華麗なるクラシックバレエ・ハイライト(レニングラード国立バレエ)

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04年7月28日(水)

一関文化センター

 

第1部

『レ・シルフィード』 

音楽: F.ショパン/A.グラズノフ編曲     振付: M.フォーキン

イリーナ・コシェレワ, アルチョム・プハチョフ, エレーナ・エフセーエワ, タチアナ・ミリツェワ, レニグラード国立バレエ団

バレエ団にとって新しいレパートリーだそうで踊り込んでいないらしく,今ひとつ,いや今みっつくらいコール・ドが美しくなかったです。
事前に板橋公演の評判を聞いて覚悟していたので,心配していたほど悪いとは思いませんでしたが・・・でも,全然うっとりはできませんでした。残念。

コシェレワはきれいに踊っていましたが,品のよいお嬢さんに見えてしまって,空気の精らしい風情が感じられないなー,と。
エフセーエワは,あー,「空気ではなく元気」の精のようでした。
ミリツェワは,上手だしふんわりした感じはあったと思いますが,地味な印象。
プハチョフは,まずまずきれいなのですが,ロマンチックな感じが皆無なのでこの作品には向いていないようですねえ。(シャドルーヒンのほうがよかったのではないだろーか?)

 

第2部

『眠りの森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: P.チャイコフスキー     振付: M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

オクサーナ・シェスタコワ, ドミトリー・シャドルーヒン

シェスタコワはたいしたものです。プリマらしい輝きがありましたし,見せ方も上手。
ただ,上手だとは思いながらも,小首を傾げたりして愛らしさを作るやり方が好きになれんよなー,と再確認しました。この方のオーロラは,どうも私の目には「媚びている」風に見えてしまうようです。
シャドルーヒンはいつもどおり。サポートと雰囲気は立派な王子でソロは物足りない。(プハチョフのほうがよかったのではないだろーか?)

 

『瀕死の白鳥』 

音楽: C.サン=サーンス     振付: M.フォーキン

タチアナ・ミリツェワ

普通にきれいでしたが,うーむ,ドラマに欠けるというか・・・。ま,この作品は難しいということでしょう。

 

『くるみ割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥ 

音楽: P.チャイコフスキー     振付: N.ボヤルチコフ

アナスタシア・ロマチェンコワ, アントン・プルーム
アルチョム・プハチョフ, ドミトリー・シャドルーヒン, ミハイル・シヴァコフ, デニス・ヴィギニー

プルームというのはチュマノフが改名したのだそうですが・・・婿入りでもしたのだろーか? それとも姓名判断とかでしょうかね?

というようなどうでもいいことは置いておいて・・・ボヤルチコフ版は,妙な振付で困りますな。名古屋名物「金のしゃちほこ」を思わせるあのリフトはいったいなんなの???

というようなこともこの際置いておいて・・・ロマチェンコワは,グラン・パ・ド・ドゥだと思うと(金平糖の精だと思うと)少々元気がよすぎる気はしましたが,マーシャが踊っていると考えれば愛らしさもあり上手でもあってよかったです。
プルームはテクニックは一応あるようですが,跳躍の着地がきれいでないとか,回転の腕の使い方に癖があるとか,えー,王子よりは道化向きのように思われました。
カヴァリエの皆さんは,人によって優美さに濃淡はありますが,全体としてロシアバレエらしい趣があって結構でした。ただ,役回りを考えてもう少し揃えて動くようにお願いしたいものです。

 

『春の水』 

音楽:S.ラフマニノフ     振付:A.メッセレル

エレーナ・エフセーエワ, マラト・シェミウノフ

エフセーエワはこういう作品はよいですよね〜。溌剌としているし,かわいいし,上手だし。
シェミウノフのサポートがよくなかったのが残念でした。長身を生かしてダイナミックに決まったところもありましたが,ミスもかなり目立ちました。失礼かもしれませんがいわばサポート要員として来ているわけですから,ちゃんとお仕事していただかないと・・・。(あ,身体とお顔はよかったです〜)

 

『白鳥の湖』第1幕よりグラン・アダージオ

音楽: P.チャイコフスキー     振付: M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

イリーナ・コシェレワ, アルチョム・プハチョフ, 

よかったです〜。二人とも少々地味ではありましたが端正な踊り。ドラマや悲哀までいかないまでも,詩情がありました。ロシアバレエだわ〜♪ 見にいってよかったわ〜♪ 
コール・ドつきだともっと雰囲気が出て,もっとよかったと思いますー。コール・ドのバレリーナも来ているわけだから,ケチケチしないで投入してほしかったなー。

 

『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: L.ミンクス      振付: M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

オクサーナ・シェスタコワ, ミハイル・シヴァコフ, レニングラード国立バレエ団

やはりシェスタコワは立派だと思います。ちゃんと『眠り』と雰囲気を変えて,かわいくて色っぽいキトリを踊っていました。扇の使い方や流し目も上手だし,フェッテはダブルも入れるようなテクニックも見せていたし,客席とのコンタクトのとり方もよく知っている。最後に登場するにふさわしいプリマでありました。
ただ,キトリにしては踊りに躍動感が足りないと思いましたし,うううむ・・・私はやっぱりこのバレリーナは好きではないみたい。表現が作為的に見えてしまうのよねえ。

シヴァコフは,率直に言ってまったく期待外れでした。このパ・ド・ドゥは前にも見ていると思いますが・・・「え? こんなにヘタだったっけ?」と驚いてしまいましたよ。(ごめんねー)
いや,今回の一座の中に彼以上のバジルがいるとは思わないですし,たまたま不調だったのかもしれませんが・・・でも,ソロは物足りないし,サポートはご本人の緊張が伝わってきて全然楽しめないし・・・うううむ・・・たいそう盛り下がりました。いろいろ言いたいことはありますが,とりあえず,回転を後ろでサポートするときに身構えすぎて顔を突き出す癖だけは絶対矯正したほうがいいと思いますー。

 

というわけで,散々文句を言っていますが,でも,楽しめなかったわけではないのです。
私の場合,文句を言うのもバレエを見る楽しみのうちだということもありますし,『ショピニアーナ』やミリツェワの『瀕死』などなかなか見られない作品もありました。

そして,なにより,こういう公演の会場の雰囲気が好きです。
客席の照明が落ちて前奏曲的な音楽が始まっても世間話をやめないようなお客様が,幕が開いてダンサーが揃っているのを見た瞬間息を飲むとか,『眠り』のアダージオが終わった瞬間に会場のあちこちからため息が聞こえるとか,ヴァリアシオンを踊るために登場したバレリーナを見て「かわいい」という大きな声が聞こえるとか,そういう客席にいると「バレエっていいな〜」と素直に思えるんですよね。「ね,ね,きれいでしょ? バレエっていいでしょ?」と周りの方に言いたくなるんですよね。
そういう機会というのはけっこう貴重なので・・・うん,見にいってよかったですわ〜♪

 

(04.12.18)

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