されどいつわりの日々

 

 これまでのブラックジャックだったら「難しい方の患者治しちゃったよ。ブラックジャック、すげー」と彼の技術を描いただけで終わってしまうところだが、この作品はそのように安直でもなければ単純な救いも用意されていない。

 冒頭に猫を配したのは患者の回復のきっかけを与える伏線と見せかけて、実は最後まで読み進めると違う存在理由が明らかになる。女性タレントの治療の様子を中心に描きながら、前後に猫のエピソードではさみこむことによって「治る意志がないが治療を受けた者」と「治る意志はあるが治療を受けていない者」とを対比して示し医者と患者の関係の意味を語っている。このことによりマンネリズムを回避してより強いメッセージを組み込むことに成功している。