★ 実用新案法5条5項2号、登録請求の範囲の記載要件

H11. 9.22 東京高裁 H10(行ケ)212 空気清浄装置実用新案

平成10年(行ケ)第212号審決取消請求事件

(争点)

登録請求の範囲に、文言上、考案の課題を解決できないものが含まれる場合、実用新案法5条1項2号違反となるか。

(判旨)

 実用新案登録請求の範囲においては、実用新案登録を受けようとする考案に関する基本的事項を明確に記載すれば足りるのであって、当該考案の目的、作用効果の達成を困難とするようなすべての具体的構成を排除するように当該請求の範囲を記載しなければならないわけではない。

(判決文の抜粋)

 また、原告は、本件各考案が、上記実施例以外にどのような形状でどのように立設される第2の対向電極を含むのかが明確でないから、円筒状の第1の対向電極が形成する中空の通路を閉鎖するような形状のもの、該中空の通路における空気の流通を困難にするような形状のもの、円筒状の第1の対向電極との間では放電せず第2の対向電極との間でのみ放電するような形状のものも、文言上含むことになるが、このような形状のものは、本件各考案の課題を解決できず効果も達成しないと主張する。

 しかし、実用新案登録請求の範囲においては、実用新案登録を受けようとする考案に関する基本的事項を明確に記載すれば足りるのであって、当該考案の目的、作用効果の達成を困難とするようなすべての具体的構成を排除するように当該請求の範囲を記載しなければならないわけではない。本件各考案においても、その実用新案登録請求の範囲に、当該目的、作用効果を達成するための事項が明確に開示されていることは前示のとおりであり、第2の対向電極に関して、原告があえて本件各考案の作用効果を達成しないように想定した形状のものを、逐一排除するようにその具体的な大きさや形状を記載する必要のないことは明らかである。したがって、原告の上記主張は失当であって、到底これを採用することはできない。

(コメント)

 原告主張のような疑問は、特許請求の範囲を起草する際に常に抱く疑問である。また、特許権侵害訴訟などにおいても、これに類する疑問を特許請求の範囲について抱くことがある。本判決は、このような疑問に対して、一つの答えとなるものである。実務的には極めて有用な判決である。