「EXPO 2004 Ball Python編」
さて、今年の動向を知る上でも、先ずはNERD様にはご挨拶しなければと、
メンバーに連れられブースを探しますが・・・見当たりません。
結局、今年はメイン会場入り口付近のロビー側での出展だった訳ですが、
メンバーの話では「今年のNERDにはあまり勢いを感じませんでしたね〜」との事でした。
それでもそこは天下のNERD様、此処の代名詞であるスパイダーを筆頭に、
バンブルビー・キラービー・ゴーストスパイダー・アルビノスパイダーのスパイダー軍団、
さらにはウォマボール・ウォマスパイダー・パステルウォマスパイダーなどのウォマ軍団、
ラベンダーアルビノ・キャラメルグロー・コーラルグローのアルビノ軍団と、
メガトン級の個体達がドーン、ドーンと並ぶその様は、
私にとっては正に「夢の世界」と云うほかありませんでした。
ここの大ボス、Kevin McCurley氏は多くのスタッフを従え、 噂通りの迫力ある人物でした。
我々が遠慮がちにスタッフに話しかけていたNew Morphに関する質問に対しても、
初めは聞いているのかいないかの状態だったのですが、 余りにテキパキと答えられないスタッフに業を煮やし、
「全くお前らには任せられないぜ!」とばかりに後ろからズズン!と現れ
「まあ待てよ、その写真のMorphなら、ここにも居るぜ、ほら此れと同じだろう!」とドーンと個体を見せつけ、
「どうだ、これで一件落着だろう〜」と云った感じの面構えでした。
我々も「さすが天下のNERD様、何でもお持ちなんですね〜」と一旦は引くものの、
「よく考えればそれじゃ答えにならんだろ〜」と次の質問で切り返します。
「それじゃー、此の遺伝形質は何ですか?」との再度の問いかけに対しては、
「う〜む」と暫し考えてから「・・・、そいつは俺がこれから証明するのさ!」とニッコリ微笑で返されました。
・・・ホント食えないオッサンだなーと思いつつも「一同 へへーっ」そんな感じでありました。
EXPOの出だしを飾るには十分な光景・個体達を堪能することもでき、さあ、洗礼も終わった事ですし、
いよいよ生のEXPO本番となったのですが、普段は一枚岩の結束を誇る我がBp・Supplyでは在るのですが、
この時ばかりは本能が頭と足を勝手に動かすのか、有名ブリーダーのブースを案内頂いた辺りから、
誰からとも無くそれぞれの嗅覚を頼りに広い会場に散って行ってしまいました。
(勿論 私も同様の落ち着きの無さではあったのですが)
去年、メンバーから「午前中は本当に人に合わないのですよね〜・・・」と聞いてはいたのですが、
自身が経験して初めて意味がわかりました。要は目が人などを全く見てない、
いや認識すらしていない状態なのです。私などもブースで肩がぶつかり会釈をしたら、
隣に居たのはツアー参加者だったなんて事があった位です。
とにかくブース、個体、ブース、個体しか目に入らないのです。
さて、いよいよ本題、今年のBall python に関する総括ですが・・・。
今年の目玉個体紹介もしなければと思いますが、先のNERDの他にもブリーダーごとでの
特長や傾向もありますので、今回私がこのEXPOを通して、直に見、触れる事が出来た、
Ball Pythonブリーダーを中心にブースごとの紹介と云う形で書き進めようと思います。
ブリーダーごとの代名詞となっているMorphを知る事だけでも彼らの今までの経緯が伝わり、
今後の動向も推し量れる事でしょう。更に交流が持てたブリーダー達については、
その時のエピソードを交えながら私が感じた人物像として紹介したいと思います。
The Snake Keeper :
今年は展示されていたバンブルビーの美しさに注目を集めていたSnake Keeperですが、
ここの代名詞は何と云ってもモハベ、このMorph無しでは語れません。
発表当初は曖昧な表現系との事であまり高い評価を受けなかったMorphですが、
その後、優性遺伝が証明された事などから注目が高まり、
ノーマルの色彩変化に対する認識や、ハイポモハベ等の展開により確固たる地位を
築き上げてきたと云えるでしょう。
更に今年、Ralph Davis氏 作出のブルーアイ・ルーシスティックのキーでもある
ファントムとの遺伝的関連性が濃厚との情報を受けて、その地位と価格は
一気に上昇して行ったのでした。事実、今年のEXPOにて、殆どのモハベは
Not for Sale状態であり、その存在は最早、
目に焼きる事が精一杯のMorphとなっていました。
*ファントム解説:22号P80参考
ブリーダーのDan&Colette
Sutherland夫妻には1日目に行われた
インターノブ・コーポレーション主催による交流会でも大変お世話になり、
特に奥様には本当に親切な対応をして頂きました。
次から次へと繰り出される我々の質問に対しても、常に笑顔で対応頂き、
適切な回答とアドバイスを受けました。また、彼女から頂いたアドバイスの中に、
こんな言葉があったのですが
「繁殖にて良い結果が出せなかった個体はどうしたらいいかって?
私はそういう個体は皆ペットだと思って飼育しているわ」と云うものでした。
USのトップブリーダーと云う地位でありながら、繁殖を能率優先と捉えずに、
個体重視の考え方が出来る・・・、本当に生き物・Ball Pythonを愛している人故の
考え方だと感じました。 私はそんな言葉ひとつからも彼女の・優しさ・本質・人間性が伝わり、
本当に心から尊敬し、信頼できる人物と受け止めました。
Peter Kahl Reptiles:
ここの代名詞は、まだら模様が特徴のパイボール。
今年のブースは販売個体数を大幅に増やしたとの事で、
ホモ、ヘテロ併せて此れでもかーと云うくらいにパイ・パイ・パイ・・・の光景でした。
多少価格が安定してきたMorphとは云え、未だ高値安定のパイボールです。
そのパイボール様を柄や好みで選ぶ事が出来る買い方は、恐らくEXPO、
そしてこのツアーだけの醍醐味と云えるでしょう。
色彩にしてもさすが老舗の貫禄か、他のブース個体とは格段な違いを見せ付け、
パイボールに対するブリーダーの意地にさえ感じました。
Peter
Kahl氏はブースに何度も立ち寄る私達にとても友好的で、
特に我々が首から下げていたBp・Supplyのオリジナルペンダントヘッドが偉く気に入ったらしく、
2日目にもなるとブースに立ち寄る我々に、
「それはお前たちのオリジナルなのか?・・・俺に譲ってくれないか」と声を掛けて来る始末。
我々の
「これは我々のエンブレムだから、売る事は出来ないが、 このパイボールとの交換ならOKさ、どう?」
の返しに、わはははは!と笑いながらも鋭い眼差しで ギッ!と睨み付け、
「馬鹿言ってんじゃないよ!」ばりのファイティングポーズ。
我々にとっては粋な心の交流が出来たと、とても満足のいく瞬間でした。
そんなやり取りではあったのですが、彼の方でも悪い印象では無かったらしく、
2日目の夕食時に偶然居合わせたレストランでは彼の方から此方に向かって手を振ってくれ、
我々の「写真とらせて〜」攻撃にも嫌な顔一つ見せずに応じて頂き、
レストランの一角が突然の記念撮影大会となったのでした。
Ralph Davis
Reptiles:
広めの展示ケースにブルーアイ・ルーシスティック様が鎮座し、
テーブルのアクリルケースには何気にバブルガムと称したキャリコ個体が注目を集める等、
層の厚さを見せつけるブースでありました。
しかし、私はここの代名詞は何と云ってもプラチナだと判断しています。
プラチナはそのブルーアイ作出の大元の位置づけでもあり、その他の展示個体に於いても、
プラチナの派生系であるレッサープラッティーやパステルレッサープラッティー、
同系質と思われるバター等、その幻想的魅力が特徴の個体郡が殆どを占め、
自身の方向性を示す展示方法と感じました。
個人的にはラベンダーアルビノの幼蛇が展示されていた事から、
こりゃ、自身の目標でもあるラベンダー作出時に絶対役立つ筈と
「ラベンダーアルビノはベビーの時はどんな色彩なの?・・・じゃ目の色は?・・・
それじゃあ、ノーマル表現系と区別は出来るの?」と無我夢中で身を乗り出すと、
「OK,OKちょっとは落ち着けよ・・・」とばかりに一つ一つ的確に答えを聞かせてくれました。
答えのメモを取りながら心の中で、
おーっ!あのRalph Davis本人が俺の疑問に答えてくれてるよ〜と
感無量の時間を過ごす事が出来ました。
此れもまた、このEXPOツアーの醍醐味の一つと云えるでしょう。
私は雑誌や画像で見るRalph
Davis氏を厳つい気難し屋と捉えていたのですが、
実際の人物像は、笑顔の優しい気さくなアメリカンと云う感じでした。
我々側からの日本土産、Bp・Supply
オリジナルTシャツを渡した際も、
Raiph側から「じゃ俺のTシャツとの交換だ!」と返礼を頂き、
更には気前がいい性分なのか、「こっちはお前の彼女にプレゼントだ!」と
小さな黒い布を投げて寄こしました。此れはいったい何ですか〜?と広げて見れば、
トレードマークの冠蛇がにっこり微笑むプリント付の・・・
なんとも素敵なTバック! いったい誰に穿かせるんだよ〜と思いながらも
「サ、Thank you〜!」と笑顔で返すのが精一杯の自分でありました。
椅子に深々とドーンと座る姿はさすがの風格を感じますが、
USの洒落の利いた陽気な好人物と受け止めました。
Graziani Reptiles:
残念ながら日本では知名度が今ひとつなのですが、
USでパステル系と云えば先ず此処と云われるほどのブリーダー。
この機会に是非覚えて頂きましょう。
USではパステルジャングルに「Graziani Pastel」と固有名詞が付けられての
販売が成されるほどの信頼有るブリーダーで、
事実 Bp・Supplyが購入・飼育しているGraziani Pastelにしても
ブランアウト(暗化)の傾向に著しい違いは感じられ、
その品質の高さは我々の目でも確認しています。
普及種扱いされつつあったUSのパステル事情ではありましたが、
2002年発表の、シナモンパステルとパステルジャングルの交配から生まれた
ピューターの出現により、発表当時多くのブリーダー達から
???の烙印を押され続けてきたシナモンパステルに対しても評価は一新し、
価格も10倍近い跳ね上がりを見せる結果となったのです。
パステルジャングル・シナモンパステルを初期の段階から着目し、
自身の眼を信じてプロジェクトを遂行した経緯からして、
正に意地の1発逆転劇を作り上げた人物こそがGreg Graziani氏と云えます。
私が感じたGraziani氏の印象は「優しいパパさん」。
メンバーとは個体のやり取りもあった事から既に親しい間柄となっており、
初対面の私に対しても、とても紳士的に対応して頂きました。
その後も会場内を散策する折に、行く先々のブースにて遭遇したのですが、
そ都度、とても親切に接して頂き、私にとってはとても心強い存在と成っていました。
後に判った事なのですが、 彼は各ブリーダー展示の選りすぐり個体を
自身のHP上にある「Morph
Photos」(Ball Pythonマニアにとって此れは必見!)
に収める為の写真を撮っていた様なのです。
この項目を見て頂ければ伝わると思うのですが、
ここに登場するブリーダー達の名前を見るだけでも 、
如何に彼が多くの人達から垣根無く受け入れられている好人物かが伺える事と思います。
B.H.B.Enterprises:
数年前まで今1つ知名度が低かったと云えるB.H.Bですが、
今や代名詞となったピンストライプの発表と共に一気に急成長を遂げ、
今やUSのBall Python Forumに於いてもかなり高い評価を受けているブリーダーと云えます。
今回のEXPOに於いても此処のブースに来れば全てのMorphが
確認出来るのではないかと云うほどの個体郡を誇り、展示個体には代名詞であるピンストライプを
筆頭にブラックボール・パステルピンストライプ・バンブルビー・プラチナ・スピナー
・シナモンパステル・ピューター・等がタワー状に立ち並び、さながらブランドショップの店構え。
テーブルに並べられたアクリルケースに至っては、宝石の変わりとばかりに夢の様な
Morphがうじゃうじゃ状態で収められ、パステルなんかは可愛いほうで、
****様に、****様が、みんなごちゃごちゃ〜の同条件、とても日本じゃ考えられません。
「なんて罰当たりな事を・・・」と思ったのも決して私だけでは無かった筈です。
此方のブースも既にメンバーは旧知の仲と云う事で、若いスタッフからも
「おおっ、今年も来たのか!!」と握手・握手の歓迎振りで、
その後も今年の傾向を説明頂けたり、
お宝New Morphをケースから出して見、触れ、解説頂けると云うサービスのオンパレードに、
やっぱり、常連参加の実績はこうして報われるもんなんだな〜と感じさせられる場面でもありました。
(全てはメンバー方々のお陰です、本当にありがとうございました。)
Renaissance Reptiles:
去年、写真だけでの展示で話題をさらったパラゴンでしたが、
今年は生の姿でお披露目と云う形でした。初めて見た生「パラゴン」は、
月日の経過が個体のボリューム感を一層引き出し、
本当に申し分ない成体として見ることができました。
また、EXPO2日前に産まれたと云うスパイダー×モハベから誕生した
スパイダーモハベは衝撃的で、USの有名ブリーダー達も
代わる代わるに訪れると云う盛況振りで、誰もがその姿に驚嘆していました。
生まれたばかりの幼蛇の為、色彩の変化等に言及は出来ませんが、
今後の変異・進展に大いに期待が出来るMorphの誕生と云えるでしょう。
我々としても生まれたばかりの幼蛇の姿を眼に出来た事は本当に幸運な事といえ、
今後の発表による色彩の変化の確認も楽しみの1つとなりました。
Snakes
:
今年の隠れた主役が実は此処Snakes 。
まだ代名詞とまでの位置付けをするには早い感は有るのですが、
今年のNew Morphとして発表された、アイボリー・エボニー・アンバーは
何しろ注目株でした。どれも情報が交錯しており、この場では遺伝の形質や
図式を正確に解説出来ないのですが、どうやら同じく展示されていた遺伝性の
証明が成されたと云うグラニットがその作出のキーに有るらしく、
それを裏付ける様に会場内で確認できたグラニット個体(遺伝性の言及無し)は
どれも高値になっておりました。
また、此方も興味を抱き、Bp・Supplyが保有しているグラニット個体の写真を見せた処、
ブリーダー氏から「此れはとてもナイスな個体だよ、大切にした方がいいゾ!」
とのアドバイスを受けたのですが、もしかしたらその可能性を伝えたかったのかも知れません。
アンバーに関しては、先のGraziani Reptiles:「Morph Photos」にて
Amber-Pastelの表記が成られているなど、パステル系との絡みも予想され、
今後の発表・動向に注目といった処です。
2日目の夜
これまた恒例だという、インボイス作成現場にも立ち会ったのですが、
「生きる英名・学名辞典」こと・海老沼氏と冨水 明氏が山と詰まれたプラカップを前に
ハイッ、ёжйфчю ハイッ、ючфйжёと暗号化した
やり取りが永遠と繰り返されている。そして、いつもは優しい冨水 明氏もこの時ばかりは
「あっ、Bp・Supplyさんは学名python regiusって書くだけだから、もう解散しても良いですよー」
と冷たく言い放つ。それじゃあんまり寂しいじゃんと、熱い作業風景を横目に見ながら部屋の隅にて、
またまたBall Python談義を始める私達。
結局プラケースに入った選りすぐりの甲羅や手足のある生き物達、これすら目にしない形となったのです。
この様に2日間のEXPOを通し、私の目に映り、記憶に残った全ての個体達はBall Pythonのみでした、
広いEXPO会場がBall Python一色に染められ、
今でもひょっとしたらBall Python専門のEXPOだったのでは・・・と錯覚を起こすほど、
ブースの看板、個体、そしてブリーダーの顔に至るまで、
どの記憶を紐解いてもBall Python以外なにも思い起こせません。
とにかく私の目で見た本場USのEXPOはBall、Ball 、Ball の連続で、
私にとって最高の「空間」・「楽園」と云った感じでありました。聞くところによると、
甲羅・手足・棘のある生き物も相当数いたとの話です。
この世界の人間でしたら誰もが十分に楽しめる事は保障付き、機会がありましたら、
是非あなたもこのツアーにて、本場USのEXPOに足を運んで見て下さい、
きっとあなたにとっての「楽園」がそこに存在する筈です。
最後に、今回、旅先にて数々の難関をクリアし、
我々をこの「夢の楽園」に導いて下さった、(株)ニッサントラベルの太田さん、
インターノブ・コーポレーションの太田氏に、
心からお礼を申し上げます、本当にありがとうございました。
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