(53)2003/01/01
『Pet Sounds』

THE Beach Boys
日 東芝EMI◎TOCP-66031 1966


ビーチ・ボーイズの最高傑作、また
ポピュラー音楽界でも至高の名作と言われる
有名なアルバムを遅ればせながら聴いてみた。
■And you'll never hear surf music again......

「そうすれば、もう君はサーフ・ミュージックを聴かなくても済むんだから・・・」

Jimi Hendrixが1967年に送り出した1stアルバム『Are You Experienced?』の中のフリーキーな1曲、「Third Stone From The Sun」の中で語ったその言葉は、ジミが「ロック」として確立する新たな地平線上のアリアの、高らかな宣言であるとわては思った。

逆にジミ一流の言い回しらしく、オールド・ファッションとしてトドメを刺された代表にサーフ・ミュージックが引き合いに出されたのが面白い。確かにその天真爛漫さが、1960年代初頭という時代と風俗に殉じた印象を与える、特にわてのような後代の人間ほどそう感じるのである。

◇   ◇   ◇

ところで、ビーチボーイズとの出会いは、わて自身は1960年代の終わり。亡くなった母方の叔父がヴェンチャーズとサーフ・ミュージックのファンで色々とシングル盤を持っていた。当然「Surfin USA」などのビーチ・ボーイズもコレクションに入っていた。それを密かに聴いていたのだった。

でも正直なところ、それくらいしかビーチ・ボーイズへの門戸は広がらなかった。だって“びいちぼいうず”って名前もダサイしなぁ、チャック・ベリーのパクリじゃんかあ〜、みたいな印象しか無いしぃ〜。ん〜〜ん、なんかねぇ〜イマイチだったのでありんす。

◇   ◇   ◇

ところが、昨年福岡に来たブライアン・ウィルソンを見た会社の先輩(亡き叔父と同年代のリアルタイム・ファン)が、感動したコンサートの内容を語ってくれた。そして良かったら、BB5のドキュメンタリーである「エンドレス・ハーモニー」というテレビ番組を録画しているので見てみないか、と言ってくれたのだった。

そのビデオを家で見ていたら、ちょうど『Pet Sounds』のエピソードが出てきて、その音が流れ始めたのである・・・・おおおお!(@_@;)

■これは本当に大傑作! 美しい聞き惚れまくりの13曲!

And you'll never hear surf music again......

と思っていたもう一人の人物がいた。それはサーフ・ミュージックの最大の当事者、ブライアン・ウィルソン本人だ。彼もサーフ・ミュージックなんて作りたくも聴かせたくも無かったんだにゃ。このアルバムを聴いていると、もうそんな俗世のことなど彼の頭には無縁となっていたのだと思える。

彼があの『Rubber Soul』に衝撃を受けて製作を開始したというこのアルバム。ビートルズがヒットメーカーからレコーディング・アーティストへと変貌を遂げる姿を目の当たりにして「負けていられるか!(-"-)」と力が入ったんだろうなぁ。双方のアルバムを聴き比べてみたら、ブライアンの気持ちが解るような気がするったいねぇ・・・。

とまぁ、「Wouldn't It Be Nice」から始まる13曲、もうわては完膚無きまでにノックアウトされましたよ。なぜこれほどまでに美しい曲群が存在するのだろうか。聴きながら、涙が出て仕方がなかった。本当に美し過ぎる。

ずっと以前から知っていた曲は「God Only Knows」のみで、聴いたのは高校生の頃に買ったあるコンピに入っていたジョニー・リバースのカヴァー・ヴァージョン。今回オリジナルと聴き比べたら、ジョニーのは丸のまんまコピーやないかい!(@_@;)

逆にそれだけ、当時のイギリス勢にこのアルバムが与えた影響の大きさを物語っていると言えますにゃ〜。で、やっぱりこの曲は名作、そしてビーチ・ボーイズのヴァージョンは天上の響きのように心にじんわりと染みる。

ストリングス、ホーン、そして持ち味の分厚いコーラスがもたらす、厚みのある音と曲の展開の面白さ、綺麗さ・・・これはぜひ未聴の方は聞いていただくしかない。曲調がいろいろと変転しながらも、元の流れに着地する際の、言葉には表現出来ないスマートさと美麗さは、格別である。

主なところでは、「Don't Talk」でのもの悲しい叙情的なストリングスの用法、「You Still Believe In Me」「God Only Knows」のコーラス・オーケストレーションとでも言うべき、荘厳なる声の轟き。「I Just Wasn't Made For These Times」の悲痛な、でも美しいメロディの展開も素晴らしい。ま、どの曲もいい出来なのである。

はっきり言って、無駄のまったく無い、文字どおり珠玉の作品集

もう毎日このアルバムを聴き続けている。どっぷりと浸かっている。どうしてもまた何度も何度も聴きたくなる何かを、『Pet Sounds』は持っている。掛け値無しの大傑作。

なぜ今まで意を決してこれを買おうとしなかったのか、まったくわては馬鹿野郎だった。

■『Pet Sounds』が無ければ、『Sgt. Pepper』は無かった。

『Pet Sounds』を遅ればせながら聴いて衝撃を受けたわては、新規に『The Beach Boys Greatest Hits1962〜1965』と、宿敵ビートルズの『Rubber Soul』『Sgt. Pepper』を20数年ぶりに購入して、聴き直して比較してみた。

でも、無駄だった。

『Pet Sounds』で見えたロックンロールからの超越と自己表現者としての確立というテーマを、『Sgt. Pepper』はさらに拡大再生産したというのは感じ取れた。とはいえ、『Pet Sounds』の楽曲は、人の心の根元にある何かに働きかける作用があるようだ。ブライアンの音の宇宙に身をゆだねていたら、もう比較もなにもかもどーでも良くなってしまった。

「『Pet Sounds』が無ければ、『Sgt. Pepper』は存在しなかった」と言ったのは、ジョージ・マーティンだった。「ブライアン、いつ、また次の『Pet Sounds』を聴かせてくれるのかい?」とオマージュを捧げたのはポール・マッカートニーだった。

そう彼らに言わせた何かが、やはりこのアルバムにあるんだなぁ〜。もうすぐ発売から40年になろうかという作品だが、時の経過による風化などはまったくない。

All Time Greats、この言葉はこのアルバムのためにあるようなものだと、つくづく思ふ。


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