(7)1999/08/14



「Are You Grad To Be In America?」
 b/w T.V. Blues
 James Blood Ulmer
 英ROUGH TRADE 7inch●RT045 1980
 ハーモロディクス・ギターで衝撃を与えた
 オーネット門下のギタリスト、ウルマー。
 ニューウェーブ・ファンにも注目された
 1980年発表の同名LPからのシングル・カット。


■くそぉ!!!!! いちゃいちゃカップルが・・・(-"-)

 1980年頃、輸入盤を手に入れるには、博多にある「タワーレコードKBC」という店まで行く必要があった。わてが住んでいた町にも輸入盤屋はあったけど、品揃えが売れ線ばっかだったのだ。汽車に揺られて、えっちらおっちら1時間と30分・・・。

 ある日のこと。店内で出物を物色していたら、隣でえらくいちゃいちゃ、ベタベタ、ねちょねちょしているカップルがいた。アロンアルファもまっ青の接着度で二人して餌箱を漁っていたその姿は、店のムードとまったく場違い。「ぬぁにやってんだぁ、おめえら!(-ー;」と硬派音盤主義者の導火線に怒りの炎を点火しつつあったのである。(といっても、モテナイひがみではない。為念)

 と、ところが。そのカップルの男がひょいと持ち上げたアルバムが目に入ったとき、わては狼狽したんである。なんとその男、ウルマーのニューアルバム『Are You Grad To Be In America?』のイギリス原盤を手にしているではないかぁっっっっっっ!( ̄▽ ̄;;

 「おぃおぃおぃ、似合いやせんて〜〜!。おめえらは、“ふゅーじょん”でも聴きよきゃええったい!!。じょーじ・べんちょん、とかさ!!!(-"-)」なぞと内心怒り爆発状態であったが・・・・・・・・・・・・

 かくして、大魚は目の前でさらわれて、わての手元にはイギリス原盤のシングル(上記画像)しか残らない運命と相成ったのである。それにしても、いまでも超悔っちいのだ(T_T)。


■オーネット直伝、ハーモロディクス・ギターの衝撃波

 と、昔話を書いたのはほかでもない、いちゃいちゃカップル御用達にもなるほど話題になったアルバム、ということをお伝えしたかったのである。いや、ほんとに凄い衝撃を当時与えたのだ。

 当時ジャズ界の主流となっていた、商売っ気丸出し堕落‘融合’路線に飽き飽きしていた硬派ファンに加え、ニューウェーブ&オルタナティブに心を奪われていた青少年にまで、ウルマーのファンク・ジャズは影響を及ぼした。アルバムの日本発売は81年(ジャパンRTL-8:左画像。日本オリジナルのカバー・アート)とすこし遅れたが、熱い注目の中での発売となった。

 オープニングの「Layout」から、なんとも形容のしようがない、今まで聴いたこともなかったギターがのたうち回るのである。「こんなギターの弾き方・音の出し方があるんだぁ?!」と、まさに既成概念に囚われていたギター小僧にはとんでもないカルチャーショックだった。

 フリー・ジャズの巨匠、オーネット・コールマンの提唱したハーモロディクス理論は、メロディ・ハーモニー・リズムを等価として扱うという考え方らしいのだが、頭の悪いわてには何がなにやらさっぱりである。であるが、アミン・アリのベースを主軸にギター、デイビッド・マレイのテナー、ロナルド・シャノン・ジャクソンのドラムがもつれ合いまた離れながらも、不思議な統一感でぐいぐいと聞き手を音の渦に巻き込んでしまうことに、そのニュアンスは感じられる。

 オーネットの門下だった時代の海賊盤、また初ソロ作の『Tales Of Captain Black』(79年)ではいまだガップリと己をつかんでいなかったが、この『America?』では吹っ切れたかのように、音が大爆発している。

 それは『Tales Of・・・』にも収録されている「Revelation March」を聴き比べると一目瞭然で、『Tales Of・・・』での礼儀正しい整然とした造りから一転、『America?』ヴァージョンでは、迷いが無くなったかのようにギターやテナーが咆吼しまくっているのだ。フリーフォームなジャズにファンクビートが融合した新しい音楽形態=ウルマー曰く“BLACK ROCK”の誕生を見たのだった。


■ジャズは先生、ファンクは伝道師・・・

 このアルバムの中で象徴的な曲は、以外にもウルマーの“ぼやき風ボーカル”ナンバーの「Jazz Is The Teacher(Funk Is The Preacher)」だとわては思っている。ジャズは知識の伝授者ではあっても、ファンクの様に心に糧を与える存在ではないという意味であろうか。形骸化したジャズに飽きたらず、その境界領域を突破しようとしたウルマーらしいタイトルである。

 そして、その突破の成果が『BLACK ROCK』(82年)となって結実する。ウルマーの音楽をジャズにくくってしまおうとするレコード会社への意志表示も含めて“黒いロック”とタイトルを振ったことに、ウルマーの決意が伺える

 さて、余談だがウルマーのボーカルナンバーは大変味があって、タイトル曲「America?」やその後の「BLACK ROCK」でも、ウルマー独特の
「ラァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ウ!ホォウ、ウゥ〜ウウ!サカ・ノセ・ノォ、ゲッチョォーー」
という判読不能のぼやき風ボーカルが堪能できる。これが、なんとも心地よい響きなのだ。


 さて、『BLACK ROCK』をCBSから発表後、ウルマーは次作でバイオリンを入れたメロー路線にチェンジして、ファンは唖然! 過激なイメージはぶっ飛び、人気も失速した。その後日本のDIWで多くのアルバムを制作したが、往時の爆発を取り戻すことはもうなかった・・・。

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