(13)1999/09/04



『Y』
 The Pop Group
 英RADARSCOPE◎0630 14003 2 1979(Reissue 1996)
 当時17〜8歳のメンバーが奏でた革命ののろし。
 英ブリストルから飛び出したオルタナティブのMILESTONE。
 “ロック”の既成概念をぶち壊した稀代の名盤。



■あたしはこれでギターを捨てました(#^_^#)。

 なんて書くと大げさやけんども、ほんとにこのアルバムに出逢って、わてはプロミュージシャンになりたいという希望を捨てましたにゃ。

 買ってから20年後の今、これを聴きながらパソのキーボードを叩いているんやけど、最初の出会いに感じた“既成概念をぶっとばす衝撃度”は、健在なのである。・・・つまり、音が風化していない。

 彼等の音楽は本当に“自由”なんだなぁ〜。ジャズ、ロック、ファンク、現代音楽etcをごちゃ混ぜにした・・・なんて当時言われたんだけど、まったく形に収まらない自由な音がとても魅力だった。20歳だったわては、17〜18歳位だった彼等の奔放な演奏に触れて、「もぉ、かなわんなぁ( ̄▽ ̄;;」と・・・。

 その「かなわん」とは、単に演奏が上手いとかのテクニック論ではなく、彼等の吐き出す音塊そのものが、まったくこちらの経験知を飛び越えた「彼岸」から発せられていたことだった。

 彼等自身が実生活においても自由を希求したことは、このアルバムの著作権を放棄したという有名なエピソードがよく表している。当時から名盤の誉れ高かったこのアルバムに対して「銭はいらぬ!この楽曲はみんなの“共有財産”である」という意志表示。

 そのため権利関係が明確にならず、CD時代になっても再発が出来ず、結局ファンは17年待たされることになるのだが・・・。


■ダブがロック色を排除して、「孤高の音」が生まれた。

 The Pop Groupはマーク・スチュワート(vo)を中心としたイギリス・ブリストル出身の5人組。彼等はこのアルバムで、ストラングラーズのヒュー・コーンウェルからのプロデュース依頼をけっ飛ばし、レゲエ・グループ「マトゥンビ」のリーダー、デニス・ボーヴェルとの共同製作を選ぶ。

 理由は、「一切ロック色を排除したかった」。結果は、ボーヴェルのダブ・ミックスが彼等のフリー・フォームな演奏にさらに抽象度と衝撃度を高める作用をもたらして、まさに正しい選択だった。これがフツーのプロデューサーだったらこのアルバム、名作になり得なかっただろうね。

 だいたいグループ名のThe Pop Groupからして逆説的な名前で、イギリスのレコード会社のカテゴリー分けにおける「売れ線」的なニュアンスなのだ(同類にFile Under Popが居る)。しかし内容は、売れることなど意識していない過激なシロモノだった。

 彼等の基本的なスタンスはファンクだが、フリー・ジャズの影響も大きく、特に一曲目の「Chief Of Fire」はローランド・カークの『Rip Rig & Panic』(左上画像 米EMARCY◎832-164-2 1965)タイトル曲の影響が素直に出たつくりで、つい微笑んでしまう。よほど好きだったんだろうなぁ〜。

 とはいえ、彼等の音楽はホンモノだった。彼等が吐き出す音は、商業主義のガラクタとも、その裏返しに見えて根本は同じ釜の飯の“ロック魂”とも無縁だった。


■青臭いとは言われても、やっぱその主義主張が好きなのよね。

 その後彼等は抽象的な作風からチェンジし、ラフトレード移籍後の2ndシングル「We Are All Prostitutes」(1979/10)、2ndアルバム「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Muder?」(1980/3)の発表で、政治的姿勢を明確にしたメッセージ色の強い作品を発表してファンを驚かせた。

 「We Are All Prostitutes」は今聴いても熱い曲だ。ファンク・ビートをバックに、トリスタン・ホンジンガーの前衛チェロがギーコーギーコーと鳴り響く中、マークは「俺達は娼婦だ!自分たちの欲望を満たすための消費者ファシズム。資本主義はすべての宗教の中で最も野蛮な信仰だ」と叫ぶ・・・。

 彼等は、その過激な音と主張故に内部のゴタゴタが絶えなかった。そして3枚目のアルバム発表後、空中分解。あえない最後だった。政治的主張の急先鋒だったマーク・スチュアートはON-Uレーベルを根城に、エイドリアン・シャーウッドと実験的な音造りに邁進していったのだが・・・。

 さて、20年後。まぁ、皮肉なもんで、現在わては消費者ファシズムの片棒をささやかながら担ぐ女衒の役を果たしている(#^_^#)。とはいえ、彼等のメッセージは苦界に身を落としてしまったわてにとって、いまだに心を熱くさせてくれるのだ。青臭いと言われようが、その主張に共感を感じている。いまでも。

 そういえば『Y』のラストナンバーは「Don't Sell Your Dream」だったなぁ・・・。耳の痛い言葉だ(/ー\)ポッ

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