「こんにちは!」 ひょっこりと玄関から顔を覗かせながら、有栖は様子を伺う。 初めて、火村の下宿に来た有栖は少し緊張ぎみだ。 大家さんが居て、部屋に何人も下宿生がいる場所というのを初めて見る。 それは、もう。興味津々だ。 「入れよ、アリス」 背を手で押して促す火村に有栖は頷く。 「うん。大家さんにあいさつせな。せっかくお菓子持ってきたんや」 玄関先で声をかけたからだろう、奥から品のいいおばあさんが現れる。その後に猫が一匹付いてくる。 「いらっしゃい。火村さんのお友達?」 「はい。有栖川っていいます。今日はお邪魔します。これ」 そう言って有栖は持ってきた包みを大家であるおばあさんに差し出す。 「まあ、ありがとう」 「生物なんで、早よう食べて下さい」 微笑む大家に、有栖もにっこりと柔らかく微笑み返す。 「火村さんがお友達連れてくるなんて、初めてやわ」 大家は嬉しそうに言う。まるで自分の家族のように、暖かい声音で。 「本当に?火村」 有栖は隣に立つ自分より高い位置にある瞳を見上げる。 「ばあちゃん……」 火村にしては珍しくばつが悪そうである。恨めしそうに大家を見て頭を掻く。 有栖はその火村の反応に、嬉しくてにっこりと笑った。 そこへ、和んだ空気を破るように、どたどたと足音を立て男達が現れた。 「わ〜、本物や。天使!」 「眠り姫だよ……」 「やっぱミス英都だなあ。美人だ。」 有栖を囲んで感嘆の声を上げるのは、火村と同じ下宿生達だ。あの「有栖」が来たと聞きつけ、玄関へ集まってきたのだ。 「何?どういうこと?」 いきなり囲まれ訳のわからない事を言われて、有栖は火村に何を言ってるのかという疑問の顔で問う。 問われた火村は心中でため息を付く。 まったく、余計なことを。 火村としては余計なことは有栖に聞かせたくないのだ。 きっと有栖は想像もしていない。自分が「天使」や「眠り姫」果ては影の「ミス英都」などど呼ばれているなんて。知っても、信じられへんわと笑うに違いない。 「気にするな。少しおかしいんだよ」 「は?」 さっぱりわからないと有栖は首を傾げた。 「いいんだ。」 火村はきっぱりと言い切る。言い切った方が勝ちだ。 信頼する火村に言い切られると有栖も何も言えない。腑に落ちないという顔をしつつ、追求することを諦めた。 「お前ら、どけ!」 火村は不機嫌そうに言う。 ああ、アリスに近寄るなと思う。 しかし、そうは問屋がおろさなかった。 「こんにちは、有栖川。まさか君がここに遊びに来るんなんてね。嬉しいよ」 手を握らんばかりに、有栖に男が迫っている。 彼は田島と言って有栖のファンだ。 有栖という存在を火村に教えたのも彼である。彼が火村に語ったことは、「最初は男なんてどんなに綺麗でもごめん、て思ったけど、実物を見て考え直したんだ。見ているだけで、幸せになるんだよ。すごく綺麗で可憐で、彼が現れると、その場が光輝くんだ。でも、森田という男がいつも一緒に居て近付けない」である。 事実だった。その後、有栖を見た時に、そんな馬鹿なと思っていたのにもかかわらず、見惚れてしまった。火村が有栖を初めて見たのは、有栖が出逢ったと思っている5月7日ではない。それよりずっと前だ。 だからといって、そんなにアリスにくっついていいという法はない。離れろ! 火村は心の中で叫ぶ。 「アリス、行こう」 火村は有栖の肩を引き寄せ、まだ取り囲んでいる下宿生を無視し、部屋へ急ぐ。 その時、目の端に、にやにやと笑っている細田が映った。 嫌な笑いだ。火村は面倒な奴に弱みを見せたような気がした。 火村が田島の話を内心あきれて聞いていた時、細田が「一度見てみるといいわ。お前もわかる。まるで人間の理想とか希望を集めたみたいな人物やで」と言ったのだ。 火村はそんなものかね?と疑問に思ったことを覚えている。 そして、しっかり有栖と出逢い部屋に連れて来ていればわかり易す過ぎるだろう……。 「お邪魔します」 有栖は火村の部屋に入るなり、珍しそうにくるくると瞳を楽しそうにめぐらして部屋を観察する。 「そこら辺、座れよ」 「うん」 和室が2つにキッチンが付いている部屋。雑然としているけれど、きっと本人のルールによって、物が配置されている。思った通り、本が多い。雑誌とかはなくて、文庫にハードカバーに、新書。黄ばんだ色から、古本屋などからも仕入れているようだとわかる。積み上げられている本はジャンルがばらばらだ。分野が広い。有栖が知っているものもあれば、本のタイトルからもさっぱり何が書かれているのかわからないものまである。 「火村の部屋やな」 有栖はこの部屋がとても気に入った。 どこを見ても火村の存在が残っていて、居心地がいい。 窓から差し込む光がとてものどかでいい日だなと思う。 火村はキッチンでインスタントコーヒーを入れると、 「アリスはミルク入れるんだよな」 と言って、ミルク色に染まったコーヒーの入ったマグカップをテーブルに置く。テーブルとはいって、コタツに布団がかかっていないだけのものだが。 「うん。ありがとう」 有栖はお礼を言って微笑む。 火村は自分用に入れたマグカップからコーヒーを飲みながら、楽しそうな有栖を観察する。 両手でカップを持ち、こくりとコーヒーを飲んでいる仕草がとても可愛らしい。 何でもないことなのに、有栖がするとどうしても目を引く。 俺も大概、いかれているなと火村は自嘲する。 出逢った当初は自分と正反対の有栖の存在をどう捉えていいのか、迷っていた。 「天使」、最近は「大天使」とまで呼ばれる存在。 さらさらの茶色の髪に生命力に溢れた、琥珀の瞳。形のいい鼻、桜色の唇。しなやかな身体。よほど腕のいい作家が作ったのだろう、姿かたち。そして、彼を包む空気は清浄で光輝いている。 有栖がいるだけで、殺風景なこの部屋も光が満ちている。暖かい、と思う。 惹かれない訳がなかった。 傍に居て欲しい。 神を信じない自分だが、願えば叶うというのなら、どれだけでも願うだろう。 自分の思考にあきれてしまう。 それほど、この存在が欲しいのだろうか? 「火村?」 「ああ?」 「どうしたんや、ぼんやりして」 意外に間近にある顔に驚く。それを火村は押し隠し今日来た用件を促した。 「何でもない。それより、原稿出来たんだろ」 「ああ。そうなんや」 有栖は鞄から、原稿用紙の束を取り出し火村に渡す。 火村はおもむろに、ページをめくって読み始める。 目の前で原稿を読まれることほど緊張することはないわ、と有栖は思う。 このまま見ているのも緊張するため、有栖は気を取り直して火村の本でも見ようかと考えた。 本棚がいくかあるのだけれど、収まりきらなくてそこから溢れている。 自分の部屋も本に埋もれているから、よくわかる。 どれどれ、と有栖は物色する。 こうして見ると、火村はミステリは読まない。 実用書や研究書というものが多い。中でも有栖が思わず読んでみたいと思うものがあった。 社会学部だからなのか、火村の個人的興味なのか、犯罪に対するものが多いのだ。 有栖が書きたいミステリに犯罪は必要不可欠である。 話していて、とても博識であることはすぐにわかった。論理的に物事を考えて、冷静。的確なアドバイスをしてくれる、火村。 まだ知りあってそれほど経っていない。けれど、とてもいい奴なのだ。 知らないことがたくさんあるとわかっているけれど、彼の心には何があるのだろう? 火村の思考の一端を覗かせる書物。 火村は何を考えているんやろうな? 一冊の本を見ながら、思う。 借りて行こう、この本。 きっと火村なら「仕方がないな、もってけよ」と言ってくれる。 有栖は火村を振りかえる。 「火村、これ、貸して」 本を少し高く持ち上げて見せる。 火村は原稿から顔をわずかに上げて、 「ああ、もってけ」 と言った。 有栖は火村の態度にやっぱりなと、笑えてくる。 「火村、おおきに!」 感謝は態度で示そう。有栖はにっこりと花が咲くのではと思うほどの艶やかな笑顔を向けた。 それに火村は、見惚れた。 その後は原稿のつじつまの合わない所や表現がおかしい所などの指摘を受けて、有栖は帰ることにした。 「また、来てもいい?火村」 有栖は心のままに尋ねた。 火村は心中で大きなため息を吐いた。 (そんな瞳で見上げられて、断れる訳ないだろう、アリス?) 「ああ」 火村はそっけない程の答えを返す。 でも、有栖は気にしない。だって、有栖は知ってたから。 「じゃあ、また明日」 ばいばいと有栖は可愛らしく手を振った。 またもや、有栖は火村の部屋に居た。 今日は最初から泊めてもらう予定だった。 しかし、部屋には有栖一人。 どうしてもと頼まれて火村は「なるべく早く帰るから」と言い置いてバイトに行っている。 有栖は気にせんでな、と返してある。 火村の部屋で待つのなら、全然平気だ。 有栖の興味を惹きつける本がたくさんあるし、ここには火村の匂いや存在が満ちている。火村が喫煙している煙草は「キャメル」。外国製でとてもきつい。 「肺がんになる!」と言ったけど、有栖の言葉など流されてしまった。 最初はこんなに煙草の匂いをさせてと思ったけれど、今ではその香りに安心する自分がいて、少し不思議だ。 壁に背を預けちょうどいい姿勢を探し、数ある中で一冊選んだ本をめくる。 この部屋で本を読むっていいなあ。 しみじみと思いながら、有栖はしばらく本に集中する。 コンコン。 ノックの音がする。 誰だろう?火村が自分の部屋をノックするはずないし?火村に誰か用だろうか。 有栖は「はい」と声をかけ、ドアを開けた。 「こんにちは。有栖川が来てるって聞いたから。火村いないんだろう?一緒にどうかな?」 田島がビールを掲げて見せた。 有栖はお誘いに驚きで目を見開くが、そのまま強引に俺の部屋で飲もうと腕を捕まれ連れて行かれた。 彼は「俺は田島篤志。同じ2回生で、国文学部なんだ。よろしく」と自己紹介をした。 有栖も、「俺は、」と続けようとしたが、「必要ない」と済まされる。 「どうして?」 と有栖が聞けば、 「有栖川のことを知らない人間なんて、この大学にいない」 と言われた。 それは、どういうことだろう?有栖の頭は疑問ばかりだ。 だが、田島は気にした風もなく有栖に話し続ける。 「何で火村と友達になったんだ?」 「え?階段教室の法学部の授業を火村が聴講しに来たんや。その時に気があって、カレー食べた。それから」 まさか、原稿を読まれたとは言えず、そこの所は省く。 「それって、火村から声かけたのか?」 「うん。せやな、かけたって言うか、ちょっと言葉をかける事があったいうか……」 「珍しい。火村が自分から声かけるなんて!ま、有栖川じゃあ、仕方ないか……」 「どうして?」 有栖は不思議そうに首を傾げる。 仕方ないとはなぜだろう。有栖にとって疑問だ。 一方、その反応に田島はあれ?と思う。 ひょっとして、わかっていないのだろうか? 自分がどんなに魅力的で、注目されているか。天使とか眠り姫とか言われているのに。噂っていうのは本人の耳には入らないっていうけど、学内一、美人って有名なのに。 ビールを飲んだせいか、ほんのり色づいている頬が、首筋がとっても色っぽい。 色が白いから、赤くなると目立つんだよなあ。 あの「有栖」が隣にいるってことが、信じられないね。 田島はとってもいい気分になる。 だって、どんなに傍に寄りたくても森田が鉄壁のガードをしているし、最近はどうも火村まで加わっている。双璧って、とても高い壁だ。 まさかこんな好機が巡ってくるとは思わなかった。せっかくだから、綺麗な顔を拝んでおこう。田島は酔った勢いで思う。 「火村といて楽しいか?」 疑問に思っていたことをつい聞いてみる。 一緒にいて、息苦しくなったりしないのだろうか? 「うん。楽しい」 にっこりと有栖は微笑む。 ああ、可愛いなあ。 火村もこんな顔されたら、無表情、無感動、冷酷の仮面もどこかに飛ぶんだろうな。 「う〜ん、火村ってひょっとして有栖川に優しい?」 疑問形だけど、確認だ。きっと優しいんだろうな。俺達に対する態度と違うはずだ。 「せやな。普段はそっけないんやけど、優しいと思う。いい奴やよな、火村って。間違った事やおかしい事は、ちゃんと言ってくれて、でもアドバイスもしてくれる。一緒に考えてくれるんや。論理的かつ、冷静に物事を見ていて、驚かされることばかりや」 有栖の誉め言葉に、ああやっぱりと田島は納得する。 火村が頭が良くて、論理的で冷静なことは認めよう。間違った事も指摘する。遠慮もなく、はっきり、きっぱりと。それはもう潔いほどに。 それが、かなり角が立つのだが本人はどこ吹く風で気にしない。 優しくない訳ではないのだろうが、自分はそんなあからさまに優しい火村を見たことはない。 火村も有栖川がかかわると、人間らしいんだ……。 この間なんて、俺を見て邪魔だとその顔に書いてあった。そんなに有栖川に近付いたのが気に入らないのか。お前のものでもないだろうに。ちょっと、腹立たしいかもしれない。 俺もアルコールがまわってきたようだ。 思考があやふやになって来た。 「火村ってどうしてあんなにもてるんだろうな?」 田島は嘆いて見せた。 「格好いいから、しかたないと思うけど。だって、背も高くて、ハンサムで、声も良くて、頭もいい。もてない訳ないわな、優しいし!」 最後の、優しいは限定だけどと思いつつ、こんな誉め言葉聞きたくないと思う。 事実だけれど、むかつくなあ。 これで、有栖川が傍にいるなんて、持ち過ぎだと思う。 何も持っていない人間もいるというのに。 「俺は有栖川?俺だとダメ?」 「は?何が?」 有栖は潤んだ瞳で田島を見上げる。 それは、とてもまずいだろう、もっと危機感を持ってくれと火村なら思う。 けれど、ここに火村はいない。 酔ってぼんやりとした有栖は、田島の肩にことりと頭を乗せた。 うひゃ〜〜〜というのが田島の心の叫びだ。 こんなに無防備に身体を預けられたら堪らない。 どうしよう?このままで居たいような、居たくないような。 そっと肩に腕を回して引き寄せてみる。 ふんわりと、いい匂いがする。 ああ、なんかダメかもしれない。 ちょっとくらいいいかな? 触ってみたい、という欲求がわきあがる。ついつい手が伸びて、柔らかそうな髪を撫でる。 ドキドキするなあ。 本当に男にしておくのが勿体ない。っていうか、俺は男でも全然いいんだけど……。 田島の思考能力は著しく低下していた。 ここが、どこで、どういう状況か、すっかりと忘れていた。 田島の理性が切れかかった時、部屋のドアががらりと音を立てて開いた。 そこには、仁王立ちした火村がいた。 恐ろしい……。 地獄から来た使者か? 冷気が漂よってきて、火村の怒りがひしひしと田島に伝わる。 「何をしている?田島」 地の底から響く声。普段がいい声と言われるだけあって、怖さが倍増されている。 眼光が鋭く光り、あまりの恐ろしさに、身体が振るえる。 うわ〜、殺される、と田島は真面目に思った。 本気で殺されてもおかしくない。 まさに、魔王でも降りてきたとしか思えない姿だ。バックに暗雲立ち込めて、効果音が付いている。 火村は田島が抱きとめている有栖の身体を奪い、軽々と抱き上げ、 「これで済むと思うなよ、田島」 と脅し文句を残して、部屋を出た。 「あ〜、やっぱり田島の所だったんや?お姫さんは無事?」 細田は恐ろしい雰囲気を醸し出している火村に構わず、聞く。 「一応、礼を言っとくよ」 「はは、いいんやけどな。お姫さんにももう少し警戒心ってものを学ばせた方がええで。そんな無防備だと襲ってくれ、て言ってるようなもんや」 火村に抱き上げられ、意識がなく無邪気に眠る有栖の頬を細田はつついた。 火村は無言で細田を睨む。 「火村、わかりやす過ぎやで。お前も大変やなあ。せいぜい、がんばってや!」 細田はにやりと笑いながら、言いたいこと言うと去った。 それでも、おやすみと挨拶は忘れなかった。 火村は有栖に布団をかけてやる。 無防備に眠っている有栖。 危なかった、と思う。 火村が急いでバイトから帰ってくると、有栖は部屋にいなかった。 いったいどこに?ここ以外待つ場所などないというのに。 有栖が部屋に居ると思って、とても幸せな気分で帰って来たというのに、火村の気分は一気に急降下した。火村は一番に細田の部屋を訪ねた。自分の向かいが細田の部屋で、何より4年生の彼は下宿内のことに詳しかった。 アリスを見なかったか?と聞くと、多分田島だろうと教えてくれた。有栖が来ていると聞いて、喜んでいたからと。 すぐに田島の部屋に行って、火村は凍った。 自分の中の何かが爆発したように感じた。 目の前にある、有栖を抱き寄せる田島の姿。 こいつ、殺してやろうかと思った。殺してもいいか、と本気で思った。 有栖を一人で待たせたことを後悔した。 自分はわかっていたはずなのに。 どこにいても人を惹きつけてしまう、有栖。 有栖のこんな無防備な寝顔を、田島に晒してしたのかと思うと腹が立つ。 もったいない。誰にも見せたくない。 「ん……」 有栖のまぶたがうっすらと開く。ぼんやりと火村を見て、 「う……ん。ひ、むら?」 有栖の唇から自分の名前がもれる。 ああ、これだと思う。 初めて有栖を見た時自分の名前を呼んで欲しかった。 火村を確認した有栖は安心したように、にっこりと微笑んだ。 そして、瞳を閉じるとすやすやと寝てしまう。 以前これと全く同じような事があった、と言ったら有栖はどうするだろうか? 自分だけが記憶している思い出。 火村は誘われるように手のひらで、細くて茶色の髪に、薄く染まった頬をたどる。 そして、そっと指で桜色の唇に触れる。 柔らかい……。 心持ち開いた唇はまるでキスをねだるようだ。 火村の理性を溶かすような誘惑。 「なあ、アリス。お前が偶然と信じている出逢いは俺にとっては必然だったんだぜ」 有栖に聞こえないとわかっているから、言える言葉。 「傍にいてくれるか?」 答えない有栖に、火村はそっと触れるだけの口付けをする。 眠っている人間に告白するなんて、俺もロマンティストだね。 有栖に出逢ってから、知らない自分ばかり、発見する。 でも、これも悪くないかと思う。 そして、火村の眠れない夜が更けてゆく。 翌日火村は、自分がいない時はなるべく来るな、と約束させることを忘れなかった。 また、その日が魔王の降臨した記念の日であったことは言うまでもない。 どこからともなく、「魔王と大天使」と呼ばれるようになったらしい。 END |