A 『regius』 Appetite Ball pythonの食性に関する記述

王者の食欲


独特のリズム「休眠」
「拒食」の汚名返上
「神話」を崩せ
餌の選択と給餌間隔
給餌のポイント
育成飼育とPower feedingの違い
Assist feedingについて見解
頑固者のお嬢さん

 

◇ 独特のリズム「休眠」

Ball Python特有のサイクルを知る事はこの「食」の項目でも
とても重要な事といえます。Ball Pythonは生後2年目の
冬季を迎えますと雌雄共に多くの個体が活動はするものの
採食をしないという「休眠期」を迎えます。
この独特のリズム「休眠」の存在を知る事により、
長らくBall Pythonの代名詞のように言われてきた
「拒食」に対する誤解が解消される事でしょう。
<レギウス・コメント>「休眠」とはBp・Supplyが
Ball Pythonの行動説明の為に使っている造語です、
継承項目にて「休眠期」=「繁殖期」=「食欲減退期」の図式を説明いたしますが、
飼育の説明をする上では「休眠」の言葉の方が説明し易いとの考えから使用しています。

◇「拒食」の汚名返上 

私はBall Python=「拒食」と云う図式が好きではありません。
確かにBall Pythonの話題で1番良く出る内容がこの「拒食」と云うことは確かです 、
しかしBall Pythonが拒食すると解釈されていた多くの原因は、
その殆んどが「休眠」と云うBall Python特有のサイクルが
認識されていなかった為の結果だと私は思うのです。
このサイクルを認識し、管理飼育されたCH・CB個体を飼育頂ければ
これほど「飼育し易いPython種」は他にはいないと私は判断しています

◇「神話」を崩せ

日本に於ける「蛇」飼育法は長い間コーンスネーク等を
代表とする「ナミヘビ」の飼育方法により浸透して来たと云えます。
その事を反映してか「蛇」に対する給餌の基本を
「1週間にマウス1匹」とし、 これが「神話」の如く
浸透してしまっている様にさえ感じます。そしてこの事が
不幸にもボア・パイソン種飼育には若干の弊害を
生んでしまったと云えるでしょう。実際にBall Pythonの場合、
この「1週間にマウス1匹」給餌では「繁殖」の根本的部分で
上手く行かない事と思います。繁殖を視野に入れた育成飼育を
行うのであれば、先に述べた「休眠」という
Ball Pythonの自然なサイクルを良く理解し、
幼蛇の年間を通した「成長期」及び、成体での「活動期」に、
適正且つ十分な給餌を行う必要があるのです。

◇餌の選択と給餌間隔

孵化したばかりの幼蛇のサイズはおよそ体長30p 体重60g、
最初の給餌から楽にファジーマウスを呑む事が可能です。
勿論個体差がありますので、個体ごとの適正な選択が必要な事は
いうまでも有りません。餌の選択は個体の成長に伴い、
ホッパーマウス、アダルトマウス、各サイズのラットへと変えていきますが、
将来の繁殖を踏まえた「育成飼育」を考えた場合、
早い時期からのラットへの切り替えが有効と云えるでしょう。
ラットはマウスと比べ脂質が多いことなどからエネルギー補給が
とても有効と考えられます。
成長に合わせてラットの適正サイズを与える様になりますと
自然に給餌間隔も長くなり、必然的に排泄の間隔も伸びる事に繋がります。
そうなのです、Ball Pythonは成長に伴いドンドン「経済的且つ楽な蛇」になっていくのです。

 

◇給餌のポイント

「幼蛇:孵化個体」

孵化からおよそ10日程で1回目の脱皮がおとずれますが、
脱皮後しばらくの間は攻撃行動(自己防衛の為)が目立ち、
落ち着くまでは捕食行動を取りません。およそ1ヶ月間は
様子をみながらの対応でも問題は起こりませんので、
決して焦りは禁物です。個体が落ち着いてからの給餌を心がけてください。

「幼蛇:Shop購入個体」

孵化まもない個体であり、健康状態が良好であればCH個体、
CB個体での対処はそうは変わり有りません。
しかし、CB個体の場合は出荷前に十分な餌が与えられ、
エネルギーの蓄積が万全な形の入荷がされているのに対し、
選別されていないCH個体では余り餌を与えられず、
エネルギーが消耗した状態で入荷する事が多いため、
給餌のタイミングは個体ごとに判断しなければなりません。
ガリガリのひん死状態の個体を購入することはまず無いでしょうから、
個体ごとの状態を的確に捉えた対応が必要と云えます。

「幼蛇:孵化〜1年半」

生まれたばかりの幼蛇の給餌には
最初は少し暖めたファジーマウス程度の大きさからが良いでしょう。
物怖じしない個体はこの時点で問題なく捕食しますが、
多くの個体は最初、餌(ピンセット)を怖がり
攻撃行動のみで終わる事が多いと思います。
捕食行動をとらない個体には、日にちをおいての再給餌のほか、
餌のサイズを小さくする、置き餌、活餌(ピンクマウスLサイズ〜ファジーS程度が最適)等、
個体にあった給餌方法を選択していきます。
たいていの個体は上記のどれかの方法にて初回給餌は完了し、
その後同様の給餌が進むなかで餌食いが上がってきまいたら、
解凍して少し温めた餌をピンセットから与える給餌に切り替えていきます。

孵化したばかりの幼蛇はかなりの頻度で餌を求める事と思います、
私はこの行為は幼蛇が早く大きく成長しようとするパイソン種特有の本能と判断し、
この時期は2〜3日間隔での給餌をおこなっています。
餌のサイズは胴の太さ以下を目安にしますが、
少し大きい位の餌を効率よく与えるようにしています。
貪欲に食べる幼蛇も欲求が満たされますと自然と捕食をしなくなり、
私の所では今まで吐くまで食べ続けた個体はいません。

<レギウス・コメント>
幼蛇の給餌で大切な事は、決して食べない個体に対して焦らない事です、
人間でもそうですが、健康な個体であれば食のリズムは個性と捉えるべきです、
幼蛇の場合1度リズムが出来上がれば
その後は順調に採食の方向に進む筈です。
返って食べないと言う焦りから個体に負担をかけ、
拒食に導いてしまう事の方がはるかに危険です。

私はBall Pythonの成長には孵化後1年半に於ける給餌のあり方が
もっとも重要との持論がある為、孵化時からある程度の大きさのある
Ball Pythonの給餌に対しては、
なるべく大きめの餌を与える方が良いとの考えがあります。
(勿論、個体の個性、状態を把握しての対応です)
環境温度をおよそ 昼間27°〜30℃:夜間26°〜28℃の比較的高温な
環境温度を維持してあげる事により、
幼蛇の年間を通しての成長期を活かすことが出来ます。
一旦、採食の方向に進んだ幼蛇は、とても旺盛な食欲を示す筈ですので、
この時期には給餌の頻度も高めるようにするとより効果的と思います。
私は消化状況(排泄物の確認等)の確認や、
個体の状態を個別にチェックしながらですが、
およそ4日おきの間隔で給餌をしています。
無理な給餌は事故や状態を崩す要因となりますが、
Ball Pythonは悪食な蛇ではないので満腹感を感じれば、
自然に採食(捕食行動)はしなくなるとの考えからです。
与える餌は、
ファジーマウス〜ホッパーマウス〜ピンクラット〜ファジーラット〜ホッパーラット
へと順次切り替えて行きますが、
Ball Pythonがアダルトサイズになった時の事を考え、
私の所では早めにラットへと切り替える様にしています。
餌のサイズが大きくなるに従い、給餌の間隔を伸ばしますが
それでも食べる様であれば5〜7日間隔で与えて行きます。
餌の適正サイズですが、Ball Pythonは頭部が大きい為
思ったよりも大きいサイズを呑むことが出来ます。胴回り程の大きさであれば、
巻きつくほどのサイズでも問題はありません。
大きな餌にも動じない個体には出来るだけ大きな餌に慣らして行くと後が楽になります。
逆に臆病な個体には小さめの餌を回数でカバーしながら与えて行きます。

<レギウス・コメント>1年半の成長過程で餌食いの良し悪しにより、
親子ほどのサイズの違いが出ることもありますが、
人間も様々なタイプが存在する様に、その違いも1つの個性と受け止め、
個体ごとのリズムで育てる事が重要です。

「亜成体〜成体」

2年目の冬季には(11月〜4月)いわゆるBall Python特有のリズム「休眠期間」が訪れ、
雌雄共に食欲減退傾向が見られるようになります。
これは先に説明した通り、「拒食」とは意味合いが違いますので、
無理に食べさせる必要はありません。
活動期に十分なエネルギーの蓄積が成られている個体であれば、
たとえ6ヶ月以上食べなくても心配はいりません。(状態を崩しての拒食は別問題です)
そこで、上記のことで重要になってくるのは活動期間に於ける給餌となります。
Ball Pythonは約半年で年間のエネルギーを摂取する訳ですから私は食べる時期には
個体が欲するだけの量を与えても問題ないと判断しています。
Ball Pythonは1回の給餌に何頭も続けて食べることは稀な為、
少し大きいかなと思う位の餌を効率良く与える事が、成長へのカギとなります。

<レギウス・コメント>
この様な給餌を行うには幾つかの注意点があります。
餌のサイズや給餌間隔の見極めには
・個体の大きさ(頭部や胴回りサイズ)
・個体ごとの性格・餌の消化状況(糞尿等の確認)など様々な部分を
 観察にて読み取り判断する必要があります。
 また、給餌後の急激な温度低下は食滞を引き起こす等の事故の原因ともなりますので、
 温度管理等に対しても注意が必要です。

<参考>
※CB個体     captive bred 飼育環境に於ける繁殖個体
※CH個体     captive hatched ワイルド採取個体の産卵ハッチ個体や採取ストック場でのハッチ個体

 

◇ 育成飼育とPower feedingの違い

私は過剰なPower feedingは個体に良くない結果を生む危険があると思っています。
この様に書きますと、では、今まで頻繁に餌をやる、大きめの餌に移行すると言っていたのはなぜ?
と思われるかもしれませんが、私はBall Pythonの飼育に於いては時期によりその行為が
必要であると判断し実践しています。
また、その行為は「Power feeding」とは意味合いが違う「給餌」と解釈しているのです。

「幼蛇に対する給餌」

Ball pythonは成長期の育成が性成熟を迎えた時のサイズに大きく影響する為、
幼蛇の時に見せる貪欲な程の捕食行動は
Ball python自身がより早く成長しようとする「本能」が成す行為と私は捉えており、
この時期には消化負担を与えるような大きすぎる餌でなければ、
個体の体つき(膨らみ)に注意しながら十分な餌を与える必要があると判断しています。

「休眠明け」

Ball pythonは休眠期間が明け、一旦採食状態に入りますと、
それまでに消耗したエネルギーの回復を図るかの様な、
とても旺盛な食欲を見せます。この時期は体が欲求している採食な訳ですから、
個体が求める量を与える必要があると判断しています。

この様に必要時の必要量は無理な給餌(Power feeding)とは違うと言う観点から
私はこの給餌スタイルを続けています。
成長した個体の餌食いは割りとのんびりしたもので、
貪欲な食欲を示すのは年に数回の事です。
半強制的に過剰な餌を与える事は絶対に良い結果を生みません。
また,私の経験上での話ですが、
Ball Pythonは自然な給餌による過剰な採食(捕食)はしないと思っています。

◇ Assist feeding についての見解

日本語で表現すると「補助を加える給餌」とでも言うのでしょうか、
私の解釈は蛇に餌を咥えさせてあげ、自力で呑みこませると言う、
あくまでも「咥えさせる」と言う補助作業のみを行う給餌方法と思っています。
専門的にはforce feeding(強制給餌)の1つとされるようですが、
私は下記の場合にはとても有効な結果を得られた経験から、
条件付きではありますが、独立した1つの給餌方法と捉えています。
その条件とは、幼蛇の範囲であり、
あくまでも、孵化個体では餌を認識させる必要がある時、
幼蛇の場合では体力回復目的の一時的処置としての場合です。
タイミングとしては、孵化後の幼蛇では、
一定期間を経過後(およそ1ヶ月)も捕食行動をとらず衰弱の可能性が出た様な場合です。
孵化個体であっても余りに長い間採食の方向に導けない場合等は、
病気等の兆候が見られない限り、早めの判断・対処が必要だと思います。
幼蛇(WC・CH・CB個体を問わず、餌を捕った経験のあると思われる個体)に対しては、
極度の衰弱や脱水症状が見られず、
飼育環境も万全であるにも関わらず捕食行動が見られない場合。となるのですが、
問題点が1つあります。この2つ目の場合、
どの時点でこの判断を行う事が有効かと言う見極めが難しい点なのです。
衰弱や環境の問題でない場合、状態の良いうちに試すべき他の給餌方法は数え切れません、
考えられる有効な給餌方法(餌の種類や与え方等)を試し、
それでも良好な前兆が見られないのであれば、
この給餌方法にて、消化器官の活性を促し、
体力の回復を計るなどして捕食を導く為のステップとして行うのであれば、
とても有効性があると捉えています。

<レギウス・コメント>
孵化〜幼蛇の間と限定した理由は、
Ball Pythonの成体サイズでは「咥えさせる」行為時の抵抗力が幼蛇の比ではなく、
扱い方によっては事故が起こる可能性が有ると判断した為です。
有効性については同じと思いますので各キーパーの技量、判断に委ねますが、
先に述べたように餌を捕らないと言う事には、様々な要因が考えられます、
まずは問題点の究明を第一とお考え下さい。
また、健康状態の判断がつかない場合などは速やかに専門獣医師に
診断して頂く事をお勧めします。

◇ 頑固者のお嬢さん

「1年半の拒食」

先日 約1年半拒食を続けていたXLサイズのワイルド個体が餌を捕りました。
この個体はあるショップさんがBall pythonの成長した姿を
幼蛇購入のお客様に見て貰おうと,「とにかくXLサイズを!」とのオーダーのもと
輸入された数頭の中の1頭でした。私も今までXLサイズの入荷はかなり目にして来たのですが、
そのどれよりもボリューム感を受けた個体であり、
たまたま居合わせたUSのブリーダーにも「Good female!」と言う言葉を頂くほど見事な雌個体でした。
ちょうど 良いサイズの雌を探していた所でしたので、ワイルドと言う不安はありましたが、
これだけのボリュームがあればゆっくりと取り組めると思い購入を決めたのでした。(2000年 6月)

個体導入から1ヶ月間は環境への順応にあてる事に勤め、
ダニの駆除なども様子を見ながら時間をかけて行いました。
8月の後半、通常 冬季を前に食の上がる頃を見計らい、
給餌を試みたのですが食べるそぶりをまったく見せません。
色々と餌の種類を変えてみたりしましたが
(マウス ラット ヒヨコ サイズの変更 活餌等)
その年は採食する事なく休眠期間に入ってしまいました。

2001年、休眠も明け活動期に入ってからもその状況は変わりません。
9月になってもうすぐ今年の休眠期を迎えてしまうという頃、
たまたま 六本木R(現在は上野に移転)のS店長と
この個体の話しになり
「やっぱり、WCのBall Pythonには*****が有効なんですよね〜」
と云う共通の意見でまとまり。
後々の入手を考え、迷っていた禁断の餌「*****」をいよいよ試すことにしました。
やはり初めは活餌で試す方が良いだろうと、
そのままケージに「ぽいっ」と放ちましたが弱らす事をしなかった為、
ケージ内をぐるぐると走り廻るばかりです。「これではダメだ、弱らさなければ」と思うのですが、
動きが速くケージから取り出す事が出来ません。
そんな動きのなか*****が雌個体が潜むシェルターの内にすーっと入った瞬間です、
自分の頭部ほどの大きさの小さな*****を瞬時に「ズバッ!」と捕らえ、
そして「グルグルッ」と巻きついたのです、
私の所に来ておよそ1年半、これが初めての「捕食の瞬間」でした。

「*****の正体とは」
その正体は「ジャービル」でした、いわゆる砂ネズミです。
結局、このワイルド個体は私の元に来てからの1年半、
出荷時期を考えると、
およそ2年近くを与えた餌(マウス・ラット)を食べた経験の無い生き物として警戒し、
餌としての記憶があったのだろう小型の砂ネズミ"ジャービル"を捕らえたのでした。
人間が順応させようと言う思惑をかわし本能にしたがったのか?
人間(私)の完敗でした。

S店長との話の中で、ラットはどことなく甘い匂いがし、
ジャービルはほこり臭いとの話がありましたが、
確かにラットは脂質のせいか?乳臭いような匂いがします。
しかし、この様な違いだけで他種の餌に対し警戒心を抱き、
これだけの期間拒食し続けるとは‥‥。
また、驚いたことにこの採食の2日後、
ごく小さな糞を排泄し、さらに3日後には脱皮をしたのです。
この糞は捕食した餌のものとは考えにくい為、代謝が高まり、
滞留していた残留物が排泄した物と思われます。
脱皮は時期が重なった為とも思いますが、
逆に脱皮前にも関わらず捕食するとは‥‥。
<レギウス・コメント>今回の長期に渡る対応は
この個体の大きさがなせる行為だったと思いますが、
30年以上も生きる事の出来るBall pythonの生命力を再確認した思いです。

「いったい何が違うのか?」

初めての捕食から1週間、シェルターから顔を出し、
外の様子を伺う行動が見られた為、
深夜の暗い状態での給餌を試みました。
人肌程に暖めたホッパーラットをトングで挟み、
距離をおいてゆらゆらと動かすと明らかに関心を示し、
シェルターから這い出て来て、そう少しでラットに触るのではと思う位の距離で、
舌をチョロチョロと動かします。
いよいよ「頑固者のお嬢さん、陥落か!」と心を躍らせる瞬間です。
・・・が、そこから先の「ズバッ!」が来ません?明らかに
興味を示して近づいては来るのですが、そこから先が・・・。
痺れを切らしてこちらから餌ラットをスーッと近づけますと、
なんとシェルターにクルックルッと戻ってしまいました。
結局この日はその後の進展も無いまま終ったのでした。
3日後、時期的にも早く餌を捕って欲しいとの思いから、
再度 ジャービルを試みるしかないと、
今回は活餌では動きが速く問題もある事から、
初めから絞めた置き餌で試す事にしました。
シェルターの前にソーッと置いて見る、すると辺りの様子を伺い、
顔を近づけたかと思うと、捕食と云う言葉とは程遠い、
ゆっくりとした動きでなんの躊躇もなく呑み込んで行きます。
まるで、のんびり屋のCB個体が食べる様に・・・。
ま、食べ方などこのさい関係はありません、とにかく捕食(採食)?
してくれたのですから。やはり1度採食した事から、
徐々に空腹感に襲われて来ての反応なのでしょうか、
ただこんな自分の頭部ほどの小さい餌を食べた所で、
とても満足できる筈は無いと思い、
今回順調な給餌が進んだ時の為に用意していた"隠し玉"、
倍サイズは有るだろう「別種ジャービル」も試す事にしました。
捕食した餌を飲み込むのを確認しながら、 その"隠し玉"を急ぎ絞め、
暖かさが伝わる新鮮なこの別種のジャービルをゆっくりと差し出しました。
案の定、採食後の興奮もあり、すぐに反応し近づきます・・・近づきますが・・・。
食べません。何故?そのまま3時間程、
放置しましたがシェルターに戻ってしまった『頑固者のお嬢さん』は全く動こうとしもません。
種類が違うとは言え、同じジャービル、いったい何が違うのか?どこが違うと云うんだ!
それともタイミングの問題なのか? この『頑固者のお嬢さん』かなり手強い。

「キーワードは匂い!」

2度目の給餌から1週間、様子を見ているのだが余り動きに変化は見られない。
しかし、お気に入りの餌に対しては反応があるのだから明らかに空腹の筈である。
今までの経過を整理すると、いくつかのキーワードは得る事が出来た。
まず、活餌でも置き餌でも問題はないと云う事、さらに暗がりの中での給餌から、
餌の色やサイズの問題でもないと言う事。
しかし、問題はラットに対する拒絶はともかく、
同じジャービル種に対しても反応に違いがあった事である。
ある程度の長い期間、自然界で生きた者が携える警戒心からなのか、
本能が「記憶にない餌」に危険信号を送る為なのか? 
ただ、3回の給餌により明らかに反応が見られる様になった事も確かである。
あとは餌であると言う認識を個体に植え付けてあげるだけなのだが、
やはりキーワードは『匂い』と言う事か‥‥。

4回目の給餌には「キーワード」を確認する為、
これまでとは違った条件での給餌を試みる事にする。
まず、照明は点けたままの明るい状態、
餌はあえてラットのホッパーサイズを使い、トングで挟んでの給餌を試みる。
ただ1つのポイントは絞めたラットを唯一食べるジャービルの床材(糞尿)でまぶし、
その『匂い』を移行させると云う点である。
多少は「匂い」に違和感はあると思うがキーワードの確認には返ってちょうど良い。
シェルターを退かし、初めは個体との距離をおきながら、
"ゆらゆら"餌を振り個体の反応を見る、「頑固者のお嬢さん」は舌を盛んに出し入れし、
餌としての確認する様な仕草を見せたが、自分からは近づく素振りはを見せない。
そこで此方から段々に"ゆらゆら"と近づけてみる、
そして個体の鼻先10cm・・・。「ズバッ!グルグル!ギュゥー!」余りにも突然の衝撃!
まさに『捕食』の文字そのものの迫力!いつも見慣れている光景だが何故か嬉しい・・・。
やはりキーワードは『匂い』と言う事か。

<レギウス・コメント>
今回の捕食(採食)までの長期に渡る取り組みは、
たまたま、個体が状態の良いXLサイズであったからと云えます。
全てにこの様な試みを繰り返し、自発的捕食を待つ事が出来る訳ではありません。
但し「食べない」という理由には多様な要因が隠れており、
食べさせるための方法、条件も多様であると思うのです。
最終的手段の前にはいくつもの方法があると言えるのです。

「最終章」

2000年、6月の購入から数えて約3年、
2003年 7月、長かった「頑固者のお嬢さん」との
長きに渡る戦いにとうとう終止符が打たれました。

例年、私の所では春先の暖かさが感じられる頃になるとまず、
亜成体に動きがみられるようになります。
水を良く飲むようになり、脱皮後2~3週間の内にはその年の給餌が始まるのです。
成体に於いては個体ごとに多少のばらつきはあるものの、
概ね初夏を迎える頃までには同様の流れで採食が始まります。

2003年 5月、「頑固者のお嬢さん」が今年最初の脱皮を終え、
給餌の時期を迎えました、例年の成体の反応時期を考えますと、
少し早い様に思いましたので、
新鮮な水のみの補給で6月は様子を観るだけに留まりました。
7月に入るとシェルターから外を覗う様子が頻繁に観察できた為、
いよいよ給餌を試みる事にしました。
去年すでに「匂いの細工をしたラット」に反応を示していましたので、
今年は匂いの細工をする事も無く通常の冷凍ラットを人肌程度に
暖めただけの給餌を試みる事にしました。
夕方、照明が落ちた薄暗さのなか、
鼻先を覗かしているシェルター開口部に無造作にラットを近づけました・・・。
「ズバッ!」・・・あっけないまでの捕食行動!(笑)
今までの長きに渡る戦いが嘘のような迫力ある捕食振り。
「ふぅ〜、これならもう大丈夫だな」と言う安堵感に浸りました。
其の後も順調に給餌は進み、今までの苦労が嘘のような食欲振りです。
ラットを完全に餌と認識しての事なのか、
飼育環境の慣れなども影響しているのか定かではありませんが、
これで「頑固者のお嬢さん」との長きに渡る戦いに終止符が打てたと云えるでしょう。

「総括」
時間と歳月を掛けての今回のワイルド個体の飼育だった訳ですが、
結果的に色々と学ぶ事が多かったのは事実です、
餌の嗜好や選択・様々な給餌方法・個体ごとのサイクルなど・・・。
今後のBall飼育の上で大変貴重な糧となりました。

Bp・SupplyブリーダーメンバーがUSで得た情報の中に
USブリーダーのこんな言葉の報告があるのですが、
「全ての生物は本来、内在性リズム、行動、生理機能を築き上げているものであって、
ワイルドの成体導入にはこの「体内時計」に合わせた飼育・繁殖を行う事が
とても重要な鍵となるだろう、もしこのような個体を飼育場所の年間サイクルに
合わせようとするならば、数年はかかるかも知れない・・・」
と云うものでした。
この言葉を借りれば、私の「頑固者のお嬢さん」も
長年に渡り築き上げたアフリカで備わった「体内時計」を3年という月日を使い、
ゆっくりと調整していたという事なのでしょうか?
Bp・Supplyでは現在、WC個体導入に際しての、
立ち上げ・捕食行動誘導等の、解決策を何通りか検証中であり、
徐々に良い成果も得ていますが、この「体内時計」の調整という部分では
USの報告等と併せ、1つの検証を終えたと言えるでしょう。

 

 

 

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