バルにとっても、私達にとっても、一番の友達だったボルゾイ、ゲクランが亡くなって
ちょうど1週間になる
先週の今日、大事な大事な大事な友達を私達は亡くしてしまった
ゲクランは、バルより約半年遅く生まれたので、2歳と3ヶ月
短か過ぎる一生でした

その日、お父さんとお母さんとお姉さん猫のシビラと一緒に寝ていたゲクランは
キィーーーーーーンとものすごい悲鳴を上げた
これはコワイ夢を見て寝言を言うゲクランにとって、
いつもの事だったようだ
よっぽどコワイ夢でも見たのかな?
お父さんとお母さんはそう思ったのだけど、猫のシビラだけはゲクランの心臓が止まってしまった事に気づいていた
シビラがゲクランの上を通った
ここで必ずゲクランは目を覚まし、シビラを見るのだけど、
その日は目を覚まさなかった
おかしいと思ったお父さんがゲクランの心臓に手を当てると、もう脈がなかった
すぐに病院へ行って、1時間の蘇生措置をしてもらったが、
ゲクランの心臓はもう動く事はなかった
解剖をしていないので、ハッキリと原因はわからないが、
心筋梗塞という事だった

ゲクランは、1歳になるまで体が弱く、病院通いの絶えない子だった
けれども、お父さんとお母さんの愛情でみるみるうちに大きくなり、元気になった
2歳も過ぎ、私達が見てもはっきりわかるほど、
ゲクランの体はしっかりしてきていたし、
精神的にもすごく大人になってきているのがわかった
前日も、いや、悲鳴を上げる直前まで、
なんの予兆もなく、いつも通りの元気なゲクランだった
どうしてこんな事が起こってしまうのか、
誰を責めたらいいのかもわからない突然の死だった

連絡を受けてからお葬式までの3日間
ほとんどの時間を私とバルはゲクランのそばで過ごした
何をするわけでもなかったのだけど、
もう会えなくなってしまうから、少しでも長く一緒にいたかった
バルは、死を理解しているのかどうかわからない
会ってすぐにゲクランの口元をクンクン一生懸命嗅いだあとは、
なぜか知らん振りだった
他の子も同じような反応だった
ゲクランの匂いはするけれど、ココにはもうゲクランはいない
これはゲクランじゃない・・・
そう理解しているようだった
だから、ゲクランのお家を後にする時、
まだゲクランに会ってないのに、どうして帰るの?
と、みんな帰るのを拒んで、ゲクランを探そうとしていた
この姿が辛くて仕方がなかった
もうゲクランとは遊べないんだよ・・・

3日間、ゲクランのお父さん・お母さん、そしてお友達の飼い主さんと一緒に
ゲクランのたくさんの思い出話をした
少し話すと涙があふれてきて、たまには笑い声も出たりした
みんなで一緒にたくさんたくさんたくさん泣いて悲しんで、
ゲクランの手触りを決して忘れないように、何度も何度も撫でてあげた
絶対に忘れたくなかったから、まるで寝ているようなその姿を
ずっとずっと眺めていた
棺に入る時も一緒にいたし、棺が焼かれる直前までお別れをした
棺には、バルにそっくりなぬいぐるみとバルの毛も入れてあげた
お陰で、ゲクランとちゃんとお別れができた
本当に3日間、ずっと一緒にいられて良かったと思う

お通夜のゲクランは、キャンドルの灯に囲まれて、
とてもキレイで、まるで天使のようだった
星空を駆け巡る天使・・・まさにそんな感じだった
考えてみれば、ゲクランは天使のような子だった
ような子ではなく、きっと犬の姿をした天使だったのだと思う
そう考えると、妙に納得できるのだ
ゲクランは、犬としては信じられないほど、優しい子だった
他の犬種と合わせて考えてみても、ゲクランほど優しい子を私は見たことがない
どんなに小さい子とも上手に遊べるゲクラン
攻撃性が全くなく、だけど怯えるわけでもなく、
誰とでも楽しそうに、その子その子に合わせて上手に遊んでいた
合わせられるところがゲクランのすごいところだと思う
犬だけじゃなく、ゲクランは人間の子供とも実に上手に遊ぶ事ができる子だった
あとから聞いたのだけど、
登園拒否だった子がゲクランと遊んでから、
幼稚園に行くと言い出した事があったそうだ
こんなイルカのような効力を発揮する犬がいるだろうか?
ゲクランにはそういうチカラがあった

バルにとって、ゲクランは彼氏で、一番の遊び友達だった
小さくても気の強いバルと上手に遊んでくれるのは、
ゲクランしかいなかった
ゲクランはおもちゃや枝をくわえて、バルを遊びに誘う
ほらバルこれ取ってごらんよ〜
挑発に乗ったバルが、その先に飛びつく
両端を2人でくわえたまま、引っ張り合ったり、走ったりする
ものすごく足の速いゲクランがバルに合わせて
ゆっくりゆっくりと走ってくれる
大きなゲクランと小さなバルが一緒に走る姿は、最高の光景だった
私は、夜の公園でゲクランとバルがこうして遊んでいるのを見るのが
大好きだった
そのうち気の強いバルは、そのおもちゃや枝を誰にも渡したくなくなってしまう
そうなると、ゲクラン相手でも、カッと飛びついて怒ってしまう
そこまでくると、もう遊びはおしまい
ゲクランはもう手出しをしないで、バルの気が静まるのを待っていた
そしてバルの一瞬の隙を見計らって、さっと奪って行ってしまう
同じようにそれを追いかけるバル・・・
2人一緒にいると、何度もこれを繰り返して遊んでいた
バルが本気になったら、落ち着くまでじっと待っていてくれるような優しい子は、
ゲクラン以外見たことがない
たいていお互いに怒ってしまって、ガウガウのケンカになってしまう
本当に、バルにとって、唯一思い存分遊べるのがゲクランだった
たまにはイチャイチャしていた時もある
枝をカジカジしているバルの耳などをゲクランがクンクンして
甘えていることもあったし、
バルの事をゲクランがものすごく優しい目で見つめていた事も何度もあった
本当にゲクランとバルは、小さな恋のものがたりのおちびのチッチとのっぽのサリーのようだった

不思議な事に、他の子にとっても、ゲクランは一番、唯一の存在だった
みんなにとっての一番で、真ん中にいたのがゲクランだった
夜の公園では、ゲクランが現れると、みんながうれしそうに迎え、
ゲクランが走るのを追っかけていた
そんなゲクランを亡くしてしまった私達は、これからどうしたらいいの?
飼い主さんはみんなそう口にしていた
バルにとっても同じ・・・バルはこれから誰と引っ張りっこしたらいいの?
年の近い、夜の公園の友達はみんな、これから一緒にゆっくりと年を取くもんだと思っていた
それなのに、早過ぎるよゲクラン・・・

ゲクランはお父さん、お母さんにはもちろん、みんなにたくさんの事を教えてくれた
バルには何を教えてくれたんだろう?とふと考えてみた
ゲクランはバルに、小さくても強く、誇りを持っていられることを教えてくれたような気がする
しつけ的に考えたら、余計なお世話であるけれども、
大きなワンコの中で遊ぶバルにとって、これはとても大切な事だったかもしれない
ほら、バルは大きなボクからも枝を取れちゃうんだよ、すごいねバル
そんな風に言ってたのかな、なんて思ってしまう
だけど、ゲクランにそれを聞いたら、ゲクランはきっと
ちがうよ、バルは本当に強いんだぁ
って答えるだろう
ゲクランはそんな子だと思う

ゲクランとバルが最後に会ったのは、亡くなる5日前の事だった
旅行から帰ってきた次の日で、よく一緒に行ったLe31だった
その日、ゲクランはバルに対して、やけにつれない態度をとっていた
カフェだから遊べないのはわかっているし、寝不足だったからかもしれないけど、
それにしても、久しぶりに会ったのに、あれ?と思うほどつれなかった
今思うと、もうすぐお別れになってしまうから、
ゲクランとしか上手に遊べない彼女のバルに対して、
わざとつれない態度をとったのかもしれない
そんな気がしてならない
ボクはもう一緒にいられないから、バルももうボクに甘えちゃダメなんだよ
しっかりがんばるんだよ、バル
そう言ってくれてたのかもしれない
でも、これもゲクランに聞いたら、ゲクランはきっと
ちがうよ、ボクあの時すごく眠かっただけなんだぁ
って答えるだろう
ゲクランはそんな子なんだ・・・

1つだけ後悔している事がある
実は、私達はずっと夜の公園に行くことができなかった
やっと行けるかと思っていたら、
3月の終わりにバルが靭帯損傷してしまって、
またもや夜の公園はおあずけになってしまった
だから、バルにゲクランと思いっきり遊ばせてあげる時間を作ることができなかった
それだけが悔やみに悔やみ切れない
いつでも遊べると思っていたゲクランがこんなにも急にいなくなってしまうなんて、
思ってもいなかった
もっと毎日を大事にしなくちゃいけなかった
ごめんね、バル、ゲクラン

本当に優しかったゲクラン
お通夜には、述べ100人くらいの人がゲクランとお別れしにやって来た
これもゲクランの人徳(犬徳?)のおかげだね
ゲクランが優しくてカッコ良くてお茶目で弱弱クンで悪悪クンでものすごくイイ子だったからだね
たった2年3ヶ月だったけれど、ゲクランは一生分の愛と幸せをもらっちゃったんだね
だってね、お父さん、お母さんだけでなく、
こんなにたくさんの人や犬に愛された子ってそうはいないんだよ
だからみんなより早く神様の元に行っちゃったんだよね・・・
だけど、ゲクランは今、みんなの心の中にいる
どこかに消えてしまったワケではない
ずっとずっとずっと私達のそばにいてくれる
ゲクランは優しい子だから、絶対にそうだと思う

最後に、ゲクランは私達にも、最高の友達をくれた
ゲクランがいたからこそ、出会えたお友達
これからも、ずっとずっと一緒にいたいと思う
そんなお友達を、ゲクランは私達にプレゼントしてくれた
ゲクラン、どうもありがとう

本当にゲクランは最高だよ
ゲクランと会えた事を誇りに思ってるんだ
いくら言っても足りない位なんだけど、
ありがとうゲクラン、ありがとう

                      

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51.一番の友達ゲクランのこと(2003.05.14)