大阪から車で3時間以内、いわゆる近場で40センチを超すカレイが狙って釣れるポイント、はそうない。明石、鳴門、紀北、等実績場と呼ばれるポイントでも、ワンシーズンに何枚かという確率で事故的に上がる程度に過ぎない、というのがここ数年の傾向ではないだろうか。
恐らくその原因のひとつとして、水温が比較的高いこれらの地域では、最近の特に乗っ込みの時期にはフグ・カワハギ・ベラ等の餌盗りが多く、足の遅いカレイの口には到底餌が届かないことが上げられる。その日、その場での餌盗りの多少がカレイの釣果を大きく左右することが多い。
福井県波松海岸、ここもご多分に漏れずフグが多いことで知られている。それでも大型のイシガレイが多く釣れるのは、上記の釣り場であるような網入れが少なく、魚影が濃いためであろう。
昨シーズンはやや不調だったこの海岸も、11月下旬の全日本カレイでは40センチ・オーバーが2桁上がり、復調のきざし。
天候の移り変わりが激しいこのシーズン、境水道方面とどちらにするか迷ったが、荒れが収まりかけていることと、釣行日の前日に鳥取西部で震度4の地震があったことも考慮して、予定通りに波松へと向かった。
12月9日、K副会長・西脇のF氏・私、そして高槻で伝説の釣り師のクラブ員4名を乗せた車は北陸道経由で一路、福井方面へ向かう。現地では既にりさるあ氏が先着しており、海岸の様子を携帯電話で連絡してくれる。場所によっては、まだかなりウネリが残っているようだが、なんとか竿は出せそうとのこと。
現地に着くと、早くもケミホタルがズラリ・・・地元釣り師とそれに混ざって、りさるあさんの竿も出ているようだ。りさるあさん曰く、「西側のほうが波が静かなので、あっちでやります」。昨年の悔しい思いが頭に残っているのだろう。
こちらは、深みになっていそうな場所に2つのグループに分かれて竿を出すことにした。私はK副会長と並んでの竿出し。
満天の星空、微風の絶好のコンディション・・・が、『ザッ、パァーン!!』と時に激しい波が海岸に打ち寄せる。その間隔は長いが、なるほどまだかなりのウネリがあるようだ。
暗いうちはスズキ・クロダイを狙う。エサはユムシで、一本針である。3本の竿で、波の盛り上がりのさらに沖めがけて遠投。波に叩かれないように、三脚に垂直に近い角度で立てかけてアタリを待つ。
少しして、餌盗りの様子を見るために仕掛けを上げてみると、よくもまぁーこんなに・・・と思う程、仕掛けがもつれている。ほどくのに数分かかるくらい。思った以上に、海底までウネリの影響が及んでいるのである。
ハリスを更に長く取り(2メートル位)、ユムシを付け替えて再度投入。が、竿先は沈黙したまま。隣のK氏にもアタリはないようだ。こうなると、キビシイ寒さもあり、どちらからともなく車に避難し暖をとる。
「夜明け前までアカンやろ」、そう話しているところにK氏の携帯電話のベルが鳴った。少し離れているところで釣っている、F氏からである。
「隣で伝説氏が大物クロダイを連発した」と。こうなると、車の中でサボッている場合ではない。
K氏曰く、「寝られへんやないか」。せっせと防寒着を再度着込み、2人して海岸に下りて行って釣りを再開。
相変わらずアタリはないが、6時を過ぎて東の空がほんの少し白み始めてきた。そろそろかな・・・もつれた仕掛けをほどき、投入、糸フケを取って竿をたてかけた途端にアタリ!
竿が倒れて、道糸が横に走った。巻き始めるとグングン締め込む。隣の自分の道糸に交差しながらも、寄せる波に乗せてアタリの主をランディング。よく肥えた、綺麗な魚体のスズキだ。60センチ超、ここではアベレージサイズである。聞くと、伝説の釣り師も60センチ級のスズキを上げた模様。
夜が明けて、遠くまで海岸の様子が見えるようになった。やはりところどころ、大きな白波と波の砕ける音がしている。このころからカレイ狙いに切り替え、胴突き2本針仕掛けに全て交換。それぞれマムシとコガネムシを刺して、千切れないようにフワリと中投する。
着水直後にブルブルという小さなアタリ。巻き上げると餌が全く残ってない、フグの登場である。それから1時間程は投げては巻きの繰り返しで、汗が出る程忙しい。この状態は1時間強続いた。
8時前になり、餌が残り始めた。と、一番端のK氏寄りの竿にアタリが出た。竿先を連続して叩いている。どうやら波ではなさそうだ。大きくアワセて巻き始めるとズシッと重い。波打ち際での締め込みの感触を楽しみながら浜にズリ上げたのは、40センチを少し超えるイシガレイである。春に釣れるものとは比較にならないほど身が厚く、刺身にするといかにもウマそうである。
針を外していると、K氏とは反対側の隣で釣っているキャスターが駆け寄ってきた。愛知方面から来たというその彼曰く、「今回で波松は5度目だが、釣果がない」、「餌は?」、「投点は?」、「関*りのポイントガイドでここでクロダイ持って写ってる方ですか?」と矢継ぎばやに質問を投げかけたあと、戻って行った。
数分後、なんと今度はその彼が大きく竿を曲げているでは・・・。何やら叫びながら必死の形相でリールを巻いている。果たして波打ち際に姿を現したのは・・・やはり40センチを超えるイシガレイ!釣った本人はかなりの興奮状態で、またこちらに走り寄ってきて、「こんなの初めて釣りました!」とすごくうれしそうである。聞くと、スレだったそうな・・・。この釣り人は竿を2本しか出していなかったが、餌盗りが少ないときはそれでも釣れるものなんだな、としばし納得。
日が完全に昇りきると、全員の竿が沈黙。10時頃、K氏がボケを付けて15メートル付近に近投した竿に激しいアタリがあり、クロダイの45センチが登場。
午後になって昼食を取り、餌をまめに付け替えて時合を待つ。
2時半頃、またもK氏寄りの竿にアタリ。今度は竿が三脚の上でシーソー状態になった。ラインを送ったあと、ひと呼吸おいてから大アワセ。先ほどより重く、波打ち際で横走りしたカレイは、これまたよく肥えたCランクのイシガレイであった。
さぁ、時合。と、一同餌を交換して打ち返すが、少し離れたところで西大阪Sのキャスターが上げたカレイを最後に本日の時合終了。伝説氏・F氏の釣り座は一日中餌盗りの猛攻が続き、カレイは全くダメだった模様。りさるあさんはもうチョイサイズのウシノシタを釣ったそうな。
夕方になって凪始めた海を見ながら、「明日はもっと釣れるやろな・・・」と未練を残しながら波松をあとにした。
