東急リバブル会社創立35周年記念 the20thリバブル・クラシックコンサート
 ORCHESTRA with BALLET “ROMEO & JULIET”

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2007年11月3日(土・祝) 13:30/18:00

オーチャードホール

 

指揮: 渡邊一正     バレエ: 牧阿佐美バレヱ団     オーケストラ: 新日本フィルハーモニー交響楽団

 

この公演は,一般公募? の全席招待だったらしいのですが,公演があること自体を知ったのが約1週間前。バレエ団にキャストを聞いたところ,なんと小嶋さんがティボルトだというではありませんか!!!
慌てて四方手を尽くた結果,親切な方のおかげで何とか昼夜とも見ることができました。(ありがとうございました〜)

会場に入ると,通常のバレエ公演と異なり,3方の壁はコンサート用の反響板を使った舞台設営で,幕は空いたまま。通常の舞台の上にはオーケストラ用の椅子等が配置され,オーケストラピットと前方席5列をつぶしてバレエ用の舞台が用意されておりました。

 

第1部 ギフト・オブ・オーケストラ

ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲

えーと,あのですね・・・オーケストラの演奏している様子というのは,なにを楽しめばよいのか,私には一向に・・・。
せっかく前方が空いているわけだから,ベジャール・・・でなくてベジャールもどきでいいからバレエを踊ってくれないかなー(東京バレエ団が踊るとなおよい),と思いながら時間をすごしました。すみません。

 

モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』

せっかく前方が空いているわけだから,バランシン・・・でなくてバランシンもどきでいいからバレエを踊ってくれないかなー(新国立劇場バレエ団が踊るとなおよい。真ん中が小嶋さんだとさらによい)と思いながら時間をすごしました。すみません。

 

第2部 オーケストラ・ウィズ・バレエ

プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』より

・ イントロダクション

・ マスクの踊り(ロメオ,マキューシオ,ベンヴォーリオ)

・ 舞踏会(クッションダンス)〜ジュリエットとロメオの出逢い

・ バルコニーの情景

・ 道化の踊り

・ 決闘〜マキューシオの死(と書いてあったが,「マキューシオの死」は上演なし)

・ 墓場のシーン

ジュリエット: 伊藤友季子     ロメオ: 逸見智彦

ティボルト: 小嶋直也     マキューシオ: 中島哲也     
ベンヴォーリオ: 今勇也     パリス: 京當侑一籠     
キャピュレット卿: 本多実男     キャピュレット夫人: 坂西麻美     
道化の踊り(記載がなかったので,たぶん,ですが): 青山季可, 塚田渉, 徳永太一, 石田亮一, 清瀧千晴

 

当然ながら? セットなしでの上演。
踊る面積も狭いですから,舞踏会の客は4組だけですし,道化の踊りや決闘シーンは,広場の人々なしで踊られました。
バルコニー・パ・ド・ドゥは,2人の独白が続く辺りまでは,上手のドアからジュリエットが,下手のドアからロメオが交互に何回か現れてソロを踊るように変更されておりまして,おお,うまく処理したな〜,ロマンチックな雰囲気出ているな〜,と感心。

なお,話をひっじょーに大幅に端折っての上演だったからでしょうか,三谷芸術監督が現れて,解説のようなことを話しておりました。
もちろんアナウンサーのようにはいきませんが,最初に指揮者とオーケストラを紹介するなど気配り? がありましたし,クッションダンスについてソフトバンクの携帯電話の広告を話題にするなど笑いをとるのにも配慮していましたし,原稿なしでしたし,専門外の分野にしては上手だな〜,とこれも感心しました。

 

主役の2人は,とてもよかったです。

伊藤さんは,初々しくて可憐。ジュリエットの白い衣裳がとーってもよく似合っておりました。
そして,逸見さんも白い衣裳に赤いマントがすてきに似合う貴公子ぶり。3月に全幕で見たときは,演技が単調でドラマ性が薄いのに不満を持ったのですが,抜粋版ではそういうシーンは割愛されていますので,全然問題ありません。

清らかな少女とロマンチックな風情の青年が出会い,愛を誓い,悲劇的な死を迎える。
ロメオの成長がどーしたとか,ジュリエットの少女から女への成熟がこーしたとか,そういう要素を考えなくてよい舞台の進行の中,純白で甘やかで美しい恋人たちでありました。

 

小嶋さんのティボルトは,似合うだろうなー,と予想していた通りの似合い方でした。
王子役では欠点になる「目つきの悪さ(ごめん)」と多くの王子役で培った立居振舞のノーブルさが結びついて,陰険そうで尊大なお貴族さま。腹に一物ありそうで,叔母との怪しからぬ関係はもちろんのこと,キャピュレット家の実権を握り,従妹と大公の甥との結婚を足掛かりに大きく野望を・・・。
って,違う話ですね,これでは。まあ,要するに血の気の多い粗暴犯というよりは,冷血な権力者に見えたということです。全幕で見ると,どんなかしら〜? 見る機会があるかしら〜?

マキューシオとの決闘シーンは,初役だからでしょうか,それとも今回の舞台の性質上「怪我したりさせたりは避ける」を最重視したのか? 慎重に踊っている感じで少々迫力に欠けましたが,目下の相手のマキューシオを平然と後ろに回しながら,離れて立つロメオを剣で指して凄む様子がとってもかっこよかったです〜。さらに,2回ほど回転しながら脚を振り上げる振付があって,その脚の高さ,爪先までの美しさはもう・・・。

すばらしかったのは舞踏会。
常より少し顎をそびやかして,両手を重ねて左の腰の前に置いての立姿の倣岸。クッションダンスでのクリアで滑らかな動きとポーズするときの身体の伸び。キャピュレット夫人の足もとに跪く姿の洗練。仮面姿のロメオを咎めるときの不穏な存在感。

彼は優れたテクニックのダンサーで,浮遊感ある跳躍と垂直を体現したかのような回転で私を夢中にさせたわけですが・・・そんなものはなくてもいい。(もちろん,あればなおよいが)
立っているだけで美しい。歩くだけで美しい。身を翻すだけで美しい。舞台姿に一瞬たりとも隙はない。それだけで,見る価値がある。そう思わせてくれました♪♪♪

 

ほかのダンサーは,3月に見たときと同じような印象ですが・・・道化の塚田さんが,半年前よりずっと衣裳に違和感がなかったのが謎。スリム化したのでしょうかね?
それから,中島さんは上手になったと思います。ロメオ・ベンヴォーリオと3人で踊るシーン,昼は逸見さんよりきれいだったなー。(夜は,やはり逸見さんはさすがだ,と。スロースターターなんですかね?)

 

この版のラストは,ラブロフスキー版を踏襲しているのでしょうね,黒いマントに身を包み,蝋燭を手にした両家の人々が2人の横たわる寝台に歩み寄り,和解を暗示して終わります。(ちなみに,本来の演出では寝台がせりあがるという荒業も出るのですが,今回は省略されていてたいへん結構でした。まったく,あれはないよねえ)
昼の部を見ていて,最後に舞台に登場する人数がけっこう多く,不審に思いました。舞台が明るくなってその疑問は解決。抜粋の都合上生き延びたティボルトや蘇ったマキューシオや道化のプリンシパルや・・・も黒いマントを手にして立っておりました。
そうなると気になりますので,夜の部は「小嶋さんはどこだ?」と。たぶん,モンタギュー家の先頭にいたのがそうだったのではないかなー?

いや,まあ,どうでもいい話ですが・・・ついでにもう一つ。
カーテンコールでの小嶋さんは,ティボルトな雰囲気で笑顔を見せず,たいそうかっこよかったです。

と思っておりましたら,昼の部で引っ込むときに,にわかに列から離れてすたすたと前方に歩み寄って,ロメオが脱ぎ捨てた赤いマントを拾い上げてから下がっていきました。「そんな下働きまでせんでも」とは思いましたが,うふふ,あい変わらず働き者ですわね〜。(ちなみに脱ぎ捨てた当事者も勤勉でして,ジュリエットが自決に使ったナイフを拾って退場)

夜の部では,さらに,もうひと働き。
前方席だったので足もとが見えなかったのですが(ほんとにオーチャードは困ったホールだ),ロメオが引き剥がしたジュリエットの死装束のベールを隣に立つ坂西さんが踏んでしまっていたようなのですよね。それを,ティボルト風に愛想のない表情のまま委細構わず引っ張り上げて,既に腕に巻きつけてある黒いマントとともに収納。もちろんロメオのマントもまめまめしく回収して,いっぱいの荷物を手にして去っていきました。

マントの腕への巻き付け方,拾い上げ方等は改善の余地大いにあり(←対ルジマトフ比)とは思いましたが,いやもう,なんと言えばいいのでしょー,そうですねー,「だからあなたが好きなのよ」なんて言ってみたくなる姿だったのでした♪

 

というわけで,大いに堪能しました。
「マキューシオもすてきだけれど,ティボルトも見たいなー」と思っていたのが,意外なほど早く実現したのは幸運でした。ロメオとの決闘シーンが割愛されていたのは残念でしたが,上演時間を考えればやむを得ないことですし。
とはいえ,今度は全幕で・・・となるのがファンというもの。牧が次にこの作品を上演するときには,なんとか実現してほしいものです。(でも,マキューシオも捨て難いよなぁ)

(2007.11.24)

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