新年の小さなお祭り (ルアンパバンにて)
New Year's Ceremony in the neighborhood ( at Luang Prabang )


  ラオスの人々の温かな横顔を見た、そんな気がした小さなお祭り、新年の儀式だった。

  4月30日の夕闇も迫る頃、ベッドに転がっていると、楽しげな弦楽器の音が耳に飛び込んできた。お祭りだ! そう直感し、すぐに宿を飛び出す。案の定、すぐそばの路地の入り口に十数人が集まっていた。こんにちは、笑顔をふりまきながら、彼らの後についていってみる。やがて一軒のお宅へと入って行く。何やらお祝い事らしい。開け放たれた入り口から子供たちといっしょになって中を覗き込んでいると、おいでおいで、と手招きされた。こちらの礼儀に従い、胸の前で合掌しつつ中に入る。

  居間に近所の人20人ほどが集まり、お盆の上に載せた花飾りの山を囲んでいる。聞くとやはりお祝いとのこと。ここの主人が明日バンコクに飛ぶのだが、その安全を祈ってだと、黄色いTシャツを着ているその当人から説明された。しかし、そもそもこの儀式は、新年に際し、この一家の幸せを祈ってのものだとのこと。ラオス暦の正月は半月ほど前のはずなのだが、これは新年の行事なのだそうだ。

  中央の花飾りの盆に、皆で手を触れたまま、一人の老人が唱えるお経のようなものを聞きつつ祈り続ける。それが終わると、今度はみんなが一人づつ、主人をはじめとしたこの家の人間の手首に紐を結わきつつ、再び幸せを祈る。おかげでこの主人の手首は白いヒモだらけになっている。このヒモを結んでもらえるのは、この家の人だけ。そして、飛び込みの外国人である私の手首にも、幸せを祈って巻いてくれた。歓迎されているようで、とても嬉しい。

  やがて、何品か料理が出され、そしてビールやお酒が次々と振る舞われる。もちろん私の前にだって何度もグラスが差し出される。当然毎回一気に飲み干して返す。

  この酒と料理と同時に先の弦楽器(胡弓のようなかたちの楽器である)、と太鼓、そしてシンバルを小さくしたような鐘で再びあの楽しい音楽が演奏され始める。弾き手、叩き手だって、お酒がまわってすっかり上機嫌になっている。そして伝統の民謡だろうか、女性が張りのある声で歌い出す。皆も続いて声を上げる。やがて皆立ち上がり、踊り出す。とても自然身体が動き出す感じだ。本当に楽しそうで、手首の動きも軽やかだ。こうした伝統行事を通し、温かなふれあいを、コミュニティの結びつきをつないできたのだろう。人と人とのつながりが希薄な現代日本、なんだか彼らが眩しく見え、そしてうらやましい。
今、楽しげな音と声に誘われ、また白人のカップルが覗きにやってきた。もちろん彼らも大歓迎で招き入れられる。

  私も踊り、すっかり酔いが回っていい気分。この家での儀式はお終いで、続いて次の家に向かうのだという。なるほど、こうやって近所を一軒一軒祝って周っているのか。

  この晩を含め、3晩連続でこのお祭りに加えてもらった。3日目の夕方なんて、道を歩いていたら「おい、今晩は6時からだからな」なんて感じで向こうから声をかけてもらえた。日中歩いていても笑顔を向けられ、子供たちも「こんにちは」なんてあいさつしてくれるようになった。
  ただの通りすがりの旅人に過ぎないのだけれど、たとえ一時だけでも仲間になった、そんな気持ちにさせてもらえた。
多くの旅行者がこう言う。
「ラオスはね、人がいいんだ、魅力なんだ」
もちろん私もそんな旅行者の一人だ。そうさせてくれたのはルアンパバンの人たちだ。
 

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お盆の上の飾りを囲みながら主客となる家族の手首にヒモを結わきながら一年の幸せを祈る。飛び入りの外国人も主客として、同様に祈ってもらえる。
Ceremony. Everybody prays happy of main guests. Also they pray happy of foreigners.

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外国人も輪の中に加えてもらい、なごやかな談笑が続く。
We foreigners join them with smile.

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酔いがまわると、楽器と歌声に合わせ皆踊り出す。
Happy dancing!

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次の晩も別の家で新年のお祝いは続く。食べ物をつまみ、酒を飲みながら。中国の胡弓のような楽器と太鼓で楽しげな演奏も止まらない。

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飛び入りの外国人をいつも主客として扱ってくれる
They always treat Foreigners as Main guests.
 


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