ゼンジーないしジーコ



随分前からの想い入れであります。
漠然とフライフィッシングの聖地というイメージは在ったけれど現実として憧れが
明瞭になったのはSI氏のビデオであった。
当時、まだメディアは発達していなかったが、VHSのビデオが一手に様々なアミューズメントを
紹介していた。
FFの世界でも岩井さん、里美さん、杉坂さん、佐藤さん等が驚異的な釣りを披露し
我々をこの世界の深みに引きずり込んでいった。
その中の一つがSI氏の中禅寺湖のホンマス釣りであった。
体高のある、鰭のピーンとした、肌理の細やかな白い魚体に釘付けになったものである。
とにかくヤマメ系が好きなのである。

しかしあの頃ライズの釣りに入れ込んでいて体力的にも知識としても時間的にも
また道具立ても出陣を許すものではなかった。

数年前よりFBが始まり、酒川先生、wabeさんに加え旧知のモトさんとお話をさせて
いただくようになり、中禅寺湖、ダブルハンドが随分と身近になった。

そんなわけで一昨年ついに出陣となった。
右も左もわからぬまま、どうにかなるさと、シングル#5・9fとなんちゃってNスペシャルフライ、それと
サンスイで買ったドラワカフライをもって(芦澤さんの言うところの、樫の棍棒をもって戦場にいくような)
出向いたわけである。

いわゆる国道側をグルグル行ったり来たり、空いたスペースに入り投げるが、タカが知れる。
隣ではクラシカルなイデタチのフライマンがダブルハンドを巧みに操り私の4倍ほどをシュートしている。
居たたまれなくなった私は近くの日光湯川に避難した。

この川も聖地と知れる川で、こちらも始めてである。
テクテク木道を歩きチラホラとブルックと遊んだ。
するとベッチ、めぐみちゃん、鈴木さん夫妻と偶然出会い楽しい時間を過ごさせてもらった。
帰りのバス代も無くカレーと起点までの移動をご馳走になってしまった。
天の助けであった。感謝しております。

夕刻、再び湖にもどり噂のワカサギボイルを探した。
この場合、ボイルそのものより、それを狙う釣り人を探すというのが本当のところである。
近くへ行ってみると時折バコっ!!とヒゲナガライズのような飛沫が上がっていた。
100m隣のオジサンの竿が弓なりを越えて?マークのように曲がっている。
ランディング後、近くに寄って見ると70オーバーのゴン太のブラウンだ。
ニコパチを撮ってくれと言われ撮る。
ここぞとばかりイロイロ質問した。
フライも見せてもらったら私のふたまわりは小さく、現場の実物とクリソツ!!
「この私のでも釣れますか?」と聞いたら釣れるかもと引きつりながら言ってくれた。
「そのフライは巻くの難しいですか?」と聞いたらヤフオクで買ったと言ってくれた。
ロッドは#4で宇都宮在住の方で筋金のジーカーであった。

残ったボイルに私のデカイワカサギフライを投入するも、ツンツンとじゃれるだけで食い込まない。
あと一歩の接近遭遇で完了。意外と満足。
その後、前出の酒川先生、wabeさん、モトさんらと盛り上がりダブルハンドロッド購入、
ダブルハンドスカジット釣法レクチャーを受け、満を持した。
ホームのでかいプールで一回だけ練習したという状況で今年の中禅寺湖詣でに挑んだわけである。
フライは巻いた(なにせ中峰さん直伝である)。ドラワカはヤフオクでゲット。
ラインは釣行前日にサンスイの白川さんに選定してもらい巻いてもらった。
このあたり随所が不埒である。

8:20到着(これも相当不埒であるようだ)。
作業中の他人に遊魚券売り場を聞いたら
「あそこで売ってる。この前がポイントでホンマスが釣れるよ。ここに車を止めてヤルといいよ」
と親切なお言葉。好意は幸運の芽と信じているので従って釣りだした。
キャストはスカジットなんて出来ないのでオーバーヘッドでやる。
体裁なんて気にしられないし、釣って何ぼである。

シュワーっ!!おおっ!結構飛ぶじゃないか(^^釣れそうな気がする)。
ときおりサカナが跳ねたりする(いい感じ)。

標高が高いので強烈に空気が気持ちよい。。しかし、釣れない。
ラインやメッセで指南を仰ぐ。
カウントダウンどころではなく根掛かり連発。
酒川先生の意見により移動。

ボートの人には釣れているが、ここからは届かない。
また移動。
あー、釣れる気がしなくなってきた。
と、友人(松様)から入電で「そこまで行ったんなら夕暮れ時は接岸するからがんばったら」
と言われ帰るのを思いとどまる。

気を取り直しあらためて装備を再確認すると、
不覚にも4Xと1Xしか持っておらず、帯に短し襷に長しとはこのことだ。
フライもドラワカ以外はナンチャってばかりでアテニならない。
意を決し遊魚券売り場に行くことにした。
ひょっとしたらフライを売ってるかも知れないな。そしたら
「今お勧めのフライはなんですか??どのアタリがいいですか?」などと怒涛の質問をしようと
思っていたが、糸しか、しかも2号(2X)しかなかった。
モトさんは最低3Xって言ってたから、まあいいか。
見ると1Xよりは釣れそうな気がする。
水面を見るとピクピクと痙攣し絶命寸前のワカサギが漂っている。
ボイルは無いがデカメのフライが目立っていいのかなとフライを換え
黙々と投げる。
沖でボートの人、若干一名が爆釣している。
「いいなあ」とつぶやく。
とにかく良く釣る。他のボートの人とは圧倒的な差がある。
150m程沖なのだが声がはっきりと聞こえてくる・
「よっしゃ!、きたっ!!、デカイ!。いいねえー!」
私は不埒なもろ初心者なので別だが、他の釣り人だってそれなりに学習して
タックルもフライも実績のあるものを使っているはずだ。
リトリーブだって大差ない動きであるにも係わらずこの差は何だろう。
ライズの釣りの場合はアキュラシーやタイミング、ドリフト等等、その差はわかり易いが。。

むむむー!

現場で研ぎ澄まされた感性とスキルというものがあると思う。
仕事でもそうだが既存のノウハウ、権威主義的なシステムを盲信するレベルでは無く
現場、事実に対応できるためには批判的観察眼が必須と思う。
そういった人たちを何人か知っているがコンベンショナルな手法は尊重するが信用していない。
権威はクソ喰らえと思っている。
カッコイイと思う。
この釣り人を見ながら、泣きそうに成りながらそんな事を考えていたら、、ゴンっ!
根掛かりの様な衝撃が、しかし生命反応がある!!
まさか!!うっそー!!憧れのほんまもんのホンマスだ!
ファイトは大型のヤマメのそれ、そのものであった。
歓喜に溢れ、写真を撮り、ガタピシ言う体の限界を感じ帰ろうと思ったが
もう数投してみようと投げた一投目に再びアタリが、ホンマスは回遊すると
聞いていたのでまたホンマスかと思いきや、ファイトが重い。
日本ではここだけに住むレイクトラウトだ!
本命の二種に会うことが出来、言うこと無し。
明日の腰痛と筋肉痛は心配だが有意義な一日だった。
釣れた日の帰りのナイトドライブはもっとも好きな幸せな時間であることは
誰もが異論はないと思う。ねっ!!

着替えていると先の達人がボート屋の人と話している。早く着替えて
お近ずきになりたいと思っていたら、自転車に乗って帰っていった。
地元も地元、筋金どころの騒ぎではない。
うしろ姿に拍手を打って最敬礼したのであった。