国民の声を政治にいかすには〜情報公開制度の重要性

 「情報公開制度の完備がその国の民主政の成熟度を表す」

 重い意味を持った政治格言だと思います。これは、実際のところ、どういう意味なのでしょうか。@国民の声を政治に活かす、A政治の在り方を国民が監視する、という二つの点でこの格言を考えたいと思います。

(1)「国民の声を活かす」意味での情報公開制度

  政策を立法という形で決定するのは憲法上、国会の仕事であると定められています(41条)。国会は多数決で運営されるのですが、国会を構成する国会議員は国民の選挙により定められます(43条)。

  また、国会で決定された政策を直接執行するのは憲法上、内閣の仕事であると定められています(65、72,73条)。

 ここで、内閣は以下のように組織されます。

 

 内閣総理大臣=国会議員の中から選出する(67条)

 その他の大臣=内閣総理大臣が氏名する(68条)

(以上、左図を参照のこと)

 

 

 そうすると、国民の意思を政策に反映していく唯一の方法は、国民が自分の意思に基づいて選挙権を行使して、自分の意思を実現してくれそうな候補者、自分が総理大臣として送り出したい人を国会で推してくれる候補者を国会に送り出すということになりそうです(15条)。

 そこで、問題となるのが「知る権利」です。「知る権利」は、「国民が情報を受領することを保障する権利」なのですが、表現の自由(21条)の一環として保障されていることに争いはありません。

 なぜ「知る権利」が重要なのか。「知る権利」が保障されてないと、今、国会で何が審議されているのか、自分が投票しようとする候補者がどのような形でそれに係わっているのか、その候補者の人と「なり」はどうなのか、その候補者はきちんと職務をこなしてきたのかなど、有権者の知りたいことがうやむやにされてしまいます。候補者についての正確な情報なくして、自分にとっての「正しい人」を選ぶことは不可能でしょう。

 この「知る権利」を担保するための制度として、現在論議されているのが情報公開制度(国民が政府の保有する情報にアクセスするための制度)です。

(2)「政治の在り方を監視する」意味での情報公開制度

 情報公開制度はさらに大きな機能〜政治を国民が監視するためのツール〜を持っています。

 数年前、薬害エイズ訴訟では、輸入血剤の危険性がいつ頃から認識されていたのか、厚生省や審議会の意思決定がどのようになされたのか、という問題が争点となりましたが、情報公開制度の整備されていない日本では厚生省に存在するこれらの情報を被害者である原告がアクセスすることができず、輸入元の米国内に存在する薬害エイズ情報をアメリカの情報公開制度を用いて収集したという話は有名です。

 また、近頃、地方自治体レベルで問題となっている食糧費の問題も、住民が情報公開制度を用いて税金の無駄使いを適正に監視することによって、相当改善されるだろうと言われています。

(3)このように、情報公開制度は、金融再生法案や沖縄の基地問題に比べて地味なトピックであることは否めませんが、知る権利・民主政という観点ではこれらの問題に負けずとも劣らずとも言われる重要な制度で、まさに、情報公開制度の整備が進めば進ほど、民意がきちんと政治に活かされるのです。つまり、 「情報公開制度の完備がその国の民主政の成熟度を表す」ということです。

(H10.11.19 鮫島)

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