宮城県牡鹿半島のカレイ・アイナメ
平成12年11月3〜5日 一本釣り師氏、伝説の釣り師氏
大カレイを狙って東北遠征をするようになってから季節が一巡した。シーズンの終りには日本記録となるスーパーマコガレイを手にすることもでき、今ではすっかり釣行計画の目玉である。そんななかでもいちばんが渡波。たしかにスーパーマコの出た寄磯もすごいポイントだと思うが、渡波でのスーパーイシガレイ連発を目の当たりにすると、いの一番に足を向けたくなる。
渡波におけるビッグチャンス(ザブトンラッシュ)は11月と3月だろうというのが一年間通ってみての推理だった。特に昨年11月初頭のフィーバーぶりはすごかったらしい。
「俺もフィーバーしたい」というわけで、この時期の遠征を計画した。同行者は“伝説の釣り師”西岡氏。このコンビは寄磯で日本記録を釣ったときもそうだったが、大物の釣れる確率が非常に高い。今回もなんとかそのツキに賭けてみたいところだ。
私は11月3日の朝の便で仙台入り。3日は新規開拓で牡鹿半島をまわり、4日以降は渡波で釣る予定。西岡氏は2日の夜に現地入りして朝から渡波。三連休をフルに活用する予定だ。本当はスケジュールを合わせたかったのだが、仕事の都合で半日の遅れをとることになった。そして、この半日が大きな差になってしまうとは・・。
11月3日
いきなり出鼻をくじかれた。航空会社のコンピュータシステムがダウンしたらしく、機内に缶詰め状態で長時間待たされる。結局フライトも到着も1時間近く遅れることとなった。(お粗末すぎまっせ、J*Lさん!)
やっとのことで仙台空港に到着。レンタカー屋へ電話をかけようと携帯を手にとった瞬間に着信がきた。ばんちさんからだ。「あ、もしもし。西岡君の話聞いた?」「え、まだ何も。着いたところなんで」「もう60センチ釣っとるで」「・・・・・」おいおい何すんねん。こうなったら新規開拓なんてやってる場合じゃない。即、西岡氏に電話。「場所空いてるか」「ひとり分だけ」「今から行く」。急遽予定変更で渡波へと急ぐことになった。
1キロ近くある長い波止を重い荷物を持ってふらつきながら歩く。西岡氏のにたーっとした笑顔に迎えられ到着。すぐにスーパーイシガレイを見せてもらう。
60 ・4 センチ。大型クーラーの底一杯にへばりついている。すごい迫力だ。朝の7時ごろ、竿先を強烈にたたいたあと、糸フケがすーっと出たとのこと。
これは負けてはいられない。急いで仕掛けをセットする。はたしてもう一匹いるだろうか? しかし、予想通り?全くアタリが無い。例によってエサとりもいない。潮も緩く珍しく根がかりも少ない。投げこんでひたすら待つだけの釣り。退屈である。
当日は、イシガレイの日本記録保持者である、東北サーフの菅野さんがみえていた。また偶然だがスズキの日本記録を持っておられる方も高知から来られていた。
これは珍しいと、さっそく日本記録保持者3人で記念撮影をする。そしてお決まりの釣り談義。菅野さんのお話では、今年は去年に比べるとはっきり調子は落ちるとのこと。50センチオーバーは何枚かは釣れているが、昨年と比べると全くだという。どうも波止の先端部で施工中の工事の影響かもしれないとのこと。テトラが入ったりして潮の流れが変わったのかもしれない。だんだん心配になってきた。半日の出遅れを後悔するもあとの祭り。
その後もおのおのが記録魚を釣ったときの話や、情報の交換など話は尽きず、たいへん楽しいひとときを過ごすことができた。一方、肝心の釣りの方ですが・・・また明日がんばりましょうか。
11月4日
正直なところ、もう一日渡波でやるかどうか大いに悩んだ。菅野さんのお話ではスーパーイシガレイに会える可能性はかなり低そうだ。つまりボウズの可能性が大きいということ。そのあたりも勘案して、一度は牡鹿半島へ行くことに決めた。しかし、60センチオーバーのカレイを見せつけられて、このまま終わるわけにはいかない。渡波へ再チャレンジする。
夜明け前からポイントに入り釣りを開始。昨日同様に潮は緩い。竿数5本で春によく釣れていた40メートルラインを中心に攻める。しかし期待通りにはいかず、アタリの無い状態が続く。うーん、やっぱりダメなのかな。一方の西岡氏は一匹釣っているとあって余裕の表情。暇になるとちょっかいを出しにくる。私がエサを房がけ(というよりは団子がけ)にしていると「大きなエサやのう。ひょっとして自分焦っとんちゃう」といった具合だ。うーん、何も言い返せんわい。ちくしょー。 突然西岡氏が釣座でわめきだした。最初はよく聞き取れなかったが、どうも私を呼んでいるらしい。竿を巻き取り中ということは大物がヒットしたのか。あわてて走り寄るとすでに魚体が水面に浮いていた。タモ入れ一発、42センチのイシガレイだった。小さく見えるがこれでも立派なザブトンだ。
やばい。また先を越されてしまった。今が時合と必死に打ち返すが、時間ばかりが過ぎていく。既に半分はあきらめ気分だ。隣りで竿を出されていた東北サーフの方と話をしていると「カレイのポイントは遠くですよ」と教えてくれた。春に来たときは遠投はダメだったけどなあ、と思いつつも、ワラをもつかむ思いでフルキャストに切り換えた。
ちょっとしたひらめきが流れを変えるから釣りはおもしろい。 すべての竿を投げ終えて竿先を見ていると、こんこんとアタリが出た。30数えてから大アワセ。あれ、軽いや。なんなく上がってきたのは25センチのイシガレイ。それからはこれまでの沈黙が嘘のようにアタリが連発する。しかし、25センチ以下のイシガレイばかりだ。 「なんで俺にはミニサイズしかこんのや」再びあきらめが心を支配しはじめる。でもカレイの溜まり場を探し当てたことには違いないし、時合であるのも違いない。一発を信じて打ち返す。
満潮近くなった10時半ごろ、一瞬、潮が急流になった。こうなると根掛りが続出だ。やれやれと思いながら仕掛けの補修をしていると、西岡氏が「今日の仕事は終ったわい」という表情でやってきた。またきついイヤミがくるぞと身構えていると意外なひと言が。「この竿あたってるで」。
力糸を継いでいたので竿を見ていなかった。ほんまかいなと思いながら竿をあおると確かに重い。しかし、ただ重いだけで底に潜る感じも抵抗する感じも無い。隣りの竿先が揺れている。おまつり?海草もからんでいるのかな?などと考えながら巻き続ける。
かなり巻いたところで隣りの竿の動きが止まった。船の通過波で揺れていただけみたいだ。「おまつりじゃないぞ、まさか」と思った瞬間、地の底へ潜り込もうとするような強烈な締め込みがきた。すごい力だ。無意識に竿を力一杯あおって応戦する。反動で体勢を崩した魚の白い腹が見えた。本命のザブトンガレイの登場だ。「でかい」西岡氏が叫ぶ。「タモどないする?」「抜くわ」。潮が波止の低いところひたひたまできていたので、迷いなくずり上げを敢行した。ついにやった。52・6
センチ、まずは納得のサイズだ。一気に力が抜ける。「ほんまやったらこれで大喜びやのに、先に60センチオーバーなんか釣るから喜び半分や。順番がちゃうねん、くそーっ」と言いながらも、内心は小躍りしたい心境だった。
11月5日
ふたりとも「もうイシガレイは十分」という見解で一致。牡鹿半島には有望なポイントが多くて迷ったが、結局西岡氏が過去に大型マコガレイを釣っている立浜へ行くことにした。
遠近いろいろとやってみるが根掛りがすごい。瞬く間にオモリが減っていく。釣果の方も私が竿出し直後に30センチ級のアイナメを釣った以外はデキアイナメばかり。カレイの気配は全く無い。あまりにもオモリがとぶので、西岡氏が「もう、プチプチ切れて釣りにならんわ。プッチンプリンや」とわめきだした。こちらもつられて「ほんまプッチンプリンや」とやりかえす。いつしかひなびた漁港にいい大人ふたりのプッチンプリンがハーモニーを奏でた・・。
いかん、いかん。これは釣れないパターンだ、やばい。「ミニ遠征に行ってくる」と言い残し、竿を2本だけ担いで波止の反対側の先端へと歩く。さっそく一本を遠投、一本を足元へ投入。しばらくして、さそいをかけるため遠投の竿をしゃくると何か付いているようだ。同時に根にあたるごりごりという感じも伝わってくる。掛りそうになる仕掛けを2、3度抜くと、今度は魚が首を振る感触に変わった。かなりの手応えだ。慎重に巻いてくると良型のアイナメだった。しかしタモが無い。仕方ないので意を決して抜き上げる。サイズは41センチだがよく肥えている。
アイナメをぶらさげて元の釣座へ。西岡氏はふーんといった表情で見ている。根掛りとの対決ですっかりお疲れモードのようだ。「移動!」と言い残して残りの荷物を波止の反対側へ持って行く。
すべての竿をセットし、さあタモを出そうかと思っていると足元へ入れていた竿のドラグが鳴った。竿先も微かに揺れている。竿をあおると、たいへんな重量感が伝わってきた。しかも首を振る感じも強い。水面に出た魚体をみてびっくり。50センチはあろうかというアイナメ。これは抜けない。竿を脇で抱えて、タモを組み立てる。
しかし、あともう少しというところで思わぬ事態が起こった。漁船が突っ込んできたのだ。遠投している竿が掛けられる! やむなくアイナメのついた竿を波止上に放り出してそちらへいく。幸い良心的な漁師だったので、糸がひっかかりながらもセーフだったが、淡路島辺りなら三脚ごとふっ飛び海の藻屑と化しているケースだった。まさに冷や汗の連続である。 さあ、今度は取り込みの続きだ。幸い魚はバレていない。しっかりとタモを組み、一発で決めた。急いでメジャーをあてると45センチぐらいしかない。あれ、50センチぐらいあると思ったけどなあ。魚体をよく見ると頭から腹にかけての太さがものすごい。水中で大きく見えたのはそのせいだったのだろう。少しがっかりしたが、それでも自己新記録の44・6
センチだ。
これを境にアタリがピタリと止まった。時折ユムシにウニがヒットするのが唯一の動き。快晴無風で暑い。とにかく暑い。予定より少し早いが午後2時に納竿とした。
帰り道にて、一本釣り師のつぶやき「そうかあ、西岡氏も60センチのスーパーイシガレイを釣って、ついに協会記録とクラブ記録か。よかったやん。でもクラブ記録抜かれた人は気の毒やなあ、ぶっこ抜きやもんなあ。前の記録は誰だっけ。えーっと・・・あ! 俺やないか。くそーっ、ひとつ記録が消えてもたやないか。うーん、今度はリベンジじゃー!」
一本氏の主な釣果
イシガレイ |
52.6cm |
アイナメ |
44.6 41 32cm |
一本氏のタックル
竿 |
プロサーフ425BX |
リール |
パワーエアロ6000 |
道糸 |
ナイロン5号 |
ハリス |
フロロカーボン8号、5号 |
針 |
ビッグサーフ17号、15号 |
エサ |
ユムシ、コガネ、青イソメ |
