くるみ割り人形(新国立劇場バレエ団)

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04年12月25日(土)

新国立劇場オペラ劇場

 

振付:マリウス・プティパ, レフ・イワーノフ
台本:マリウス・プティパ(E.T.ホフマンの童話による)
改定振付:ワシーリー・ワイノーネン
演出:ガブリエラ・コームレワ

音楽:ピョートル・チャイコフスキー

舞台美術・衣装:シモン・ヴィルサラーゼ
照明:ウラジーミル・ルカセーヴィチ

指揮:渡邊一正  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊

マーシャ: 西山裕子     王子: マイレン・トレウバエフ

ドロッセルマイヤー: ゲンナーディ・イリイン

シュタリバウム: 内藤博     シュタリバウム夫人: 湯川麻美子     フランツ: 大和雅美

道化: グリゴリー・バリノフ     人形: 高橋有里     黒人: 江本拓

おじいさん: 嵐一正     おばあさん: 杉崎泉

ねずみの王様: 市川透     くるみ割り人形: 伊藤隆仁

雪の精(ソリスト): 寺島ひろみ, 厚木三杏

スペイン: 楠元郁子, 冨川祐樹     東洋: 湯川麻美子

中国: 遠藤睦子, 奥田慎也     トレパック: 本島美和, 丸尾孝子, 市川透 

パ・ド・トロワ: 高橋有里, さいとう美帆, 吉本泰久

ばらのワルツ: 厚木三杏, 大森結城, 西川貴子, 寺島ひろみ, 江本 拓, 陳 秀介, 冨川直樹, 中村 誠
(交互出演だったので,記憶に頼って記載しました。もしかすると西川貴子でなく川村真樹だったかも?)

 

いつもどおり「きれいだなー」と思い,(小嶋直也さんがいないから)いつも以上に「盛り上がらんなー」と思いつつ,まったり〜,のんびり〜,と楽しい時間をすごしました。
(例によって悲しくなる瞬間もありましたが,舞台を楽しむ妨げになるほどではない)

 

マーシャの西山さんは,1幕は,周りのダンサーに埋もれてしまって地味だわ,踊りは音楽に乗れていないわ,演技が不自然だわ(くるみ割り人形の首がもげてしまって泣いているのが「ウソ泣き」に見えてしまった)で,「だ,だ,大丈夫か?」と心配してしまったのですが,2幕の戦闘場面で情けない人形部隊に業を煮やして「ええいっ,見ちゃおれん。私が戦ったるっ」と言わんばかりにスリッパを投げつけるのを見て,「おお♪」と楽しくなりました。

最近思うようになったのですが,この方って「か弱い」という意味の「女らしさ」が必要な役は似合わないみたいですね。「いいねえ♪」と思うのはいつも,気の強そうな役のとき。(上半身が優しげだから騙されてしまった。踊りと個性のミスマッチ・・・かなぁ?)
で,そういうバレリーナが「心優しい少女」を懸命に演じた結果,パーティーのシーンが「???」になったのではないかなー? 

それに比べると,戦闘シーンはいきいきはつらつ,よく似合っておりました。
が,雪の場面でまた「うーむ」と・・・。これはまあ,パートナーが初主役で緊張していたせいもあったかと思いますが,全体に硬いというか,「すてきな王子様と踊れて幸せ〜」という雰囲気が感じられませんでした。

グラン・パ・ド・ドゥはよかったです。
今まで見た新国立のマーシャ役の皆さんに比べると「踊れてないなー」ではありましたが・・・いや,ちょっと違うな,きちんと踊ってはいたから。ええと・・・「振付どおり踊っているだけだなー」でしたが,その代わり彼女には,小さな頭,細くて長い首,たおやかで優しげな上半身がある。お顔だちも,美人と呼んでいいと思いますし。バレエは視覚に訴える芸術ですから,そういう要素は重要なわけで,素直に「きれいね〜」と思えました。
幸福そうな輝きもあって,少女の夢の世界の雰囲気♪

また見たいというほどではないですが,見てもよいとは思いますし,見られてよかったな,とも思います。

 

トレウバエフの初王子は,予想どおりというべきか,期待ほどでなかったというべきか。
とっても地味なんですよ。「きらきら」が全然ないの。いつもの七三分けを王子らしくオールバックにしたら余計分別くさくなってしまったみたいでしたし・・・。

そこまでは予想の範囲内だったのですが,「手を差し出す」とか「腕を大きく広げる」などの動きに優美さが乏しかったのには少々がっかり。(いや,そもそも王子向きとは思いませんが,でもワガノワ・バレエ学校出身だと思うと,つい期待が・・・)

よかったのは端正さです。
自分のソロ(上手でした)のときに音楽いっぱいに難しいことを詰め込んで最後によろけたりしない。音楽を十分に残して動きを止めて,余裕を持ってポーズを決めて,(少し硬かったけれど)にっこり〜,と笑顔を見せる。
こういう見せ方,踊り方が王子の嗜みですよね〜♪

全体としては,初主役の緊張の中で,ソロもサポートも演技もやるべきことはきちんとやっていたと思いますから,立派なデビューだったと思いますよん。

 

今回一番よかったのは,大和さんのフランツ♪
良家の子弟らしい品は持ちながら,「けっ,パーティーなんてたいくつ」的腕白な少年。どこがどうとは言えないし,演技の段取りもある程度決まった役だとは思うし,以前にも彼女で見たことがあると思うのですが,今回は特に楽しかったわ〜。
そして,いつもどおり,仲間の男の子たちも溌剌としていてとってもかわいい。

次によかったのは,雪の場面のコール・ド・バレエ。
音楽とともに次々とフォーメーションを変えていく様子が,まさに「一糸乱れぬ」で見事♪ 軽やかさもあって,風に舞い散るこな雪でした。

それから,今回思ったのは,厚木さんってうまいのね〜,ということ。
雪のソリストの一方と「ばらのワルツ」の一人を踊っていたのですが,一人だけ音楽的に見えてびっくりしました。なんていうのかな・・・厚木さんは音楽を表現していて,あとの方は音楽に合わせて踊っている。そんな感じ。
彼女は脇で踊っていても目立つダンサーですが,それは,容姿(プロポーションと美貌)の力というか,いわゆる「華」だと思っていたのです。でも,それ以上に,踊りが(踊りによる表現が)上手だということみたいです。ふーむ。

3幕のキャラクターダンスに関しては,今回は男性キャストがことごとく私の好みと外れたので,少々不満が残りました。
女性のほうは適材適所でよいです〜。特によかったのは,楠元さんのスペインの明るい色気と高橋さんのパ・ド・トロワ(あし笛)での愛らしさの表出。

ばらのワルツは,いつもどおりというか・・・キーロフが刷り込みになっているせいか激賞する気は起きませんが,普通によかったです。
今回の発見は,中村誠さんでありました。これくらいカツラが似合わない人も珍しいと思いますが(←失礼ですみませんー),長身でプロポーションもまずまず。なにより,腕の使い方がけっこうノーブルなので,ちょっと期待したいです〜。

というわけで,主役はさほどでなかったですが,全体としてはよい舞台だったのではないでしょうか。

(05.03.27)

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くるみ割り人形*バレエ
レジュニナ(ラリッサ) バラノーフ(ヴィクトル)
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両方とも,ワイノーネン版の本家キーロフの映像DVD。
演出振付も美術も新国立劇場とほぼ同じです。

くるみ割り人形とねずみの王様
E.T.A. ホフマン E.T.A Hoffmann 種村 季弘

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原作です。カバーの写真はドミニク・カルフーニ。
(現在も同じデザインなのかどうかは不明)

       

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