将来の法曹を法科大学院の闇と軛から解き放とう

 法科大学院については,2003年11月27日に66校についての認可と4校についての不認可,2校についての認可保留という設置認可の過程の中で,設置認可基準がなかなか明らかにされなかった,予備校との関係という本来の教育内容と無関係の点が問題とされて不認可となるなど,文部科学省による恣意的介入のおそれが早くも現実化しています。

 弁護士会執行部は不明瞭な審議過程を批判していますが,一方,自らの関与した大宮法科大学院については,その認可申請に当たっての文部科学省との間の議論の内容を明らかにしていません。

 また,修了のために2,3年間にわたる時間的拘束のほか,年間200万ないし300万円の学費とその間の生活費の支出が必要であるという問題点は解決していません。社会人特に被扶養家族を持つ人が法曹資格の取得を志すことは事実上不可能なままです。

 大宮法科大学院大学については,授業料だけで年間200万円が必要になることも明らかになりました。給付される奨学金についても,授業料の大幅な減額を受けられるのは定員100名のうち15名にすぎず,大多数の学生は学費だけで3年間600万円の支出を余儀なくされます。

 また,教育ローンの利子補給について「二弁会員を中心として行う募金活動を通じて集められた寄付によって基金を作り、負担します。」とされ,基金が集まらなかった場合の責任が二弁にあるかのような記載となっている点は問題です。募金の依頼なども弁護士会の資金で行うべき筋ではありません。

 法科大学院については,法曹となる途を制度的に極端に狭める点で,制度に根本的誤りがあります。この制度の欠陥を補填する司法試験予備試験制度が真に開放的なものであるよう,また,誰にでも開かれた司法試験という現行試験の美点を残すものとして機能するよう,その枠の確保と試験制度の改変を働きかけ,将来的には法科大学院修了を試験資格としない方向への改変を目指すべきです。

 大宮法科大学院大学に対する支援については,取りやめる方向での抜本的な見直しが必要です。佐藤栄学園に対しては協定の厳正な遵守を求め,費用についても弁護士会が余計な負担を負わないように働きかけるべきです。

 まだ実績も何もない法科大学院というプロセスを,自分たちが経験していないにもかかわらず良いものであるとして押しつける,それは傲慢と理不尽でしかありません。法曹となるための自由で開かれた道を確保する,それが後生に対する私たちの責任ではないでしょうか。

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