A 『regius』 Essence Ball pythonの性質に関する記述

王者の本質

Ball Pythonの"魅力"
魅力の探訪
独特のリズム「休眠」
飼育環境
ダニ対策
ダニ駆除 

 

◇Ball Pythonの"魅力"

Ball Python (python regius)。
 学名に"王"や"素晴らしい"との意味を持ち、
別名にRoyal Pythonと言う高貴な名前を掲げる魅力あるPython種。
この名前からもBall Pythonが如何に古き時代より、
多くの人々にその魅力を認められて来た蛇かと云う事が分かります、
事実USではそれを裏付けるように、その評価・扱いは今の日本とは
比べものにならないほど高いステータスに位置付けられているのです。
勿論、最近の日本でも管理飼育されたファームハッチ等の
CH個体やCB個体が普及し、選別されたMorphとしての
販売がなされるなど、その認識に変化は見られるようになりました、
しかし、それはBall Pythonが持つ"魅力"の一片に過ぎません。
事実、私はBall Python一種専門飼育を続けて既に20年余り
この種と向き合っていますが、未だに「魅力」「飼育」共に到達した感を
受けません、むしろ新たな発見の連続に、とても他種に目を向けられないのが実情です。
Ball Pythonの魅力とはキーパーそれぞれの想いや考え方により、
その形は様々に存在する事と思います、"種としての本質"を知り、
"正確な飼育情報"が伝われば、自然とあなたの求める「魅力」に辿り着く筈です。

 

◇魅力の探訪

「種としての存在感」

私がBall Pythonに初めて心奪われた部分とは"種"としての存在感でした。
初めて目にした個体は30cm程のとても小さな幼蛇でしたが、
その小さな幼蛇に私は"大蛇の姿"を見たのです。事実、しっかりと育てあげた
Ball Pythonは、そのボリュームある体型、触れたときの筋肉質な弾力感、
複雑な紋様、そして色彩。いわゆる皆さんがイメージする"Python"の魅力を、
全て凝縮した姿と云えるのです。

「空間に映える姿」

育成させたBall Pythonの姿は、静かにじっとたたずんでいるだけでも
十分な見応えがあります。流木を配するなど、レイアウトを施した
「観る飼育」「楽しむ飼育」の中にあっても、
空間の主役として存在する筈です、そうBall Pythonの"映える姿"は
背景をまったく選びません。

「日本向けPython種」

大型種の多いニシキヘビ属Pythonのなかにあって、
Ball Pythonは飼育下での成体サイズがおよそ1m50cm。
「高さ」を重視しない飼育が出来る事からも限られたスペースでの
多頭飼いも可能です。また飼育・繁殖を考えた場合、
個体の年間サイクルを日本の四季変化に連動し易いなど
まさに日本向けPython種と云えます。

「限りないバリエーション」

顔つき一つにしても、ノーマルの可愛らしさ、パステルの精悍さなど、
その個体ごとに受ける印象は様々です。
さらに色彩・紋様のバリエーションの豊富さはPython種 No1と云え、
その品種名だけ見ても大いに楽しめます。
クラウン、スパイダー、バンブルビー、プラチナ、パール、バーガンディ、
ファントム、シナモン、コーヒー、バナナ、ピューター、アイボリー etc・etc・etc ・・・。
きっと、あなたの心を揺さぶるMorphが存在する筈です。

「夢を追う!」

フロリダ デイトナビーチにて開催された「National Reptile Breeder's Expo 2003 」USに
赴いたメンバーの報告によりますと、今回も目玉個体である、ピューター、アイボリーを筆頭に、
アルビノスパイダー、パステルモハベ、パステルシナモン等々、
相次ぐNew Morphの発表に、Ball Pythonの想像を超える進化の速さを感じたそうです。
1992年、ボブ クラーク氏によりT-アルビノの単純劣性遺伝が証明されてから12年、
遺伝の証明された品種が既に40を超える程の進化が成されています。
しかしそこには、机上の理論だけでは決して解決しない難しさが存在する事から、
今でもNew Morph作出者にはその成果に対し、
惜しみない賞賛と輝かしい名誉が与えられるのです。
そうBall Pythonの飼育には"夢"が存在するのです。

 

◇ 独特のリズム「休眠」

Ball Pythonの飼育・繁殖に於いて、
季節変化に伴うBall Python特有のサイクルを知る事はとても重要な事といえます。
Ball Pythonは生後2年目の冬季を迎えますと雌雄共に多くの個体が活動はするものの
採食をしないという「休眠期」を迎えます。この独特のリズム「休眠」の存在を知る事は、
長らくBall Pythonの代名詞のように言われてきた「拒食」に対する誤解も
解消される事に繋がるかもしれません。

<レギウス・コメント>
「休眠」とはBp・SupplyがBall Pythonの行動説明の為に使っている造語です。
継承項目にて「休眠期」=「繁殖期」=「食欲減退期」の図式を説明いたしますが、
飼育をする上では「休眠」の言葉の方が説明し易いとの考えから使用しています。

 

◇飼育環境

「ケージ」

ケージ選択にて、もっとも重視する点は床面積の広さになります。
広い空間を立体的にレイアウトしての飼育も大変美しく楽しいものですが、
管理飼育や繁殖を考えた成体ではメンテナンスの利点を優先に考えた
簡素なタイプをお勧めします。幼蛇では個体のサイズごとに合わせた
フラットタイプのプラケースが適しており、成体に於いても若干の工夫が必要であるものの、
概ねサイズに合わせた市販の爬虫類飼育ケージ等の対応で生涯飼育も可能です。

「床材」

Bp・Supplyに於いても長い飼育期間の中で様々な素材を使用してみましたが、
素材ごとの特性は一長一短に思います。
USでの使用例も多いウッドシェイブタイプ(アスペンチップ)は見た目も綺麗ですし、
汚れた部分のみを取り除くという交換性にも優れていますが、
反面 木の粉塵がケージ内を舞う事での呼吸器系疾病の懸念や採食時の誤飲、
口内に刺さる事でのマウスロットの心配などが挙げられます。
新聞紙の様な紙類は安価な事と糞尿の吸収性や交換性に優れていますが、
レイアウト重視の方にとっては個体が下に潜り込んでしまうなど、
見た目に問題が有るとの意見もよく耳にします。
現在私は、幼蛇―亜成体では紙類(キッチンペーパー・新聞紙など)を使用し、
糞尿量の増える成体からはペットシーツと紙類の併用にて管理しています。

「シェルター」

ケージのタイプ、個体の性格にもよりますが、個体を落ち着かせる為には
シェルターは大変有効です。素材や形はキーパーの考え方により様々と思いますが、
重視する部分はその大きさです、個体がとぐろを巻いた時程よく体が
壁面に触れる程度の大きさが最適と思います。

「水入れ」

一般の飼育書にはよく「個体の全身が浸かれるサイズ」と書かれていますが、
私は日本の気候と湿度を考えますと、
水入れは「飲料専用のサイズ」にて問題ないと考えています。
個体の観察により、過度の乾燥による脱皮不全の心配がある場合などに対しては、
臨機応変に「大きなサイズ」に変える事などでその問題も解決するはずです。

「保温」

保温器具の選択はキーパーごとの飼育環境等により異なる事と思いますが、
環境温度を通しての管理や底面ヒーター等での個別対応が適していると思います。
重視する点は必ずケージ内に温度勾配を設け、
個体がケージ内にて最適な温度域を選択出来ると言う事です。

「温度設定」

ケージ内にて温度勾配を設ける事を推奨しましたが、
設定温度の目安として下記数値を参考にして下さい。
年間を通しての高温域の温度を、
昼間30〜32℃(上限35℃)夜間27〜29℃に設定。
季節による温度変化をつけるため、
低温域の温度を夏季で昼間29℃・夜間27℃、
冬季では昼間27℃・夜間25℃になることを目安に設定しています。

<レギウス・コメント>
数値はあくまでも目安ですのであまり神経質に捉える必要はありません、
私のところでも低温域の変化は主に季節による室温等の環境温度変化からの
自然な対応に頼っているのが現状です。保温方法などにもよりますが、
ケージの設置位置を変えるなどの単純な工夫でも十分対応出来る事と思います。

「日照時間(照明)」

季節変化をつけるには温度変化が最も重要と捉えていますが、
それに併せて日照時間を変化させる事により、
より人工下での季節変化・リズムを与える事が出来ると考えています。
日照時間の変化を再現するのには照明をタイマーでコントロールし、
照明時間を月単位に変化させて管理しています。
Bp・Supplyでは夏季と冬季との照明時間を段階的に変化をさせ、
最長で4時間の差を付ける事で表現しています。

 

◇ ダニ対策

「個体導入時の注意」

爬虫類を飼育する上で避けられない問題の1つにダニ対策があります。
よくCB個体ならば安全との声を聞く事がありますが、
その解釈は間違いと思って下さい。確かに管理飼のされているCB個体は、
WC個体に比べればその危険性は少ないかもしれません、
しかし絶対的に安全とは言い切れないのが現状なのです。
個体の流通ルート1つを例に考えても、ブリーダーからシッパーに渡り
日本の輸入業者に一旦ストックされShopのもとへと渡る、
そのどの経緯においてもダニとの接触は有り得るのです。
現在の飼育環境がダニの被害に犯されていないのであれば尚更の事、
個体の新規導入に際してはより注意が必要となり、その対策も重要と云えます。
新規個体導入時には現在の飼育個体との隔離した管理期間を
設ける事が得策と云えるでしょう。
この隔離はダニの移行を防止する目的以外にも、
個体の安定や給餌の準備等にも活用できますので、
決して無駄な処置や時間とはなりません。

<レギウス・コメント>
ダニの駆除には個体の健康状態が良好である事が第一条件です。
隔離さえしていれば、脱皮のサイクルを利用するなど時間を掛けて行ったとしても
決して遅くはありません。
注意すべき点は、キーパーがダニの存在に神経質に成り過ぎ、
個体の状態を診ることよりもダニ駆除を優先させてしまう等の、
強硬な駆除により、個体の衰弱や拒食を招く事の方が問題です。


 

◇ ダニ駆除

「フロントライン」

私が現在、有効性を確認し、実際使用している薬剤について説明いたします。
薬剤の名称はフロントライン(スプレータイプ)動物用医薬品です。
動物病院等で購入する事ができ、説明書を抜粋し書き出しますと、
『フロントラインの殺虫成分、フィプロニルは昆虫、寄生虫等の
中枢神経伝達物質であるGABAの働きを阻害すると言う
特殊な作用機序を有します。フィプロニルは、ノミ、マダニ等の
外部寄生虫のGABA受容体にのみ強い親和性を有し、
脊椎動物のそれには、ほとんど作用しません。
また、フィプロニルは、動物の体内にはほとんど吸収されず
体表にとどまります。』
説明文では解りづらいのですが、要は殺虫成分がダニの中枢神経の伝達を遮断し、
狂い死にさせてしまいその作用は脊椎動物には影響ない‥‥と云う事らしいのです。
また、その殺虫効果はかなりの即効性がある事が証明されえいる上、
持続性に関してもマダニに対して約1ヵ月有効と頼もしい限りです。
この薬剤は主に犬、猫用に開発された製品の為、
付属の使用方法などはそれに準じて明記されています。
注意書等は共通項目でしょうが、爬虫類に対する使用方法については
若干の応用が必用な為、私が実践している方法を明記したいと思います。

「使用上の注意点」

この薬剤使用時の注意点は溶解に使用されているアルコールにあります。
よく「犬、猫の使用するのと同じように蛇にも直接散布したのですが‥‥」 と言う話を耳にしますが、
この薬剤での大きな懸念材料はこの直接散布時のアルコールの臭気にあるのです。
実際に使用するとお解かりになる事と思いますが、その匂いは決して優しい香りとは云い難く、
強い刺激臭があります。感覚的見解ですが、直接散布を行った個体を
そのままケージに戻すなどの行為はかなりの危険を感じるほどです。
そこで使用時の注意ですが、薬は必ず直接散布するのでなく事前に
タオルやキッチンペーパー等に一旦散布し、
時間経過によりアルコール臭が和らいでから蛇の体に沿ってしごく様に塗るようにします。
この際、薬剤が多量に付着しますと体がガビガビと固まった様な状態になってしましますので、
20〜30分経過しましたら薬剤を洗い流してください。
この洗い流す行為による薬剤効果の薄れはさほど感じられませんので、
状態を確認しながら実践して下さい。
また、薬をつけた後の個体を白い紙を敷いたプラケース等に安置し、
観察していますと数時間のうちにダニが落ち効果を確認できることもあります。

<レギウス・コメント>
現在、フロントラインの爬虫類への使用は獣医師の方々でも
見解は様々のようです。このHP上で云う有効性はあくまで私個人の見解ですので、
その使用には注意点の確認と各自の判断、責任のもと行って下さい。

「応用編」

先に述べたようにこのフロントラインは持続性にも優れており、
効果が残留する事からケージに散布する事でもダニの死滅、
予防に効果があります。使用法は簡単で、
ごく少量をケージの四隅に散布し、アルコールの臭気がなくなれば
それでもうOKです。この方法は個体の新規導入の際の予防にも役立ちますし、
運悪くダニが発生してしまった際のケージの消毒にもなります。

<レギウス・コメント>
注意する点は必ずアルコール臭が無くなってから蛇を戻すと云う事です。
アルコール臭が充満しているうちに蛇を戻しますと中毒状態に陥る事があり大変危険です、
必ず臭気を確認する様にして下さい。

「その他」

薬剤に抵抗のある方がよく蛇を水に浸ける駆除方法をされる事がありますが、
この方法ではダニが鱗と鱗の間に出来る気泡に入り込み、
なかなか水死させる事が出来ず、思ったような成果を挙げられないのが実情です。
薬剤以外ではオイルを用いる方法にて効果があることを確認しています。
使用方法としては、蛇全体にオイルを塗り、暫く放置します。 
放置する際に入れ物の敷物を白い紙等にしていますと、苦しくなった、
ダニが体から離れるのが確認できることがあります、
そのままでは死滅しませんから体に戻ることがないように必ず潰す様にしましょう。
ある程度の時間放置しましたらキッチンペーパー等でしごく様にオイルを拭き取ります。
この行為を数日置きに数回繰り返しますと、
たいがいのマイト(小さなダニ)は駆除出来ると思います。
さらに先ほど効果の薄いと記した、
水に浸ける方法も事前にオイルを塗りますと効果のある方法に変わります。
オイルを塗る事で蛇に油膜がかかり気泡に逃げ込めない為、窒息させる事や、
死なないまでも苦しくなり体表に這い出てきますので駆除し易くなります。
オイルの種類は、私は薬局などで購入できるバージンオイルを使用していますが、
食用オイルを使用する方もいるようですので各自の判断で選択してください。

「バボナの使用について」
ダニの駆除として昔からShop等でも使用されてきた薬剤の1ツにバボナがあります。
この薬は購入の際には印鑑が必要であるなどと、かなりの劇薬です。
最近はTV-CMなどで人家に吊るして使用している場面が放映されたりしていますが、
私はこの薬をフロントライン等と違い使用法によっては節足動物等だけでなく
人体にも影響があるほど危険な薬と捉えています。
バボナはShop等でも昔から薬剤をフィルムケースに入れてケージに置いて使用され、
爬虫類関連の薬剤がない時代ではあたりまえのように使われてきたといえます。

実際私も初期の頃は使用した事もあります、
その私が使用反対論者に変わったのにはある疑問がきっかけとなったのです 、
それはバボナの使用上注意に「劇薬の為、人の居るところでの使用の制約」が有ったことです。
爬虫類のダニ駆除が目的で使用する際、薬剤をかなりの小さいサイズに切りますが、
それはあくまでも人から見ての大きさであり、
爬虫類のサイズで考えれば相当の分量を置かれたことに成ります。
ましてやそれが気密性の高いケージで使用するとなると‥‥。
その効果はダニの駆除どころでは無いと考えたのです。
この薬の効果は薬剤が気化する事で効果を発揮しますが、成分は空気より重い為、
下に沈殿する形となり主に地表を生活空間とする爬虫類にはたまらないものだと思うのです。
よくバボナ使用の際、蛇などがプラケースの上部に首をもたげゆらゆらしているのは薬の中毒により、
いわゆるラリッている状態なのです。現在も尚、Shop等で使用され、
雑誌等でも駆除薬として紹介されているバボナですが、
爬虫類関連の薬剤等が豊富にある現在、古い慣習・認識は正すべきだと私は思うのです。


 

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