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奈良県のがん患者、当事者の求めること

〜第50回勉強会記念市民公開がんフォーラム

「奈良県のがん医療をすすめるために」における

アンケートから〜 

平成22年5月 
第50回勉強会記念市民公開がんフォーラム

「奈良県のがん医療をすすめるために」

 

「奈良県ホスピス勉強会」は、平成12年12月に「奈良県にホスピスを!」を合言葉に発足しました。この度、その活動をさらに広く展開する気持ちを籠めて、「奈良県のホスピスとがん医療をすすめる会」と改称しました。そして、この10年間にホスピス・緩和ケア病床の開設推進とともに、緩和医療の普及向上のために、毎年1回のホスピス講演会と5回の勉強会を続けてきました。その勉強会が50回を迎えましたのでその記念として、奈良県のがん医療について実情を知っていただき、私たちが何をすべきかを考えるために、市民公開がんフォーラムを開催いたしました。

当日は、生憎の激しい降雨の中を、ご闘病中の患者、ご家族、医療関係者、一般県民の皆様等、175名ものご参加をいただきました。そして県医療政策部保健予防課主幹の氏平高敏さんに、奈良県のがん医療対策について基調講演をいただき、シンポジュームに奈良医大附属病院の緩和ケア外来の山崎正晴さん、ひばりメデイカルクリニックの杉山正智さん、訪問看護ステーションやわらぎ所長の石原祐佳さん、乳がん患者会「あけぼの奈良」の吉岡敏子さんにコーディネーターとして日本社会事業大学専門職大学院教授の田島誠一さんのご参加をいただきました。

 

私たちの準備不足にも拘わらず、86通のアンケートをいただき67件のご意見をいただくことができました。ここにその要旨を整理してご高覧に供します。

 

アンケートの集計結果

 

職業  医師(7)看護師(27)介護事業従事者(2)会社員・公務員(12)

     教員(2) 医療系学生(1) 専業主婦(12) 定年者(11)

     その他(電話相談員1、SW1,リハビリST1、NPO理事1、無記名8)

 

「問1」現在の奈良県のがん診療体制は十分だと思いますか。

    1.強くそう思う        1

    2.少しそう思う       19

    3.あまりそう思わない    41

    4.まったくそう思わない   21 

               無記入  4

 

「問2」奈良県のがん対策でもっとも重要であると思うテーマを下記から選んでください。

    1.医師看護師など医療従事者の育成          36

    2.緩和ケアチーム・ホスピスなど緩和ケアの充実    49

    3.在宅医療の充実                  45

    4.最適な標準治療の浸透                9

    5.医療機関・連携体制の整備             44

    6.患者支援と相談・情報提供体制整備         35

    7.がん登録の整備・推進                3

    8.がん予防の推進                   8

    9.がんの早期発見(がん検診)の推進         17

   10.がん研究の推進                   4

   11.その他                       9

      (市民のがんに対する意識改革、患者教育、費用) 

 

(問3)奈良県のがん対策について、ご意見をお聞かせください。

ご意見

テーマ1.医師看護師など医療従事者の育成 

@.開業医の緩和ケアにたいする関心をどのように高めていくか。

A.西洋医学と東洋医学の連携がもっとできないものか。

B.医療者はもっと勉強して、延命目的ではない手遅れの患者にも目を向け楽に 死ねることにも力を入れてほしい。

C.県立病院に勤めていますが、管理者は急性期病院では緩和ケアは必要ないと いう認識です。緩和ケアはがんと診断されたときから関わりが必要です。県としても っと緩和ケアに取り組んでほしいとおもいます。

D.正確な病名告知ができるノウハウをもっと研修するべきではないか。治らない病気であることを曖昧にしてほしくない。

E.在宅診療医や訪問看護師の育成を充実させてほしい。

F.がん拠点病院であるにもかかわらず副作用(リンパ浮腫等)に対する専門知識がない。

G.患者からの質問に納得のいく答えが得られないこともある。病状のみの説明だけでなく後遺症など質問や不安にも対応していただきたい。


H.がん拠点病院でありながらリンパドレナージの専門者もおらず、下肢リンパ浮腫になれば大阪の病院に行かなければなりません。医療従事者の育成と増員を望みます。
I.看護師が少ないため閉鎖や縮小される訪問看護ステーションが多くあります。もっと育成に力をいれていただきたい。

K.奈良県がん対策推進計画では何人育成するとは明記されていない。目標を数字で示していただきたい。



テーマ2緩和ケアチーム・ホスピスなど緩和ケアの充実


@.積極的治療ができない、しない患者は入院をこばまれがん難民になっている。ホスピスに入るまでもない患者の受け入れ体制を望む。

A.緩和ケア認定看護師との出会いで父も家族もよい形で最期を迎えることができました。まだ知らない方々に広めていただくことで患者も家族も落ち着いて過ごすことができます。

B.末期がんであったにもかかわらず、すばらしい医師とチームスタッフに守られて現在原発は消えています。このような会が広まれば悩み苦しむ人も少なくなると思う。

C.ホスピスの絶対数はあまりにも少ないと思います。在宅ケアの話は初めて聞いて心強く感じましたが、独居が増えている現在、ある程度のホスピス施設は必須だと思います。


D.緩和ケアの出来る病院が家の近くにあるのかわからない。


E.元気な一般老人こそ今日のような専門的知識や情報を聞かせていただき、それなりの生き方を考えるべきだと思いました。行政が是非そのような場を設けていただきたい。

ホスピスは死ぬ場所と思っていましたが間違っていたことがわかりました。多くの人がそう思っています。奈良にホスピスをもっと増やしていただきたい。


F.緩和ケアのある病院でも形だけの印象がある。チームメンバーは高い意識や使命感で活動しているが、施設の管理者はには認識が低く十分に活動できない現状がある。緩和ケアチームの充実を図るためには県が各施設長に働き掛けるなど積極性をもっていただきたい。

 G.私たちの病院にも緩和ケアチームがあり広範囲に活動していますが、患者さんの中にはその存在を知らない方も多くこちらから情報提供していくことが大切だと感じました。


テーマ3在宅医療の充実 

@.自分の病気が在宅が可能か、どの医師のところに行けばいいか情報がほしい。

A.杉山先生のたのもしい発言で是非「在宅医療」を奈良から発信してほしい。

B.現在私も治療中ですが介護人の精神安定を保つためにどう取り組んで良いかわかりません。抗がん剤の副作用のときは心身ともに疲れます。

C.私は外来診療を行いつつ在宅診療も行っています。在宅診療の患者は30%で在宅看取りは83%です。在宅看取りを可能にするのは@本人・家族が家に帰りたいA24時間対応の診療所・訪問看護ステーションB急変時に入院できる病院・ホスピスC症状コントロールが必要です。病診連携とそれ以上に訪問看護師を増やすことです。

D.私は訪問看護師ですが最期まで在宅を希望している患者が増えているのが実感です。24時間対応で昼夜を問わず働いています。1〜2時間仮眠をして翌日勤務しなければならずマンパワーが非常に不足しています。長くは働けないような気がします。
E.訪問看護師が不足しています。ターミナルを迎え緩和ケアを取り入れたいが訪問看護が一杯で受けてもらえない。

F.病院の立場・都合から離れ1人の人間の生き方を尊重した医療が受けられる病院が出来ればと思う。

G.在宅診療医が多くの患者を抱えており、訪問看護ステーションとの連携もうまくとれていない感じがする。より細かい情報交換はどのようにしていけばよいか。

H.訪問看護の短い時間で本人や家族と信頼関係を築くのは難しい。急変時に家族があわてないように病状の説明と大体の余命について説明が必要である。

I.今回のフォーラムを聞いて患者のことを第一に考え、本人・家族の希望を実現させたいという熱意がとても伝わってきた。私も将来を考える良い機会になった。

J.終末期の患者が在宅を希望されても退院するまで1週間もかかり、急変して帰れなくなる方が多くあります。もっと早くならないでしょうか。

K.南和医療圏の整備が急務である。年寄りにがん患者が多いのに年寄りの多い南和地域の医療体制が乏しいのは矛盾している。年寄りが安心して暮らせるようにしてほしい。

L.奈良県のどこにいても在宅での緩和ケアが受けられる基幹診療所をつくる。



テーマ4.最適な標準治療の浸透 

@.再発した時の治療は精神的にも厳しいときに治療を選択するのは大変なことです。者さんの心のケアもしながら治療の選択ができる仕組みがほしい。

A.先進医療やその他の治療についての選択肢を情報提供してほしい。

B.外科的治療だけでなく内科的治療が奈良では特に遅れているので充実を。



テーマ5医療機関・連携体制の整備

@.遠方の病院で手術をうけ通院が大変だった。他府県の病院との連携は可能ですか。関連病院やクリニックへの紹介があるとよい。

A.南和医療圏では在宅で看取りたくてもその環境が整っておらず、結局病院に入院します。奈良県全域で均等な体制になるよう望みます。

B.病診連携、チーム医療という言葉は定着してきて情報は多くなりましたが、もっと直接会って意見交換をする機会を作っていただきたい。PCや報告書だけでは良い連携ができない。

C.拠点病院ではない病院の外来化学療法室で働いています。はじめて奈良が在宅ケアのトップと知り驚きました。化学療法室からしかがん患者さんを見ていませんでしたがもっとがん支援相談センターの充実と普及がはかられ、私も情報提供ができるように知識を得たいと思います。

D.介護事業に関わっていますが、がん以外でも医療と介護の連携が問題視されています。どうしても医師の意向がベストとされるのですが場所や立場によって知識・情報が異なるということを医療機関側に意識してほしい。生活を送る上での医療情報をもっと本人・家族・ケアマネに流してほしい。

E.医療機関をどのように選べばよいか、セカンドオピニオンの利用できるように医療機関の連携をとってほしい。

F.セカンドオピニオンのため県立奈良医大をおとずれたが混雑がひどすぎるように思われた。南和地区に拠点病院が無いせいかもしれませんね。

G.市立病院の電子カルテが県立医大では完全な形で利用できていないように思われた。拠点病院間のデータの共通利用についても整備を進めていただきたい。

H.大阪の病院で治療を受けている方もいます。他府県との連携も必要です。

I.なぜ奈良県には「がんセンター」が無いのですか。医療行政について改革を望む。1300年祭に多大な費用をかけるなら、今生きている奈良県人のがん医療体制整備に税を使うべき。

J.病院から在宅への移行がスムーズに進まない。在宅ケアセンターを是非つくってほしい。



テーマ6患者支援と相談・情報提供体制整備

@.医療者ではなく患者同士の支援の場を充実してほしい。サポーターとしての活動の場が多数あるとよいとおもう。

A.がんについての治療・予後・費用・在宅療養などの情報が少ない。

B.退院後の食事・生活相談など相談できる場所が有れば良い。

C.目先のことで精一杯の患者と家族が情報収集し実行していくのは非常に大変なことです。緩和ケアの知識が入ってくるように様々な場で情報提供を進めてほしいと思います。


D.生きてきて良かった、安心のでき終いの住として自宅を選び家族も納得のいく看取りが出来ればと思います。相談窓口を広報やメディアで県民に知らせてください。

E.医療費の負担が少なくなる方法や医療費の請求についてわかりやすい説明部署がはっきりしていないように思う。

F.精神面、経済面から専門的にフォローできる専門相談員の育成に行政が力を入れていただきたい。拠点病院の相談員に研修の機会を増やしてほしい。

G.腫瘍外来の設置、リンパ浮腫外来、患者サロンの設置、医療情報図書の充実。

H.今日の話を聞いて奈良県のがん医療も捨てたものではないと感じる。自分の最期に少し希望が持て死ぬことがこわくなくなった。患者サロンの設置は本当に必要です。

I.奈良のがん医療情報を1日も早くナビに載せていただきたい。

J.まだまだ「がん」にたいする考えが進んでいないと思う。もっと身近なものであり、希望のあるものであることを一般に広げていかなければいけない。そのために私たち患者はどう動けばいいのか、我々の経験をどう生かせばいいのか教えてほしい。



テーマ9がんの早期発見(がん検診)の推進   

@.がん検診の啓発が少なすぎる。もっとPRしてほしい。

A.奈良県ではがん検診をしている部署と健康増進(医療体制)が連携されておらず、他府県に比べて遅れている。国民健康保険だけでなく他の保険者も税金を払う住民ですから県全体の体制を何とかしてほしい。

B.ガン検診をもっと普及できないか。20歳の献血運動のようにできないかな。



テーマ11その他 

@.今日の様な有意義な会の内容をもっと新聞等で広報するべきだと思う。

A.市民ももっと自分の治療について、自分の死について考える必要がある。

B.本会の活動が広がって患者・患者予備軍の意識を高めることが重要だと考えます。

C.病院から遠い場所に住んでいると通院はもちろん、在宅医療を受けにくい現状にありますので地域の格差のないよう改善を望みます。

D.「がんは適切な治療を受ければ治る」という誤解が家族や患者を迷わせ、適切な治療選択から遠ざけています。「がんに対する正しい情報」を発信し、正しい知識と人生観をもとに適切な治療選択ができるようになるための市民への広報、情報提供が必要です。すべて拠点病院へといった受診行動が医療機関をマヒさせてゆきます。適切な機関選択、機関ごとの連携、機能分担をすすめるとともに市民への働きかけが必要です。緩和ケアについても特殊な医師やチームが担うのではなく、すべての医療者が提供するものだという正しい認識を広める必要があります。

E.緩和ケアが進んでも患者の死の恐怖とか家族との別れの辛さなど心理的、スピリチュアル的な悩みを癒されません。今後はこれらも取り上げていっていただきたい。


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