ハシグロクロハラアジサシ

 ハシグロクロハラアジサシChlidonias niger成鳥の繁殖羽は体全体が黒く他のアジサシ類とは容易に識別できます. しかし,成鳥の冬羽と幼鳥はクロハラアジサシChlidonias hybrida,ハジロクロハラアジサシChlidonias leucopterusとよく似ていてフィールドで識別するには写真を撮って判断するしかないようです.
 成鳥夏羽は頭部から胸,腹にかけてはハジロクロハラアジサシに似て全体が黒色です.翼下面全体は灰色でクロハラアジサシに似ています.胴体部はハジロクロハラアジサシ,翼下面はクロハラアジサシの特徴を持っています. 翼上面は濃い灰色で初列風切P5-7が他の風切より濃い灰色でどちらの種とも違っています. ハジロクロハラアジサシの翼下面は白黒のツートーンカラー(写真の1),クロハラアジサシの胴体部は顔後部から胸にかけて白色(写真の2)です.ハシグロクロハラアジサシ成鳥夏羽の写真を持ちませんのでハジロクロハラアジサシ成鳥, クロハラアジサシ成鳥の写真で類推してください.

 ハシグロクロハラアジサシとクロハラアジサシの幼鳥と,成鳥冬羽の写真を下に示します.左がハシグロクロハラアジサシ,右がクロハラアジサシです. ハシグロクロハラアジサシ幼鳥の背は黒と灰色の密なまだら模様(写真の3),手根上部が黒く(写真の4),また頭部は一様な黒色です(写真の5). これに対しクロハラアジサシ幼鳥の背は茶褐色と灰色の疎らなまだら模様(写真の6),手根上部は黒くなく(写真の7),頭部は胡麻塩模様です(写真の8).

 成鳥冬羽のハシグロクロハラアジサシの翼付け根には濃い黒斑があり(写真の9),頭部は一様な黒色です(写真の10). クロハラアジサシの翼付け根は薄い灰色の斑(写真の11),頭部は灰色のまだら模様です(写真の12).ハジロクロハラアジサシ成鳥冬羽はクロハラアジサシとよく似ていますが翼付け根は白色で斑はありません.

 なおハシグロクロハラアジサシは中央アジアからヨーロッパで繁殖するChlidonias n. nigerと北米で繁殖するChlidonias n. surinamensiの2亜種が記録されています(*1). 前述の識別はヨーロッパの文献(*2)に基づいて記述しています.アメリカの文献(*3,*4)では(*2)で示されている成鳥夏羽の初列風切P5-7の黒い模様が欠落しています.nigersurinamensiの 違いは初列風切の模様で判断するのが確実のようです.また,クロハラアジサシにもユーラシア大陸で繁殖するhybrid,アフリカ南部および東部,マダガスカルで繁殖するdelalandii, オーストラリアで生息するjavanicusの3亜種が記録されています. これらの識別の方法は判りませんが文献(*5,*6,*7)に記載された図は上記識別の方法と一致しています.

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