トルコ相撲はトルコ共和国の国技であり、春から秋にかけてトルコ全土で年間40を超えるトーナメントが開催されます。 その頂点となるのが、毎年6月にエディルネで行われる“クルクプナル歴史的オイルレスリング大会”です。
  大会の開催地となるエディルネ(Edirne)はイスタンブールからおよそ230Km、トルコの最も西に位置し、 イズニック、ブルサに続きオスマン帝国第3番目の首都として100年間栄えた、由緒正しい古都です。 また、エディルネは市街の中心からギリシャ国境までおよそ5キロ、さらにブルガリア国境までは10キロの国境の街でもあります。



  街を歩けば宮殿、モスクなど16世紀の建築物がそのままの姿で残されており、街がまるごと博物館のようです。
  その中心でひときわ美しくそびえるのが、ミマル・シナン(Mimar Sinan : Mimar は建築家の意味)の設計によるセリミエ・モスク(Selimiye Mosque)。トルコの伝統的な技法による美しいタイルに彩られ、陽光に輝く巨大なドームを囲む4本のミナレットがどこまでも広く蒼い空に向かって伸びて行きます。


   


  内部に入り天井のアラベスク装飾を眺めていると、時間が止まったかのような錯覚を覚えます。このモスクには999の窓があると伝えられていますが、自らそれを数えて確かめたくなるほどに魅力的な空間です。
  モスクに併設された博物館では、トルコ相撲の歴代チャンピオンの写真を見ることができます。 モスクを出たら、すぐとなりのアーケードでショッピングを楽しみましょう。民芸品、貴金属などの専門店が軒を連ねています。




  人口およそ12万のエディルネは、美しい川と森に囲まれた一枚の絵はがきのような都市です。時間に余裕があるなら、ギリシャやブルガリアの国境まで足を伸ばすのもいいでしょう。 国境近くのレストランでは、ゆっくりと流れる川面を眺めながら、あるいは森の木漏れ日のなかで野鳥のさえずりを聞きながらランチを楽しむことができます。




  エディルネの歴史と自然を堪能したら、市街の中心から北北西の方角へ向かいましょう。 郊外約2キロ、30分も歩けばクルクプナルのオイルレスリング大会が開催されるサライチ・スタジアムに着きます。




  オイルレスリング(トルコ語でヤールギュレシ)では、皮ズボンを身に付けた屈強な男たちが、全身に大量のオイルを浴びて組み合います。 つかむところがないうえにオイルがすべるので、その闘いぶりはまさに力自慢の腕力比べといったところ。 トルコ全土から集結した1800人ものレスラーたちが、13の階級に分かれて3日間の死闘を繰り広げます。



  レスリング大会は必ず日没前に終わります。あとは街へ戻ってディナーのトルコ料理に舌鼓を打ちましょう。 トルコのレストランでは、温かい料理がガラスケースの中に並んでいるので自分の目で見て選べます。テーブルの上に用意されているパンは食べ放題です。



  ふと周囲に目をやると、やけに体格のいい男たちに囲まれていることに驚くかもしれません。大会の期間中、エディルネの街はレスラーだらけです。 王者タシジ、2005年度チャンピオンのシャーバンも皆、街のレストランで普通に食事をしています。お気に入りのレスラーを見つけたら、一緒に並んでの記念撮影はどうでしょう。彼らは快く応じてくれます。
  夕食を終えたら、涼しい風にあたりながら少し街を歩いてみましょう。オープンカフェでチャイを楽しむのもいいかもしれません。
  夏祭りのライトアップで美しく彩られたモスクや噴水をながめながら、エディルネ、あるいは古代都市アドリアノープルの夜が静かに、ゆっくりと更けて行きます。




エディルネについての他の記事
エディルネの写真

2006年1月 kirkpinar.jp