FADO
1. アマリア・ロドリゲスのアルバムをいくつか
COM QUE VOZ
(EMI Portugal 746 982 2)
リスボンの町並みのシルエットをあしらったシンプルなデザインのジャケットはLP時代からのもの。ダブル・ジャケットの日本盤も出ていた。CDもオーマガトキから濱田滋郎さんの解説、対訳付きで出ている。私にはアルバムとして最も好きなもの。1曲目の
Naufragio(難破船)の前奏が始まるや、頭にはは訪れたことのないリスボンの街角の光景が浮かぶ。「私の夢を船に乗せて海へ流そう」とアマリアの歌が聞こえると心はもう捕らえられてしまう。ブラジルの詩人メイレレスの詩。4曲目、タイトルの
Com que voz (どんな声でわたしはこの辛いさだめを嘆けばいいのか)は、現代の詩人のものではない。16世紀のソネット、おそらく大詩人のルイス・デ・カモネスのものとされる失恋の歌。この歌を聴きながら意味を想起できるようになるためだけのためにポルトガル語を学ぶ価値があるのではと思わせる、ミシュランなら三ツ星つきの歌。7曲目
Gaivota(かもめ)も、若き日の恋と海を飛ぶかもめをオーバーラップさせた名曲。
Amalia Rodrigues FADO PORTUGUES (Volumes 1 & 2)
(EMI France Vol. 1 - 7921112, Vol. 2 - 7940912)
フランスEMIの2枚組ベスト盤で、2巻からなる。ステレオ時代の録音が全部で56曲、アルバムなら5枚分強であり、ベスト盤として不足はない。特に国内盤の出ていないアルバムからも
Alfama や Meu amigo esta longe などの曲が収められていて貴重。しかも価格は2枚で1枚分の廉価盤仕様。問題は歌詞がついていないこと。
AMALIA NO CAFE LUSO
(EMI Portugal 7 99652 2)
「カフェ・ルーゾのアマリア」というタイトル。1955年12月のリスボン、カフェ・ルーゾでのライブ録音。国内盤は2枚組。
AMALIA NO OLYMPIA
(EMI Portugal 7 91259 2)
1950年代中頃の、パリはオランピア劇場でのライブ。
AMALIA IN ITALIA
(EMI Italiana CDPM 1403332)
EMIイタリアの盤。1曲めの
Nos as meninhas を除き、全てイタリア語で歌われている。2曲目、アリ・ドス・サントスの Meu Limao de Amargura(苦い果実)などもイタリア語に訳して歌われているのでオリジナルのポルトガル語の雰囲気との違いを聴き取るのも一興。録音年代がわからないけれど、ステレオになってからのものでアマリアの円熟した歌は、イタリア語で歌ってもファドの雰囲気を強く感じさせるものになっているが。
ABBEY ROAD 1952
(EMI Portugal 7 81195 2)
タイトル通り、ロンドンのアビー・ロード・スタジオで1952年に録音されたもの。57分ほどだが19曲も入っている。ほとんどの曲は軽快で、明るい曲調のもの。アマリアの声も高音が良く伸びて若々しい。最後の5曲はSPからの復刻。
AMALIA RODRIGUES
(EMI Portugal 7 92671 2)
1989年。ところが、解説は英語によるファドの一般的解説のみだが、輸出向けのベスト盤なのか、オリジナルアルバムなのか不明。8曲目の
Pove que lavas no rio は、上記のベスト盤に入っているテイクとは異なりサックスが入っていない。
OBSESSAO
(EMI Portugal 7 95018 2)
1990年。重い。アルバム・タイトルのオブセサン(英語のオブセッション)は最後の曲だが、曲調も、リズムも比較的清明な感じではある。しかし、ここには歌というファド(運命)に、あるいはファドという歌に取り憑かれたひとりの人間が、自分のうちにありながら自分を越えた力に驚き、ためらい、夢見るさまが描かれている。
AMALIA 50 ANOS - RARA E INEDITA
(EMI Portugal 7 93731 2)
タイトル通り、歌手活動50年を記念して、未発表レア・トラック集。24曲たっぷり。英語の曲も歌っている。
SEGREDO
(EMI Portugal 8 23686 2)
1997年発売。65年から75年の間に録音された未発表のトラックを集めたもの。なぜ今まで発表されなかったか、その理由は解説に詳しく書かれている(ファドのアルバムで解説があるのも珍しい)が、ポルトガル語のみのため読むのがめんどくさくて手を着けていない。日本盤も出ているはずなのでそちらには日本語訳されているだろうか。
LIVE IN JAPAN '86
(TOSHIBA EMI TOLW-3052) レーザーディスク
AMALIA RODRIGUES AO VIVO "LAGRIMA"
(VICTOR Japan VILP-31) レーザーディスク
2. 現代のファディスタたち
DULCE PONTES
1993年7-10月の録音。電子楽器も使っているが、歌い方自体は結構伝統的で面白い。3曲目の
Povo que lavas no rio(川で洗濯をするひとびと)はアマリアの十八番だったが、すっかりポップなアレンジになっている。トリビュート盤というところだろうか。4曲目、アルバム・タイトルにもしている
Lagrimas(涙)は、まさにアマリアの詩による。レーベルはポルトガルのMovie Playだが、私の持っているのがブラジル盤(マナウスで作っている・・・)なので番号は参考にならない。日本盤も出ていたと思うが。
96年に発表された最新盤。カミーニョスは「道」の意味。その前に2枚組のライブがあるが、未聴。1曲目からピアノ伴奏で驚くが、これはファドそのもの。3曲目、Fado
Portugues と言いながらポップ風の前奏でアイルランドあたりのフォーク・ポップかと思うが、歌が始まると納得。4曲めはアマリアの歌でも有名なアレクサンドル・オニールの詩になる
Gaivota(かもめ)。ギターとピアノによる伴奏に乗せて表情たっぷりに歌われる。もちろん、円熟の頂点にあったアマリアのアプローチとは異なるが、これはこれでよい。
MISIA
(BMG Japan BVCP-901) 邦題は「ファドの女」...(^^;) なお、R&B系Jポップのメチャウマ歌手、ミーシャ(MISIA)とは全く違いますので。。。当たり前ですが。
(WARNER Japan WPSR-5577) 邦題は「リスボン・センチメンタル」.....(-_-;)
BEVINDA
ベヴィンダは主にパリで活躍している歌手。ファドというより、フランス系ワールド・ミュージックに近づいている。タンゴ風の曲もあり。マドレデウスをもっとムーディーにした感じ。特にこのセカンド・アルバム「地と空」(6曲目のタイトル)からは視線の拡大が顕著。最後の10曲目が、ドゥルス・ポンテスも歌っていたアマリアの
Lagrima で、少しケルト音楽的な味付け。(CELLULOID France 66977-2)
1998年1月、パリのライブ・ハウス、シャペル・デ・ロンバルドでのライブ録音。ファースト、セカンドアルバムからの曲がほとんど。ライブとあって表現はスタジオよりも濃い。
(CELLULOID France 66402-2)
3. リスボンの涙
TEARS OF LISBON
(SONY Classical SK 62256)
1999.4.29.