タヒバリAnthus rubescend japonicusは種アメリカタヒバリAnthus rubescensの亜種です.
種アメリカタヒバリには4亜種が記録されています.屋外で非繁殖羽の亜種タヒバリと亜種アメリカタヒバリを識別する方法が文献1に詳しく
記載されています.この方法を使って観察した個体を識別しました.
表1に識別に使う形質とその形質の点数を記載しています.数値は0-5の値で,4,5は40-60%の確率でタヒバリ,2,3は多くの個体に見られるが10-39%の確率で
タヒバリがアメリカタヒバリより多い.A-Hの8個の形質の合計が20以上の場合はタヒバリと判断でき,
19以下の場合は各々の形質を個別に調べて判断する必要があります.しかし,10以下の場合はアメリカタヒバリと判断して良いでしょう.
表1.識別に使う形質
形質 | 状態 | 点数 |
A:足の色 | 明るいピンク | 5 |
赤味を帯びた茶色 | 1 |
暗い茶色,黒 | 0 |
B:中雨覆羽縁 | 白(暗色の基部と淡い先端の間に混濁が無い) | 4 |
暗色の基部から染み出た白でなくまたはバフ味を帯びた灰色 | 0 |
C:頬線 | 太く黒い(目の色と同じ) | 5 |
太く暗い灰色/茶色,淡い羽毛模様のある色合い | 0 |
非常に僅かまたは無い | 0 |
D:ネックレス | 厚く、切れ目なく密に縞模様になっている | 1 |
暗い色で、細い破れがあるか、ネックレスがない | 0 |
細くて切れ目がはっきりしている、または切れ目がない | 0 |
E:胸上部中央 | 太い黒の縞(その間の黒の縞の幅は白と同じ) | 3 |
暗い縞模様(その間に白/黄褐色よりも狭い暗い縞模様) | 1 |
細い縞模様または斑点模様 | 0 |
F:胸上部脇 | 黒い縞模様がはっきりと区別され、対照的である | 5 |
縁に沿って濃い茶色の縞模様がある | 0 |
拡散した斑点、縞状の斑点、またはまだら状の斑点 | 0 |
G:脇腹の縞模様 | 白い側面と対照的な黒い縞(2列以上) | 4 |
対照的な暗い縞模様(1列または2列) | 0 |
脇腹と目立たない細かい縞模様 | 0 |
H:下面地色 | 白い胸,腹,脇腹 | 5 |
殆どバフ色または薄汚れていて,脇腹はバフ色 | 0 |
判定に使う形質A-H
表2.種アメリカタヒバリ Anthus rubescensの亜種
亜小名 | 繁殖地/生息地 | 移動地 |
rubescens アメリカタヒバリ | カナダ北部および東部,グリーンランド西部,アメリカ合衆国北東部 | 中央アメリカ |
pacificus | アラスカ,カナダ西部,アメリカ合衆国北西部, | メキシコ西部 |
alticola | カナダ南西部(ブリティシュコロンビア南部),アメリカ合衆国西部 | メキシコ |
japonicus タヒバリ | シベリアタイミールからチュクチ,バイカル南部,カムチャッカ,北東ロシアの極東部,樺太及び千島列島 | 日本(北部を除く),韓国南部,中国南部および南東部,南東アジア大陸の極北部 |
参考文献
- Field identification of 'American Pipit' and 'Siberian Pipit' in autum and winter, British Birds May 2024, Vol117, 225-284
- Birds of East Asia, 2009, ISBN:978-0-7136-7040-0
- Birds of North America, 2020, ISBN:978-0-7440-2053-3
- Collins Bird Guide, 2022, ISBN:978-0-00-854745-5
- Peterson Field Guide to Birds of North America, 2020, ISBN:9781328771445
- Handbook of the Birds of the World Vol.9 Contugas to Pipits and Wagtails, 2004,
ISBN:84-87334-69-5
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