存在する。だから新一はどこが自分の部屋か魔法使いが今度来たときわからないかもしれないと考えたのだ。
 
 (どうしようか?まほうつかいがくるのはよるだし。なにかひかるもの?そうするとパパとママにみつかっちゃうし)

 新一は頭を悩ます。
 そして、あることを思い出す。何かの映画だろうか。目印を付ける方法。
 
 後日動けるようになった新一は自分の部屋のベランダに黄色いリボンを結んだ。本当はハンカチが良かったのだがなかったのだ。リボンならたくさん持っていた。困ったことに母有希子の趣味で可愛らしい物がたくさん揃っていたのだ。
 
 



 そして、しばらくたったある夜の晩。

 「こんばんは」

 魔法使いは新一のもとに訪れた。この間と変わらない真っ白な衣装を纏って。

 「こんばんは、しろいまほうつかいさん」

 新一はにっこりと微笑んで魔法使いを迎えた。いつだろうと毎夜楽しみに待っていたのだ。もし自分が眠っていたら帰ってしまうのではないと心配だった。

 「今宵は、大丈夫ですか?」
 「うん、げんきだよ」

 新一は元気を強調するように返事をする。

 「それは良かった。折角ですから夜の散歩へご招待しようと思ったのですが、いかがですか?」
 「さんぽ?」
 「ええ。空を散歩するのです」
 「いきたい!!!」

 新一は瞳を輝かせて白い魔法使いのマントを掴む。魔法使いはそれでは、と新一の前に屈み込み新一を抱き上げた。そして、ベランダまで出る。

 「しっかりと掴まっていて下さいね」
 「うん!」

 新一はどきどきしながら楽しそうに笑う。

 「では、参りましょう」

 魔法使いは羽根を広げて夜空に飛び立った。
 
 
 
 それは新一の大切な秘密。
 新一だけの白い魔法使いとの思い出だ。


                                      おわり

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