後生に恨まれない法曹養成制度を

 先の臨時国会で,法科大学院修了又は司法試験予備試験合格を司法試験受験資格とするという新司法試験法が成立しました。一方二弁でも,昨年の常議員会において,学校法人佐藤栄学園の埼玉県大宮への法科大学院設立に当たって同学園と提携するとの基本協定を締結することが議決されました。

 法科大学院修了のためには2,3年間にわたる時間的拘束のほか,年間200万ないし300万円の学費とその間の生活費の支出が必要です。これでは,社会人特に被扶養家族を持つ人が法曹資格の取得を志すことは事実上不可能です。加えて,法科大学院には,文部科学省が認証権限を有する「第三者評価機関」を通じて,官僚による間接的統制が及ぼされます。結果として,大学を卒業してストレートで法科大学院に入り,2,3年間のスクリーニングを経たという,同じような経歴の者で法曹界はあふれ,法曹は画一化することは必至です。

 大宮法科大学院への協力も問題です。二弁の人員を割くのですから,費用負担は行わないというのはまやかしです。また,弁護士会が支援という形ではあれ特定の学校の運営に関与するのは,本来は総会の決議,会則の変更を経るべき重大事項です。しかし,協力決定に至るプロセスは,法科大学院設立というバスに乗り遅れまいという拙速さばかりが目立ち,十分な手続,議論に欠けています。

 私たちが後生の法曹志望者ほか市民に対してなすべきなのは,法科大学院という成果の分からないプロセスに手間と金をかけ,法科大学院教員という新たな業務分野の拡大を図ることではなく,多様な経歴を持つ人々の中から志あるものが心おきなく法曹資格取得に挑戦できる仕組みを確保し,それによって多様な分野での多様な内容のサービスが市民に提供されるようにすることです。(後略)

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