〈この絵を描いた頃のことなど〉

この絵を描きあげたのは’99年の3月31日だったと思います。
「サクラ大戦」というゲームと出会ったのがその1年前の1月。
「2」が4月。
自分の頭の中で、「カンナとマリアのコンビ」を主人公にした漫画のストーリーが
洪水のようにあふれ出して、それを毎日せっせと計算用紙に書きとめていました。
全部で十数本あります。・・・・バカだ、自分(笑)。
ただ、漫画というのは、物語が出来てからがハンパじゃなく時間と手間を必要とする
ものですから、仕事と介護の合間を縫って、ストーリー漫画2本(「ばんからさんが
通る」と「おっぱいがいっぱい」)を書くだけで、自分としては精一杯だったなあと
今は、思います。
イベントスケジュールに合わせて、瞬発力勝負の4コマに走ってた気もしますが(笑)。
     
わたしにとって、カンナとマリアの花のイメージは、多年草の「タチアオイ」です。
(ホリホックとも云う)  5月の末〜7月頃、2メートル前後にのびて、紅や白、
ピンクなどの花をたくさん咲かせます。
最近は品種改良が進んで、絞り咲きや八重咲き、フリンジ咲きなんていうのまで登場
しましたが、やはり昔ながらの一重咲きの紅と白がいちばんシンプルで力強いです。
むし暑い日の昼下がりにぼんやり歩いていて、この花が視界の隅に跳び込んでくると、
それだけでハッとします。 気持ちがキリリと引き締まる花、とでも申しましょうか。
     
タチアオイの枯れ方は、少し哀しいものです。
潔く散る桜や、種を兜に勇ましく立ち往生するヒマワリと違って、夏の盛りになると
下葉から茶色に枯れあがってゆきます。 病気や虫も急につきはじめます。
足元から迫ってくる「死」に追いつかれまいとするかのように、天に近い部分では最
後の花たちが必死に咲きます。 命を急ぐように。
   
しかし、なんといってもこの花のすごいところは、翌年必ず復活することです。
それも球根みたいに年ごとにひょろひょろ弱っていくのではなく。
土がカチカチでも肥料不足でもなんのその、ちょうどカンナやマリアが
「よっ! 待たせたな!」とか「フッ、間に合ったようね・・・・」
と言っているかのように、次の春にはまた濃い緑の葉を力強く茂らせ、花房を空に向
かって伸ばします。
    
この絵を描く以前から、私はかなりしんどい状態に陥っていました。
引き金になったのは多分介護の問題その他モロモロなのですが、体の不調には気づい
ても、それが単なる体の問題だけではないのだと知ったのは、それからずいぶん経っ
てからです。
元来表向きは「駅前商店街型気質(笑)」なものですから、周囲も自分もちょっとや
そっとでは気がつかなかったみたいです。 我ながらおめでたいこっちゃ(笑)。
     
この絵を、長いこと手元に置きながらアップすることをためらっていたのは、
「いつかちゃんと本で発表したい。」
という気持ちがあったからなのですが、おそらくこの先それは不可能でしょう。
二人のキャラクターを通して、私はたくさんの人たちと出会うことが出来ました。
感謝しています。
     
これを書いている現在、家の近所の川原っぷちでは、今年もタチアオイが緑の葉を茂
らせ始めています。
もうじき最初の花をつけるでしょう。
    
美しい、強い花です。
    

                                       戻る