(18)1999/11/03



『Nuggets』
 Various Artists
 日 P-VINE◎PCD-1139〜44 1998
 60年代中期の米サイケデリック・ガレージパンクの集大成。
 LP2枚組『Nuggets』の拡大復刻CD4枚ボックス。
 好き者におすすめの“金塊”(Nuggets)が詰まった宝箱。



■苦節20年、感動の再会(T_T)

 このCD4枚ボックスセットの『Nuggets』が復刻されて1年になる。再発をきっかけに若いファンが結構ホームページ上で取り上げていたのを見て、やっぱり『Nuggets』の影響力は大きいな・・・とあの頃思った。

 ギタリスト・評論家のレニー・ケイ編集による初版のLP2枚組がエレクトラから出たのが1972年ですぐ廃盤。サイアーからの再発が1976年で、その後1980年頃までサイアー盤のカットアウトが安く輸入盤屋の店頭にあった。

 わてがカットアウトのサイアー盤を買ったのが1978年。とある大型ショッピングセンターの輸入廉価盤販売コーナーでだった。ダメもとで餌箱の盤をくっていたら、表に「サイケデリック」の文字。値段は2枚組で1980円、中味はわからないが“安い”、で即買い。まぁ、スーパーの店内催事のちんけな売場に、とんだ“金塊”が眠っていたもんだ。

 さて、『Nuggets』は1960年代中期アメリカのサイケデリックやガレージパンクの有名無名バンド、その埋もれたシングル盤を集めたコンピュレーションである。1970年代半ばのパンク・ムーブメントの原動力のひとつとなった大名盤なのだ。

 が、しかし・・・オーディオの世界は1982年からCDの時代に突入したが、いつまで経っても『Nuggets』がCDとなって掘り出される気配はなかった。ライノから同名同趣旨のCDシリーズが出たり、他には『Pebbles』シリーズなども登場したが、オリジナル『Nuggets』の密度から比べると、(T_T)という感じ。ほんと来る年来る年、レコード屋のサイケコーナー前から虚しく立ち去る日々が続いていたのよね。

 『Nuggets』信者迫害の苦節20年は、それはそれは長く辛いものだったのである。ところが昨年(1998年)、感動の再会を果たすことが出来たのであった。・・・長生きはするもんである(^^;;。


■アマチュアリズムの勝利。

 『Nuggets』に収録された雑多なバンドの猥雑な音の魅力。それはわてなりに一言で表すと“アマチュアリズムの勝利”ということに尽きるですな。もう、手めぇらのやりたいことをまんまマイクにぶっつけましたって潔さが、聴いていてなんとも“気持ちよかぁ”という感じ。つまり音づくりに妙な「色目」を使っていないのがいいのであるぅ。

 つまり、プロとしての演奏テクニック、機器が完備されたレコーディング環境、マス・マーケティングを意識したプロデュース・・・といった音楽ビジネスとしての“洗練”とは、まったく極北にあるその姿勢がいま聴いても衝撃をもたらしてくれる。

 CD4枚組の中で、やはり一番思い入れの深いオリジナル2枚組が詰まったCD1に話を絞ると(歳だから4枚全部なんて語れない(自爆))、The Seeds「Pushin' To Hard」、The Leaves「Hey Joe」あたりにアマチュアリズムの稚拙さとそれに比例するパワーを感じちゃうね。

 そして、わてにとっての白眉はThe 13th Floor Elevatorsの「You're Gonna Miss Me」。この曲、もう何百回聴いただろうねぇ、ほんと。『Nuggets』冒頭のThe Electric Prunes「I Had Too Much To Dream」と並んで、サイケのベスト・トラックだと思うな。13thは79年頃に英RADARからLPが再発されてオルタナティブ・シーンにも影響を与えたと思う。CD時代にもギリシャからオリジナル・アルバムが復刻されて聴くのに苦労はなかった。

 ところで、まったく面目なかったのがChocolate Watch Band。LPを買って2回聴いて以来、針を落としていなかった。今回の復刻でその収録曲「Let's Talk About Girls」を聞き直したら、なんともアグレッシブなパンクの名演。20歳で気付かなかった魅力が40歳になってわかるとは・・・嗚呼( ̄▽ ̄;;。皆さん、ちゃんとアルバムは聴きましょぉ(後悔先に立たず)。


■マグマとしての『Nuggets』。

 さて、他のCD3枚分については、あまりにも数が多く、それを語る度量も持ち合わせていない。そんな中、今回の復刻で初めて聴いて気に入ったのがSonicsで、それはこのコーナーの一番最初に取り上げた。

 復刻盤を通しで聴くと、「アマチュアリズム」ということではこのSonicsが一番の最右翼だと思う。その乱暴に叫びまくるボーカルは、感情をバイアス無しで表現・・・いや、“吐き出す”というパンクスのあり方を象徴的に示しているって感じ。70年代のパンクスはオリジナル『Nuggets』を愛聴していて、それはまさに隔世遺伝で甦ったものだったのね。

 というわけで、この復刻盤『Nuggets』も地底のマグマの様に脈々と熱く流れて、またいつか地上に溶岩をまき散らしてくれるんだろうって思ってる。70年代の次はいつになるんだろう。わて自身が火山灰みたいになる前に、早くその時を迎えてみたいもんですにゃ(#^0^#)。

 *『Nuggets』ボックスについての詳しい記事は雑誌『レコード・コレクターズ』1998年12月号を参照。


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