モンゴルカモメの識別
換羽時期および翼の模様

モンゴルカモメとセグロカモメの違いはすべてではありませんが初列風切の黒斑で見分けることができます.モンゴルカモメの繁殖地で調査した文献(*9), ステップカモメの繁殖地および博物館の標本で調査した文献(*10)にはモンゴルカモメとセグロカモメの初列風切の黒斑の調査データが示されています. この二つの文献からセグロカモメに初列風切の黒斑がP3から始まるものはいず,またP5に黒斑のないモンゴルカモメはいないことが読み取れます.

モンゴルカモメとセグロカモメの初列風切の黒斑 文献(*9) [%]
亜種P6-10P5.5-10P5-10P4.5-10P4-10P3.5-10P3-10P2.5-10標本数
モンゴルカモメ006074811189
セグロカモメ8442103600050
モンゴルカモメとセグロカモメの初列風切の黒斑 文献(*10) [%]
亜種P5-10P4-10P3-10標本数
モンゴルカモメ15.659.425.032
セグロカモメ61.838.2034


2007年2月に雲仙市の海岸で番のモンゴルカモメを発見しました.この番は以後2016年の4月まで毎年連続してこの海岸で越冬しています. 下の写真は2007年に撮影したものです.黄色い足と肉色の足の番です(以下YL,FL).
YLとFLの背の濃度は夫々GS5.3,5.6です.YLの初列風切の黒斑は両翼ともP3から始まっています.

また,この番は毎年10月下旬まで頭部は純白で月末から11月初旬にかけて冬羽の褐色斑が現れます.YLのほうがFLより濃く,FLの頭部の褐色斑はほとんど目立たず,後頸にまばらな斑があります. 背の濃度がセグロカモメ(GS6-7)より小さく,YLはP3から黒斑が始まり,FLは冬羽でもほぼ頭部が白いことからこの2羽はモンゴルカモメの番と判断しました.

換羽時期

2014年の10月から2015年の4月までほぼ3日に1度の割合で番の換羽の状況を調査しました.下のグラフがその結果です.P1は確認できませんでしたがP2-4については換羽完了時期を,P5-10については脱落から完了までを確認しました.

頭部は両者とも10月下旬から11月にかけておよそ一週間で褐色の模様になります.この褐色斑は2月下旬から徐々に薄くなりますが4月になっても僅かな染みが残っていました. 白い頭になるのは新しい羽が生えてくるのではなく,頭部の羽毛が摩耗して白くなると考えられます.

初列風切を見ると両者のP2-7の脱落と完了時期の違いは5日以内に収まっていますが,P8-10についてはFLの完了時期はYLより遅く,特にP10は一月以上遅くなっています.換羽の時期は天候によって変わる(*11)と言われています. 2007年から2016年までの年ごとの完了時期を写真で調べた結果YLのP10の換羽完了日は2月21-25日で4日のずれ,FLは3月7-31日で24日のずれがありました.またP5についてはYLが11月30-12月2日で2日のずれ,FLが11月14-26で12日のずれでFLはYLに比べて変動幅が大きい結果となっています. P6の脱落時期は2羽とも11月の初旬となっています.また頭部が冬羽になり始めるのは11月の初旬です.言い換えればモンゴルカモメは10月は頭部は白く,初列風切はP6-10が旧羽で残っていると考えることができます.
10月千々石海岸のカモメ類
頭部褐色斑斑
P6旧羽61465
P6見えない02929
P6新羽02626
6159120
これを確認するため,過去2006年から2015年の10月に撮影したセグロカモメ類と思われる写真で頭部と初列風切の状態を調査しました.右の表がその結果です. 120羽を調べた結果61羽が頭部が白く初列風切P6-10が旧羽で残っていました.これらはYL,FLと同じ換羽時期でモンゴルカモメと考えるのが妥当でしょう. 旧羽が残っていて頭部が褐色斑のものが4羽,残りの55羽の頭部が褐色斑のもののうちP6が見えないもの29羽,新羽のもの26羽でした. これらはモンゴルカモメ以外のセグロカモメ,アメリカセグロカモメ,ヨーロッパセグロカモメ,ニシヨーロッパセグロカモメのいずれかだと思われます.
モンゴルカモメ61羽すべての下嘴先端に赤斑があり,そのうち11羽が上嘴にも赤い色があり,1羽が上嘴に黒い斑がありました.足の色と数はY(黄):4,YR(橙):19,R(赤):7,RP(赤紫):31(Y,YR,R,RPはマンセル記号)でRPが一番多くYまでばらついています.
次列風切りは両者ともP8の脱落後10日ほどで換羽が始まりP9の完了前に完了しています.大雨覆いの換羽は両者ともほぼ同じでP5脱落後数日で始まりP7が半分ほど伸長した時点で完了しています. 尾はP7とほぼ同じ換羽時期です.これらの換羽時期はほかの種,亜種との識別の手掛かりになります. 下の写真をご覧ください.翼を広げた3羽のうち2羽がセグロカモメ,1羽がモンゴルカモメです.セグロカモメはP9-10を残してP6-8が換羽中で次列風切りも換羽が始まっています. モンゴルカモメはP7-10が残っていてP4-6が伸長中で大雨覆が換羽しています.換羽の状況は写真を撮ることで確認できますから確実に識別することができます.

翼の模様

初列風切の上下面の模様は大型のカモメ属の識別の手掛かりとなります.文献(*2)には多くのカモメ属の上面の模様が変異を含めて記載されています.また文献(*12),(*13)には翼,尾の模様を主体にアメリカセグロカモメとヨーロッパセグロカモメの識別について記載されています. セグロカモメ類の亜種の識別にも有効な手掛かりとなりますのでモンゴルカモメの翼の典型的な模様を整理しておきます. 下の写真はモンゴルカモメの番YL,FLの翼の模様(上下面)です.いずれも上面はP8-10が先端部の白斑を除いて黒く,P7から灰色の舌状模様が見えます.舌状模様先端のムーンは細くあまり目立ちません.また下面の舌状模様はP10,P9,P8,P7の順に長さが長くなります.

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