こんな一日(その1)



  さて、一体どうしたものか。いきなり困ってしまった。とにかくウガンダに来てみたのはいいのだが、行く場所が思いつかないのだ。
 「アフリカ = 野生動物」 という構図を思い浮かべる人は多いだろう。実際、アフリカの真珠と称されるほど緑豊かなウガンダ観光の目玉は、山の中に棲むのゴリラを見に行くトレッキングツアーだ。だが、ゴリラが生息する国境地帯の山中は、どこも反政府ゲリラの活動が活発で危険とされる。実際、99年には外国人観光客が惨殺されるという事件が起きている。
「いや、ブウィンディ国立公園は、武装した兵士の護衛がつくから大丈夫らしいよ」
そんな話も聞いたが、武装兵士に守られてまでしてゴリラに会いたいとは思わない。命がけの旅をする気は全くない。

 今、首都カンパラに来ている。とにかく街に出よう、そう決める。宿を飛び出すと目の前は巨大な市場オウィノ・マーケットだ。
ここは生活のための市場、生活に関するものなら食料から洋服まで、なんでも揃っているようだ。穀物を売る店を覗くと米の山があり、"Vietnam 800"  などと書かれた札が立っている。遠く東南アジアから運ばれてきたベトナム米に1Kgあたり800Ush(※ US$1=約1800Ush)という値がついていることになる。さらに迷い歩くと今度は、靴、それも奇麗に修理、磨き上げた中古靴を売る店が連なる場所に出た。見た感じでは、欧米から流れてきた物ようだ。中古車が輸出され、アフリカの国々で人々の足として活躍しているのは知っていたが、これは知らなかった。本当の足にも中古品が大活躍かよ、と一人で感心していると「おい、そこのチャイナ、一足買っていかないか」と声が掛かる。

 今度は両替をしようと、街の中心部に向かう。このカンパラという街は丘の上に出来たような街だ。移動は、つまり坂を登る下る、ということになる。肌を刺す赤道直下の日差しはやはり強い。首筋がジリジリと焼けてくる。しかし、それほど暑くは感じない。ここは標高1,100m以上の高地に位置する。日本で言えば真夏の高原の様な気候になる。ケニアのナイロビにいたっては標高1,700mもあり、さらに今は冬〜春のシーズンにあたるため、セーターを着て歩いている地元の人も少なくなかった。とにかく東アフリカ全体が、海岸部を除くと、どの国も高原の上にあるようなものだから、こんな"夏の軽井沢"気候になる、と知ったのは、実際にアフリカに着てからだ。

 フォレックスビューロー(両替商)・銀行が並ぶ地区に着く。店先の為替レートを見て驚いた。同じ米ドルでも札の額面によって極端にレートが違うのだ。100ドル札だと、どの店・銀行も1ドルあたり1810Ushくらいで交換してくれるのだが、20ドル以下の札だと1610Ush位と極端に悪くなる。T/Cでは1600Ush以下になる。問題外だ。うかつにも手持ちに小額の米ドル札が多い私はかなり不利なことになった。どこか一軒くらい違うレートを出している銀行はないか、真昼の街をさまよい歩く。

 ついに見つけた。一軒だけ、Standard Chartered Bank だけが50ドル札以下のどの小額紙幣でもUS$1=約1,795Ushという破格のレートで交換してくれるのだ。迷わず換金だ。

 早速列に並ぶ。前のオバさんと受付の女性との会話に耳を傾けると、それは滑らかな英語でのやり取りだった。オバさんは明らかに地元の人だ。つまり、ウガンダ人どうしの会話が英語ということだ。これは、ケニアでもそうだったが、同じく英国植民地だったウガンダでも、英語がかなり通用することを意味する。現地語があるのに何故、と不思議に思っていたのだが、理由を聞いたら納得だった。いくつかの部族があり、それぞれが違う部族語で話すという。したがって、違う部族どうしだと、お互いの言葉が解らず会話が出来なくなってしまうことになる。そのため、共通の言葉として旧宗主国の言葉、英語で頻繁に会話することになる。地元のみで生活する人はともかく、そうでなければ英語は重要だ。同じ宿のウガンダ人は「英語なら問題ないけど、スワヒリ語はあまり良く解らないんだよね」などと言っていた。

 両替は終わった。さあ、さらに街を歩こうか。いつだって、何か特別なことをするわけではないけれど、ブラブラと街を歩くのはとても楽しい。車の、そして人のざわめきが、初めての街の風景が、ただ歩くだけ、という行為をまるで飽きさせない。この坂の先に、整然とした官公庁街があるらしい。旧植民地時代の建物が整然と並んでいるのだろうか。歩いてみよう。
 

写真をクリックすると、大きな画像で見ることが出来ます。
 Click on pictures to get the full size.

(Full Size 46 KB)
市場オウィノ・マーケット(カンパラ)

(Full Size 40 KB)
カンパラの街。坂道である。(カンパラ)
 
 

こんな一日(その2)
Uganda INDEX
Travel 2 INDEX Page


All rights reserved by Yasuto Oishi.  禁無断転載