A 『regius』Succession Ball pythonの繁殖に関する記述

王者の継承

繁殖のポイント
性成熟「適正年齢と個体育成の重要性」
性成熟「精液プラグの確認」
「休眠」=「繁殖期」
メカニズム 其の一
メカニズム 其の二
エコー(超音波診断)
雌のシグナル
ペアリングの方法
交尾
「指きり」の形は契りの証
コンバット
繁殖期の給餌
繁殖用 ケージ・床材・水入れ
妊娠の確認と産卵の予測
産卵の前兆
産卵
産卵後の雌個体への対応
孵卵器
産床(Medium=メディウム / 培養基)
卵の発育と孵化の前兆
胚子の死亡
孵化
孵化後の幼蛇

 

◇繁殖のポイント

繁殖を視野に入れた場合のポイントを一言で表せば「個体の育成と温度変化」となります。
多くの爬虫類に共通していえる事ですが、生殖活動と体重(脂肪の蓄積)には密接な関係があり、
基本的に雄雌ともに適正な「育成」が必要といえます。
また、爬虫類に於ける代謝活動が環境温度等の
周囲温度に依存する事から判るように、「温度変化」が
繁殖活動に於ける最も重要なシグナルと考えられます。

 

◇性成熟・適正年齢と個体育成の重要性

繁殖を行う上でその個体が性成熟をしているかどうかを知る事はとても重要です。
繁殖をおこなう為の一般的ガイドラインは、
到達年齢を雄で2歳、雌では2,5歳〜3歳とし、
雌の場合は更にこの時点での体重が1500gを超える事を推奨しています。
実際に飼育環境を整えたとしても、育成不足や過度の肥満個体では
卵胞の発育が止まる事や卵が不完全な発育をする等の
弊害が起こる事が報告されています。
雌が卵黄の形成を進める為には十分な脂肪の蓄積が不可欠で有り、
産卵にはそれに伴う多大なエネルギーが必要と云う事だと思います。
その事からも雌の性成熟には年齢だけでなく、
その体格(体重)に大きく依存すると云う事が伺え、
幼蛇の時期からの適正育成が如何に重要かを物語っています。

 

◇性成熟・雄の「精液プラグ」確認

雄の性成熟の確認は年齢に頼る部分が大きいのですが、
USのプロブリーダーが報告している、性成熟をある程度判断できる
簡単な方法を紹介いたします。
その方法とは、性成熟した雄が精液を作る上での
副産物である「精液プラグ」を検査・確認することで行え、
確認=性成熟という目安となるとの事です。
方法としては、蛇の性別確認をする時に行う、
ポンピング方法と同様の行為なのですが、
尾の総排泄孔下部を親指の腹で圧力をかけるように
押し上げる様にしますと「精液プラグ」を持つ雄でしたら
それは簡単に排出され確認することが出来ます。

「精液プラグ」とは雄の総排泄孔から排出される
細胞のカスのような物質であり、
その形状はアルファベットのMの形に似ています。
この物質は雄の精子形成能力が出来た際に、
ヘミペニスから分泌される分泌物や細胞が
固まった混合物の様なものと考えられ、我々が行った
顕微鏡での細胞検査では精子の確認は
出来なかったのですが、
性成熟(精子形成能力)との関連性ある物質と捉え、
性成熟の判断材料としています。

<レギウス・コメント>
USのプロブリーダーが実際に判断基準と捉えている、
1つの方法ではあるのですが、Bp・Supplyでは科学的根拠も含め、
検証中の項目です。しかし、USの報告通り、
性成熟後の雄には「精液プラグ」の存在が確認出来る事からも 、
関連性あるモノと捉えています、
皆様にも1つの判断材料と解釈頂ければと思います。
Bp・Supplyでは今後も関連性確認の為、検証を続けて行きます。

◇「休眠」=「繁殖期」

先に述べたようにBall Pythonの成体の多くは、
冬季(11月〜4月を目安)に「休眠」という独特の
サイクルが訪れますが、実はこれはその成体が
性成熟を迎え繁殖期に入った事を意味し、
Ball Pythonの「繁殖期」=「雄雌共に食欲減退が訪れる」
という図式からなる自然のリズムなのです。
Ball Pythonの代表的生息地アフリカ トーゴの冬季(繁殖期)は
8月と日本とは正反対となりますが、
生息域の季節サイクルは飼育下で育ったBall Pythonでは
特に問題とはなりません。繁殖と季節サイクルはとても重要な関係を示しますが、
温度変化や照明等での日照時間を調整することにより、
日本の四季・季節変化にBall Pythonの「体内時計」を合わせる事で簡単に解決します。

 

◇メカニズム 其の一

雌はその体に卵黄育成に十分な脂肪の蓄積があれば、
季節変化等(温度変化)の外的刺激により卵胞(follicle)の
形成過程が始まります。
この卵胞とは卵巣内に存在する袋状構造物で、
その中には発達した卵子を含んでいます。
未成熟状態の卵胞のサイズは直径約5mm、
その後発育が始まりますと卵胞は次第に大きく成長して行きます。
発育開始から約4〜8ヶ月後になると、
卵胞は最終的には産み出される時の卵程の大きさとなり、
卵胞が十分に発育すると卵巣より成熟した卵子が排出される、
いわゆる排卵が起こります。

私は残念ながら確認できていないのですがUSの報告では
「Ball Pythonの排卵の確認はとても容易であり、
排卵後24時間以上の間、体の中央部に
大きな餌を飲み込んだ際のような極めて異常な
膨らみが観察できる」との事です。
この膨らみは卵巣から卵子が放出される際に起きる膨らみで、
放出された卵子は卵管に1個ずつ収まるまでは
大きな房状の塊となっている為に起こる現象であり、
その後卵子が順にそれぞれ卵管に収まりますと、
自然とこの膨らみは認められなくなるとの事です。

排卵が起こり、卵子が1個ずつ入った卵管は
その後長く発達していき、
この排卵後に受精が成功しますと
胚子の発育が開始され、
卵管内での卵殻形成過程も直ちに始まります。

<レギウス・コメント>
胚子の発育のおよそ半分、そしてもっとも重要な部分は
産卵前のお腹にある段階にておこなわれるという事が
認められていますので、この時期の環境温度の低下は
特に注意が必要といえます。
雌を保温する為の適切な温度の確保と
確実な温度勾配を与える事を心がけてください。


◇メカニズム 其の二

より効率の良い繁殖を考えた場合や計画繁殖の場合では、
雌の卵胞育成過程を的確に捉える事と、
交配のタイミングを掴む事はとても重要と云えます。

雄は通常、繁殖期を通して交尾が可能であり、
雌は精子を体内に一定期間貯める事ができる
メカニズムを持っています。
(USの報告では最終交尾から受精までの期間が6ヶ月に
及んだ例も報告され、結果この期間貯蔵可能との判断が出来ます)

更にとても興味深いメカニズムなのですが、
Ball Pythonの場合、形成過程が始まった卵胞であっても、
卵胞の育成を維持させる為には早期での雄との接触が
必要だと言う事実があります。
どのようなメカニズムで起こる作用なのかは判りませんが、
この卵胞育成の早期に雄との接触が無い場合、
折角発育した卵胞も成熟する事無く発育を止めてしまう場合が
有ると言うことなのです。
また、上手く育成が進んだ場合にしてもタイミングが
遅れた時期での交尾では、受精確率が低下するとの報告もあります。

受精確率の低さは無精卵を産む確立が高くなる事に繋がります。
卵胞の再吸収は成熟卵胞のおよそ半分の大きさ(直径約25o)までは
出来るとされていますが、ほぼ成熟卵胞に近い大きさになってしまってからの
吸収はされないとの事です、排卵後に未受精にて卵が形成された場合、
無精卵を生む結果となり、
この事は雌に無駄に多大なエネルギーを消費させることに繋がってしまうのです。

 

◇エコー(超音波診断)

より確実で効率的繁殖を求めるUSのプロブリーダーでは、
エコーの使用により、卵胞の成熟過程を確認しながらの
無駄のないペアリング(交尾)を実践しているところもあります。
このエコーを使用する事により、
卵胞を発育前である5mmの段階で確認できる為、
交尾のベストタイミングと考えられる、卵胞の大きさが
直径10mmに成長した時点でのより確実なペアリングがなされています。
Bp・Supplyでも実際に繁殖期の雌にエコーを当てて確認しましたが、
USの報告通り卵胞の育成状況が画像にて明確に確認ができました。

◆エコー(超音波診断)の模様を画像にて掲載しています、どうぞご覧下さい。

◇雌のシグナル

雌の卵胞育成過程を知る術は、
なにも高価なエコー等の機材に頼る事だけが全てではありません。
独特なサイクルとメカニズムを持つBall Pythonであっても
ポイントを定めた個体観察と記録・統計との照合により、
既に多くの情報を捉える事が出来ています。

Ball Pythonの場合、雌は卵胞の発育が開始すると
自然と飼育環境の冷たい場所を求めるようになります。
この冷たい場所を求める行動は通常排卵が行われるまで続き、
反対に排卵後では暖かい場所を求めるようになると云う事が
判っています。また、雌は排卵が近づくと腹部の側面を
上に向けてとぐろを巻く、
「回転姿勢」をしばしばとる様になるので、
併せて排卵期の予測も立てることが出来ます。

私を含む多くのアマチュアの場合、ペアリング(交尾)時期を知るには
雌の行動観察と時期的要素に頼るしかありません。しかしながら、
プロブリーダーの様に1頭の雄にて数頭の雌を繁殖させる
効率的繁殖をするのでなければ、
この行動観察と適正時期でのペア組による何回かの交尾をさせる事で、
Ball Pythonの繁殖はきっと上手く行く事と思います。

◇ペアリングの方法

野生下の行動を考えますと、ペアを組む際、
雄のケージに雌を入れることがその後の繁殖に
有利だと考えられます。
雄は通常飼育されている自分のケージを
テリトリーと考えている為、自身のケージに雌が投入されますと、
雄はテリトリー内への進入者として雌の存在に強く反応し
(恐らく匂いに刺激を受け)交尾へと導かれます。

<レギウス・コメント>
この反対の行為(雌ケージ側に雄を投入)でも
繁殖自体に弊害があるわけではありません。
雄が雌側ケージ内の新たな環境に注意を向けてしまう事から、
繁殖行動に移行するまでに若干の時間が掛かる程度と思われます。


◇交尾

交尾に関しては雄の「やる気!」に頼る部分が大きく、
雄個体は性成熟さえしていれば、
育成サイズよりその「やる気!」が重要といえるでしょう。
通常やる気がある雌雄の場合、ペア組を行うと、
雌は尾を"くねくね"と小刻みに振るような行動を見せ、
雄は雌の存在(匂い)に反応し、雌を追いかけ体を沿わせ、
押し付けるような形を取ります。この様な行動の後、
雌が尾を高く持ち上げ受け入れ姿勢を取ると、
まるで位置を探るように雄はケズメを"うねうね"と動かしながら尾を絡ませて行き、
交尾となります。通常、この興奮状態はファーストコンタクト時が
一番顕著に現れるのですが、時期が早かった場合や、
雄にやる気がない場合などではこの様な反応が見られません。
その場合は数時間〜数日間様子を見て、一旦ペア組みを解除し、
単独飼育に戻して下さい。インターバルを取る事で、
互いの匂いの痕跡を一旦断つ事となり、次の交配時の新鮮さを保つ事が出来ます。

Bp・Supplyでの交尾確認は主に夕刻〜深夜・早朝にされています。
交尾時間は数時間〜半日続く事もあり、この交尾時間の長さにより、
その確認・観察は容易な事と思います。
反対にあまりにも短い交尾時間であった場合には不成功である可能性が大きいといえます。
交尾時の形状を私は「指きり」をした形と表現していますが、
お互いの総排泄孔より先を深く絡めている場合にはより確実な交尾が成されているようです。
また交尾後、雌の総排泄孔に蓋をするようにある大きな鱗を確認して見ると、
鱗のどちらか側が総排泄孔内に折れ込んでいる場合があります、
これはヘミペニスの挿入による名残であり、交尾確認の1つの目安ともなります。


◇ 『指きり』の形は契りの証

交尾の行動で、交接の確認がしにくいとの話を聞き、
交接までの行動と様子を 書き連ねて見たいと思います。
タイミングとしては雌の脱皮後
(真皮の乾燥や排拙等を確認しながら)などが最適なのですが、
逆に脱皮前や給餌間近は避けた方が良いでしょう。
性成熟後の個体は繁殖期になると雄雌共、
互いの匂いにとても敏感になります。
雄のケージに雌を投入すると、まず、雌が雄の存在(匂い)により反応します、
舌をしきりに動かし、シッポを左右にクネクネと振る様な動きを見せます。
興奮が高まるとその動きが小刻みに速くなり、
更には尾を高く上げ総排泄孔を剥き出しにし、
時には排尿する事もみうけられます。
この頃には雄も雌の匂いに気づき、同じく興奮状態に陥り、
雌に体を押し付け、追う様な行動を取り、ヘミペニスを出す様な事も起こります。
しばし、お互いの体側を触れ合わせながら這い回る動きを続けますが、
雄がケズメを立て、雌を刺激する様な動きを見せると雌がその気であれば、
尾を高く持ち上げ、総排泄孔を広げます。ここで雄がケズメで確認する様に
ヘミペニスを挿入するのですが、この部分が角度的に確認しにくい所だと思います。
そこで、外見の形で表現すると、
尾と尾が平行に近い形で尾の先だけが絡む様な形は挿入されているか危うく、
お互いの総排泄孔より先をまるで『指きり』でもしている様に深く絡めている場合には、
挿入されている確率が高いと言えるでしょう。

◆Projectの項目にて交接の模様を画像で確認できます、併せてご覧下さい。

◇コンバット

雄は「やる気!」が肝心と書きましたが、
繁殖を考えた雄個体がなかなかやる気を示さない事は間々あります。
こんな時の対処法として、
有効性が証明されている方法を参考までにご紹介いたします。
その方法は、ペア組に際し、やる気を見せない雄を一旦単独飼育に
戻した時に行うのが良く、繁殖目的の雄側ケージ内に別の雄個体(あて雄)を投入いたします、
先住者である雄個体(繁殖雄)はテリトリー内に別の雄(あて雄)が侵入した事に反応し、
排除行動をとります。この排除行動は攻撃と言うよりは
全身を使い侵入者を弾き飛ばすという様な動きであり、
時に侵入者側の雄もこれに応戦し同様の動きを見せることから、
まるで戦っている(コンバット)ような動きをみせます。
Ball Pythonのコンバット行為は通常相手を怪我させるほど激しいものではありませんが、
目的は儀式的戦闘による雄への刺激なので、ある程度の反応が観察できたら、
投入した雄個体(あて雄)を速やかに取り除きます。
このことで先住者側の雄個体(繁殖雄)はテリトリー内での戦いの勝利者となり、
雄としての優位性を保った事となるのです。雄は勝利した事での興奮状態が、
やる気!に繋がり、その後の雌投入に際して、
今までやる気のなかった雄の交尾を導いた実績があります、

<レギウス・コメント>
あて雄側の個体は繁殖雄よりも体格的に劣っている方が良いでしょう、
あて雄側が勝っていますと繁殖雄が怯んでしまい逆効果の場合もあるからです。
またあて雄側が興奮状態を示しているようでしたらそれを利用し、
別の雌との新たなペア組で同様の成果を得られる場合もあります。

◇繁殖期の給餌

早い時期での交尾の後、雌が猛烈な食欲を示す時が有ります。
これは卵胞育成の初期段階に起きるエネルギー摂取の為の
自然な行為ですので、個体の求める量を与えて下さい。
その際注意する点は、普段よりも小さめの餌を与えたり、
消化に必要な適正温度を維持するなどして、
必ず個体に食滞を起させないという事です。
この食欲は卵胞の育成に伴い自然に停止し、その後は産卵まで餌を捕ることはありません。


◇繁殖用ケージ・床材・水入れ

「繁殖用ケージ」

繁殖を考えてのケージ内セッティングで最も重要なことは、
ケージ内にて涼しい場所と暖かい場所の温度勾配を作ることです。
この事は雌がケージ内にて最適な温度域を選択できると共に、
我々キーパー側にとっては雌の行動観察をする上で 、
雌のシグナルを捉え易くなり、
繁殖期の重要な情報を得るのに大変有効となります。
温度勾配を設ける1番簡単な方法は個体が
最適な温度域を選択できるだけの床面積の広さを作り、
部分的温度管理をする事です。
USプロブリーダーでは成体の飼育に長さ80p×幅43cm×高さ18cmのケージを使用し、
このケージにての温度管理にて、通常飼育だけでなく、
繁殖期のペア組み、産卵まで行っている例が紹介されています。

日本に於いて全てのキーパーがこの環境を用意することは
不可能と思われますが、そこはキーパーごとの創意工夫で解決して行くしかありません。
要は底面積と温度域を如何に設けるかが解決の鍵となります。
その解決策の1例として、Bp・Supplyにて実践している幾つかの方法を紹介いたします。

<例1>
狭い底面積をカバーする為には若干高さのあるケージを用いて、
空間を効率よく利用する方法があります。
USでは背の低い(18cm)引き出し式ケージを用いる事により
ケージとシェルターを兼用するスタイルを取っていますが、
反対に高さのあるケージに必ずペアリング用のシェルターを
入れるセッティングを行います。
この事によりペア個体はシェルター内外に別空間が出来た事となり、
更にシェルター上部も立体空間の場として活かすことが出来ます。
このセッティングにより、個体はケージ内に幾つかの温度域と空間の選択が出来る事となり、
行動観察も行える事となります。
実際に私はこの方法で自作の600X450X350ケージにてペアリングを行い、
交尾・産卵を成功させています。
注:この時用いるぺア用 シェルターは通常よりも重要な役目を果たしますので、
必ず2頭が入って収まりの良いサイズを選択してください。

<例2>
底面積のキープと個体の温度選択を重視した場合、
2層式ケージの使用が適しています。
この構造は必要な底面積を上下空間にてカバーすることが出来き、
個体が上下の温度域と環境を自由に選択(移動)できる事からも
飼育・繁殖共にとても有効なケージと捉えています。
この構造は温度域の設定が明確な事から、
個体の行動観察がより容易に出来る事からも、
繁殖用ケージとして大変有効性を感じています。

「床材(産卵床)」

USでは多くのプロブリーダーが床材としてのアスペンチップを
そのまま産卵床兼用として使用しているのを確認していますが、
私はこのタイプが床材(産卵床)として万全との判断はしていません。
Bp・Supplyに於いてもこのアスペンチップを初め、
黒土、牧草等様々な産卵床を試してみましたが、
全てに一長一短を感じています。
現在は雑菌の発生などの衛生面や過度の乾燥などの弊害を考慮していった結果、
新聞紙のような紙類を全体に厚く敷く方法と一部分に若干の湿度を持たせた水苔を
タッパー等で設置する方法のどちらかで対応しています。
個人的見解ですが、Ball Pythonはあまり湿度の高い産卵床は好まないと思われ、
その点からも、紙類と水苔は適度な湿度を保つ事が出来、
更には衛生面、交換性の面から見ても利便性に優れていると判断しています。
産卵後速やかに卵を取り出すことが出来るようであれば過度の乾燥にさらされることも無いので、
今の所、有効な床材(産卵床)と判断し使用しています。
注:産卵床の選択はキーパーごとの飼育環境にもよると思いますので、
自身の環境下で最良なタイプを選択して下さい。

「水入れ」

産卵が近づきましたら産卵時の事故などを考慮し、
特に水入れは飲料目的の小さなサイズに変えることをお奨めします。
水は良く飲む事を観察していますので、
通常飼育時と変わらず新鮮な水を与えるようにして下さい。

◇妊娠の確認と産卵の予測

外見からは受精の成功確認はできませんが、
卵の育成状態を判断することは出来ます、
雌が妊娠後期に見せます幾つかの特徴を
明記しますので参考にして下さい。

1、 この時期の雌個体は大変神経質になっており、
   通常あまり見せない過敏なほどの攻撃行動を見せることがあります。
2、 卵の育成が進んだ雌個体は餌を捕る事はまず有りません。
3、 妊娠後期になりますと、見た目のボリューム感に変化が現れます。
   背骨が目立つようなり、腹部のみが膨らんだような状態になります。
   これは、蓄積した栄養(脂肪分)が卵の成長へと移行し、母体自体は痩せますが腹部は卵の発育により膨らむ為の現象と捉えています。

◇産卵の前兆

産卵日を予測するのに、一番明確な前兆は産卵前に必ず起こる脱皮と云えます。
Bp・Supplyではこの脱皮を「最終脱皮」と呼び、
データ上ではおおよそ32℃の環境温度を保ちますと
雌はこの最終脱皮(産卵前の脱皮)から25日〜30日後を
目安にして産卵が行われています。
また、産卵の多くは深夜から明け方に行われる事が多いようです。

◇産卵

雌は卵を産み落とすと、その都度卵をとぐろに巻き込む行動をとります。
産卵直後の卵はとても軟らかく(感触は水風船のようです)
幾分のぬめりが有りこの軟らかい状態のうちに雌が抱卵を行う事で
卵同士がくっつき合い、ぬめりの乾燥と共に卵塊状態になるのです。
自然界では雌がこの抱卵状態を保ちながら、
温度や時には湿度を保ちながら孵化を待つのですが、
飼育下では孵化までの環境維持が難しい事と、
産卵後の雌個体に、より早い給餌を再開したい考えからも、
孵卵器に移しての人工管理の方が良いと云えるでしょう。
産卵後の雌は卵を守る防衛本能からか、総じて普段からは
想像できないほどの攻撃的行動を見せます、雌から卵を取り出す際は、
抱卵状態の雌にタオル等をかぶせるなどして、攻撃行動を抑えながら
雌の抱卵を慎重にゆっくりと解いてあげる必要があります。
産み落とされたばかりの卵は持ち上げるのが困難な程の柔らかさの為、
ある程度時間経過を見てから、適度に乾燥し硬くなった状態からの回収をお勧めします。

◆産卵の模様を画像にて公開しています。どうぞご覧下さい。

◇産卵後の雌個体への対応

抱卵から雌個体を外す際に1つ確認していただきたい事は、
卵の産み残しの有無です。これは手の掌で個体の腹部を
触診する事で確認できると思いますが、
産み残しが確認できる様でしたら腹部上部から
総排泄孔に向かって優しく絞るような行為で排出を試みて下さい。
但し適切な判断や熟練も必要な事から、
私はこの様な場合は速やかな専門獣医師への相談をお勧め致します。

産卵後の雌は腹部の大半を占めていた卵を産み落としたことで、
その姿は産卵前とは見る影が無い程のげっそりとした状態に
変貌しているはずです。産卵後の雌にはエネルギー回復の為にも、
早い時期に給餌を再開したいのですが、Ball Pythonの場合、
産卵後直ぐに採食(捕食)する事は大変稀なことです。
産卵後の雌は卵を取り出した後も産卵場所に執着し卵が無くても
抱卵姿勢を保ち、卵を守ろうとする行動を見せます。
この様な行動を示す雌の場合、そのままでは捕食行動はまず取りません。
この事は産卵に伴う「匂い」の残留により、
雌が存在しない卵(匂い)に対し保守行動を継続してしまうことが
原因と考えられています。解決方法としては産卵後のケージを
洗浄や交換をするような単純な対処で問題はありませんが、
USでは産卵後の雌個体自体も洗う事で、匂いを完全に取り除く事が
実践されている位ですので、重要なポイントと捉えておいて下さい。
ケージや体から産卵に伴う「匂い」が取れますと、
雌個体は次第に落ち着きを取り戻し、
通常数日〜数週間のうちには餌を捕るようになる事でしょう。
一旦採食方向に進んだ雌は猛烈な食欲を示す事と思いますので、
個体の状態を確認しながらですが給餌頻度を高めるなどして、
個体が求める量を適正に与える様にしてあげて下さい。
この給餌は個体の回復だけでなく、次回の繁殖・産卵にも繋がるとても重要な給餌といえます。

◇孵卵器

孵卵器のタイプ(構造)はキーパーごとの考え方、環境、経済的要因等により
様々なタイプが考えられると思いますのであえて言及しませんが、
一定の温度と湿度が保て、卵が必要とする量の酸素を得る事が
出来る構造であれば基本構造は良いと思います。
構造上注意する点は、卵が水滴などで濡れる事が無い工夫が必要です。
卵全体が濡れた状態のままになりますと酸素の交流が絶たれ死亡してしまうこともあります。

Ball Pythonの卵は平均して全長80o―90o、幅40―45oとかなりの大きさの為、
産卵数が平均して4−8個と少ないものの、
卵塊の状態になりますとそれなりの大きさ(体積)になります。
卵は一度乾燥して卵塊状になると個別に引き離すのは容易ではない為、
そのままの卵塊状態で孵卵器に入れる事となります。
この事を事前に予測・計算し孵卵器の容量を考えてください。

孵卵器は必ず最終脱皮が確認できた時点にはセッティングを済ませ、
試運転しておく事をお奨めします。産卵までの期間を利用し、
孵卵器内の温度・湿度を適正に保ち万全を期すことで、
器具等の不備による不慮の事故を回避する事に繋がります。

この基本構造にて設定温度を31−32℃に保ちますと約2ヶ月で孵化となります。
Ball Pythonの雌雄の決定は孵化温度には関連しないので、
サーモスタット等を使用して適正温度の維持を心がけてください。
低すぎや高すぎる温度は孵化率低下の誘因になりますので注意が必要です。

◇産床(Medium=メディウム / 培養基)

培養基の素材や水の割合は各ブリーダーによって様々な意見があるのですが、
これには使用する培養基の素材により、特性が違う事が大きな要因の様に感じます。

USのプロブリーダーが算式で表した報告を1例として明記しますと、
「産床の用材にはパーライト1に対しバーミキュライト2の割合で
まぜた混合物を使用し、この混合物5に対して水を1加えて攪拌し使用する」とあります。
(例 パーライト 10 : バーミキュライト 20 : 水 6)
全ての割合は体積で算出されていますが、
これには用材の粒の大きさ等も考慮して若干の調整が必要な事と思います。

私も実際パーライト、バーミキュライトの混合物を使用していますが、
水の割合に関しては未だ感覚で作成している部分が大きく、
割合での明記が出来ません。感覚的に表現しますと「しっとり、さらさら」状態で、
空中湿度が適正に保てれば、卵の底面に接する部分はある程度の
乾燥状態の方が良いように感じます。また、未だ試験的域ですが、
空中湿度を保つ為に周りにミズゴケを配す事や、混合物に粒状の竹炭を混ぜ、
水と空気の浄化を図るなどの試みもしています。

◇卵の発育と孵化の前兆

産卵直後のぬめりのあるゴム状の卵は乾燥するにつれ、
しっかりと堅さのある綺麗な白い卵へと変わっていきます。
それに伴い透き通って見えていた内部も目視できない様になります。

卵の発育に伴う内部観察は
キャンドリング(光を当てる事での透視検査)により容易にできます。
観察方法は至って簡単で、真っ暗な部屋にて、
ライトの光に卵を透かすようにしますと、有精卵では卵殻の下部に塊が、
そして周囲を血管が配している事を観察できます。
反対に無精卵では光の透過性が悪く、血管の走行も確認できません。

<レギウス・コメント>
原始的行為にも思われますが、とても有効な観察法であり、
真っ暗な中で真っ白な卵がオレンジ色に輝き、
その内で小さな命の塊と真紅の血管が息づく様はとても神秘的な世界です。
皆さんにも是非実践し、体感して頂きたいと思います。

卵は内部の成長に伴い、外殻寸法も数ミリ単位ですが大きくなり変化をしていきます。
孵化の前兆としましては、孵化2週間前位から卵に凹みが見られるようになり、
また感覚的ではありますが、白色だった綺麗な卵が、成長により表面が粗く、
透明感が出てくるともうそろそろと判断をしています。
適正温度での管理がされていれば産卵後約60日が孵化の目安となりますので、
上記卵の状態と併せて予測・判断して下さい。
私の経験では孵化は深夜〜早朝にかけて始まる傾向が見られ、
孵化の瞬間を目にするにはその観察力と根気が必要と云えるのです。
<レギウス・コメント>孵化前の卵に出来る凹みは正常な事ですが、
早い時期に卵がしぼむことがあります。
これには孵卵器内の湿度低下が原因の場合があり、
このような時は産床に水分を補給するなどの対処が必要で、
湿度が正常に戻れば余り心配する事はなく、元の形に戻る事もあります。

◇胚子の死亡

卵は有精卵でも、様々な要因により発育途中で
死亡してしまう場合があります。
胚子が死亡すると酸素の交流や殺菌作用が無くなり、
次第にカビが発生したり萎んだりと言う変化が現れます。
卵塊状になっている場合、健康な卵への影響が心配かと思いますが、
多くの場合、そのまま放置しておいても問題はありません。
隣接する死亡卵が朽ちてきても健康な卵である場合は
それの影響を受けずに成長します。

<レギウス・コメント>
生きている卵であっても時にはカビが発生することがありますが、
焦らず確実な確認を心がけてください。死亡卵の処理ですが、
1つ1つが個別の場合であれば取り除く事は容易ですが、
卵塊状態での死亡卵はそのままの方が良いでしょう、
切開等での排除の方が環境衛生を犯すことからも得策とは思えません。

◇孵化

卵にカッターで裂いたような亀裂が現れますといよいよ孵化の瞬間です。
何箇所かに線のような傷ができ、大きな亀裂が出来ますと、
まず鼻先が、そして頭が飛び出して来ます。
多くの場合いきなり全身を現す事は無く、
暫くは空気を吸う行動や、辺りの様子を伺う様な
姿を観察する事が出来るでしょう。
個体にもよりますが頭を表した後も卵黄の吸収が完了するまでは
卵の中で過ごす様で、この待機状態の幼蛇を無理に取り出すのは
あまり良い行為とは思いません、幼蛇が自力で出てくるのを見守りましょう。
大抵の場合1両日中には完全な孵化が終了します。

<レギウス・コメント>
健康な蛇の場合は通常孵化に人為的手助けは
必要ないとあります。私自身様々な要因から卵に
人為的にハサミを入れた経験はありますが、
孵化時期の判断と、切開技術にはある程度の経験が
必要と感じました。やはり自然な過程を経ての孵化が
1番安全という事なのでしょう。

◆孵化の様子を画像と解説にて紹介しています、どうぞご覧下さい。

◇孵化後の幼蛇

孵化直後の幼蛇はとても繊細な表皮をしているので、
暫くは乾燥を避ける為に、ケージの1部に必ずミズゴケを
配すなどの管理をお奨めします。管理上の問題からも
個別管理が適しており、シェルターは必要ありませんが、
新鮮な飲料用の水は必ず常設しておきます。
このセッティングで30℃前後の高めの温度をキープし管理します。
環境と温度管理が正常でしたら、孵化からおよそ10日で最初の脱皮を迎えます。

この初回脱皮が終わりますと、いよいよ本格的な幼蛇飼育の始まりです。
脱皮後の幼蛇はこれがBall Pythonなのかと言うような攻撃行動を見せる事があります。
この攻撃は防衛本能の表れですので、
元気な証拠と受け止め気にする必要はありません。
幼蛇は孵化後、数日間は体内に栄養を蓄積している為か
捕食行動を見せません、 よって7〜10日ほどは個体を環境に慣らすことに務め
水のみの管理で問題ありません。個体が環境に落ち着き、
辺りを覗う行動を見せ始めましたら給餌を試みます。
最初は少し暖めたファジーマウス程度の大きさからが良いでしょう。
物怖じしない個体はこの時点で問題なく捕食しますが、
多くの個体は最初、餌(ピンセット)を怖がり攻撃行動のみで終わる事が多いと思います。
捕食行動をとらない個体には、日にちをおいての再給餌のほか、
餌のサイズを小さくする、置き餌、活餌(ピンクマウスLサイズ〜ファジーS程度が最適)等、
個体にあった給餌方法を選択していきます。
たいていの個体は上記のどれかの方法で初回給餌は完了すると思います。
その後同様の給餌が進むなかで餌食いが上がってきまいたら、
解凍して少し温めた餌でのピンセットからの給餌に切り替えていきます。

孵化したばかりの幼蛇はかなりの頻度で餌を求める事と思います、
私はこの行為は幼蛇が早く大きく成長しようとするパイソン種特有の本能と判断し、
この時期は2〜3日間隔での給餌をおこなっています。
餌のサイズは胴の太さ以下を目安にしますが、
少し大きい位の餌を効率よく与えるようにしています。
貪欲に食べる幼蛇も欲求が満たされますと自然と捕食をしなくなり、
私の所では今まで吐くまで食べ続けた個体はいません。

<レギウス・コメント>
幼蛇の給餌で大切な事は、 決して食べない個体に対して焦らない事です、
人間でもそうですが、健康な個体であれば食のリズムは個性と捉えるべきです、
幼蛇の場合1度リズムが出来上がればその後は順調に採食して行く筈です、
返って食べないと言う焦れから個体に負担をかけ、
拒食に導いてしまう事の方がはるかに危険です。

 

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