種ニシヒシクイAnser fablisは5亜種が記録されています.このうちヒシクイA.f.serrirostrisと
オオヒシクイA.f.middendorffiiは冬季日本で見ることができます.2017年11月17日に吾妻干拓地で観察したヒシクイの中に
ヒシクイとは違った形質の個体が1羽混じっていました.図鑑などを調べた結果ロシアヒシクイA.f.rossicusの若鳥と
思われます.以下の写真で特徴を示します.
亜種名 | 全長[cm] | 繁殖地 | 越冬地 |
---|---|---|---|
fabalis ニシヒシクイ | 69-88 | 北ヨーロッパから北中央シベリア | 西,中央,および南東ヨーロッパ,南西アジア |
johanseni | 不明 | 西シベリア | トルクメニスタンおよびイランから西中国 |
middendorffii オオヒシクイ | 90-100 | 東シベリア,ザバイカリエ地方 | 東中国,日本 |
rossicus ロシアヒシクイ | fabalisより 小さい | 北ロシア,北西シベリア | 西および中央ヨーロッパ,南西アジア |
serrirostris ヒシクイ | 78-89 | 北東シベリア | 中国,朝鮮半島,日本 |
(注)鳥学会の鳥類目録第7版にはヒメヒシクイA.f.curtusjの記載がありますがヒシクイserrirostrisの1グループとされています.
ロシアヒシクイrossicus頭部の褐色の黒味が強く,嘴は短く,嘴先端の黄色斑が小さい.
嘴の形状はヒシクイserrirostris,オオヒシクイmiddendorffiiと違っています.
ヒシクイは鼻孔部分が顕著に盛り上がっており,下嘴は分厚く額から嘴にかけて角度があります.
オオヒシクイは頭部の大きさに対して嘴は長く,また額から嘴先端まで緩やかに湾曲しています.
ロシアヒシクイは頭部の大きさに対して嘴は短く,額から嘴先端まで滑らかに湾曲していますが上嘴の中央付近で
オオヒシクイに比べて大きく湾曲しています.
ヒシクイはニシヒシクイと同じ全長でロシアヒシクイは後ろのヒシクイに比べて小さい.
ヒシクイの頭部の骨格に比べ小さく形状が異なる.首も細く短い.
腹部のうろこ模様は幼鳥または若鳥を示していると思われます.成鳥の胸は通常縦縞です.
参考文献
日本の野鳥 叶内拓哉,安部直哉,上田秀雄 2011 山と渓谷社 東京
日本の鳥550 水辺の鳥 桐原政志,山形則夫,吉野俊幸 2009 文一総合出版 東京
Birds of East Asia Mark Brazil 2009 Christopher Helm London
Collins Bird Guide 2nd Editon Lars Svensson 2009 HarperCollins London
Die Vogel Europas und des Mittelmeerraumes Lars Jonsson 1992 Franckh-Kosmos Stuttgart
Illustrated Checklist of the Birds of the World Vol.1 Josep del Hoyo, Nigel J. Collar 2014 Lynx Barcelona