マノン (英国ロイヤル・バレエ団)

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99年4月23日(金)

NHKホール

 

音楽: ジュール・マスネ
オーケストレーション・編曲: レイトン・ルーカス, ヒルダ・ゴーント 

振付・演出: ケネス・マクミラン

美術: ニコラ・ジョージアディス    照明: ジョン・B.リード

指揮: アンソニー・トワイナー    演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 

マノン: シルヴィ・ギエム     デ・グリュー: ジョナサン・コープ

レスコー: イレク・ムハメドフ     ムッシューG.M: クルストファー・サンダース

レスコーの情婦: クリスティーナ・マクダーモット     マダム: ロザリンド・アイル

看守: ウィリアム・タケット    乞食のかしら: ジュスティン・メスナー

高級娼婦: ベリンダ・ハトレー, クロエ・デイヴィス, ジェーン・バーン, ジリアン・レヴィ

紳士: ユベール・エサコフ, リュー・シ=ニン, 佐々木陽平

客: アラステア・マリオット, トーマス・ホワイトヘッド, モーリス・ヴォデゲル=マッツェン, ウィリアム・タケット, リューク・ヘイドン

売春婦: マルタ・バラホナ, ジュリー・ラック, ケイト・ラーター, ミリー・ロウ, 前田真由子, ローラ・モレーラ, マリアネラ・ヌニェス, リーナ・パルマー, マリア・ピエトラ, サマンサ・レイン, ジェニー・タッターサル, メリッサ・ウィシンスキー

老人: オリヴァー・シモンズ    宿の主人: ヴァネッサ・パルマー    下女: 前田真由子, ヴァネッサ・パルマー

 

同じ東京でルジマトフが踊っている舞台を断念してまで見にいった公演。
その甲斐がなくては困りますが,期待に違わぬよい舞台だったと思います。

映像では見たことがありましたし,ガラなどでパ・ド・ドゥは何回も見ていましたが,舞台で全幕を見るのは初めて。
「ついにこの有名な作品を見られたわ〜。それも本家ロイヤルで」という感激もありましたし,出演者もとてもよかったです。

ギエムは,(かなり驚いたのですが)清純な少女のマノンでした。
「媚態」という印象が全くなくて,マノンという人物に私が抱いていたイメージである「魔性の女」ではなかったです。そして,ガラでの彼女自身の舞台から感じた「自分の意思で何かを得ようとする女性」にも見えない。伸び伸びと(わがままに?)育って,自分のほしいものをがまんすることができない素直な少女。
この清楚な美しさにデ・グリューがすべてを投げ捨てて夢中になるのももっともだと思いましたし,次々登場する好色なおじさんたちにとっては初々しい生娘のように見えて魅力的なのだろうとも思えました。

彼女にとってデ・グリューは,もちろん大好きな恋人。でも,束縛されたくはない。煌びやかな世界も覗いてみたい。
そんな軽い気持ちがとんでもない結果を招いて,すべてを失ったとき彼女に残っていたのはデ・グリューの愛だけ。だからそれにすがるしかなかった。そんな印象。
うまく説明できないのですが・・・逆境で彼への愛が深まったとかったとか,最後に彼への愛に殉じたとか,そういう印象ではなかったの。それしかないからそうしただけ,というか・・・最後まで少女のままで死んでいったというか・・・。

コープは,ソロや舞踏会でマノンを遠くから見るときの表現などは映像のダウエルほど印象的ではない,というか地味な印象だったのですが,パ・ド・ドゥになると断然輝くのだなー,と思いました。
かなり柔弱な感じが(いや,あれだけ難しそうなパ・ド・ドゥを踊るのだから実際はそうではないのでしょうが),「この愛だけに生きる」という感じを生んで,たいへん感動的なデ・グリューでした。

ムハメドフのレスコーも名演でしたわ〜。
たしか既にロイヤルを退団していてゲスト扱いで参加したような記憶があるのですが,見られて幸運でした。
踊りもお芝居も達者で,2幕での酔っ払ってのソロとパ・ド・ドゥは,ほんとうに楽しかった♪
そして印象的だったのは死に際の情けなさ。存在感はあるし,身体は重厚だし,「飲む・打つ・買う」三拍子そろった実に立派な悪役だと思って感銘を受けていたら,あらまー,最後はあっという間に殺されてしまって,しょせんは小悪党だったのね〜,とまた感銘を受けました。(つまり,死に際を引っ張る過剰な演技をしないのがよかった)

周りのダンサーにまで目を配る余裕がなかったのですが,さすがロイヤルのお家芸という感じで,皆さん演技力があっていい舞台だったと思います。

作品としては,3幕がちょっと・・・。
2幕までは緊迫感があってとても引き込まれただけに,細切れというか,段取りに従って話が進むだけというか・・・そういう感じを受けてしまいました。沼地のパ・ド・ドゥは刹那感があり,特にコープは「マノンが死んだらこの人も死んでしまうに違いない」と思わせてくれて感動的でしたが,その前までが・・・。

(03.10.23)

 

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シルヴィ・ギエムほか

※ギエムのドキュメンタリー映像。『マノン』寝室のパ・ド・ドゥが収録されています。

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マノン

英国ロイヤルバレエ,ペニー,ダウエル,ウォール

※英ロイヤルによる全幕の映像

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