モーリス・ベジャール・バレエ団 (プログラムA)

サイト内検索 04年一覧表に戻る 表紙に戻る

04年6月13日(日)

ゆうぽうと簡易保険ホール

 

振付・美術: モーリス・ベジャール

照明: クレマン・ケロル     衣裳: アンリ・ダヴィラ

音楽: ワーグナー,ショパン,シャルル・トレネ,ハワイの音楽,コットラウ/ジェノヴェーゼ,U2,ロッシーニ,アンリ・アリベール,レネ・サルヴィル,レイモンド・ヴィンシー,ヴァンサン・スコット

彼女: エリザベット・ロス   彼: ドメニコ・ルブレ   ビム: ジュリアーノ・カルドーネ

「うん,ベジャールだなー」という感じのオムニバスというかコラージュというか。
海(とかお母さんとか少年時代の思い出とか)をモチーフに,いろいろな場面が脈絡なく続く感じ。ベジャールって,最近こういうの多いよねえ。(それとも,昔からこういう感じのものも作っていたのだろうか?)

前半が女性中心で後半は男性中心というのは,ビムの台詞にある女性名詞の海(フランス語)と男性名詞の海(イタリア語,スペイン語)を現していたのかな。で,フランス語では「海」と「母」が同じ発音だというのも踏まえているらしいから,「彼女」役はお母さんなのであろう。だとすると,「彼」はお父さん?? ・・・と考えたりして,そういう面は楽しみましたが,全体に,踊りそのものに引き込まれるものがなくて,かなり飽きました。
振付が悪いのかダンサーが悪いのかは不明ですが・・・いや,どちらでもなくて,こっちに見る目がないという可能性もありますが・・・とにかくつまんなかったわ。

ロスはすばらしい存在感。ルブレは,このバレエ団での私のお気に入りで,吸い込まれそうな瞳がすてきなんだけど,踊りはさほどでもなくて残念でした。

最後は全員で総踊り。女性ダンサーの登場がポアントでよちよち行進しているような振付で,「なんじゃこりゃ?」と。
で,全員で裏表が金と銀になっている扇を両手に持って翻すのですが(陽光が当たってきらめく海面を現してるのかな),わはは,これは面白かった。人によって上手下手がはっきりしているのね。日本舞踊もできそうな方もいれば,「なんとも不器用なやっちゃなー」もあり,ダンサーの顔が見分けられるくらいカンパニーに精通していれば,もっと楽しかっただろうなー。

 

バトリー・フュガス

振付: モーリス・ベジャール

音楽: ピエール・アンリ

ジル・ロマン

昔風の電子音楽に乗せて,ロマンが苦悩していました。でも,ユーモラスな感じもあったような。
どういう意味のある作品なのだろう?

ロマンはさすがだなー,とは思いましたが,例えば『バクチ』に出てくれたほうが嬉しかったかも。もしかすると,Aプロの作品には彼の出番がないことに後から気付いて,短いこの作品を入れてサービスした(あるいは,チケット販売に梃入れをした)のかもしれませんねー。

 

これが死か

振付・美術: モーリス・ベジャール

照明: クレマン・ケロル     衣裳: アンリ・ダヴィラ

音楽: リヒャルト・ストラウス『四つの最後の歌』(春・九月・眠りゆくとき/H.ヘッセ,夕映え/J.アイヒェンドルフ)

ジュリアン・ファブロー

マテリーヌ・マリオン, カテリーナ・シャルキナ, キャスリン・ブラッドネイ, エリザベット・ロス

ファブロー@死にかけている男が,過去に愛した女たち3人(シャルキナ,ブラッドネイ,ロス)を追想したり,「愛の束縛」(マリオン)と絡んだりするうちに,ついに死を迎える,という感じでしょうか。(「愛の束縛」は死の使いのようにも見えました) 
1楽章は女性3人と踊り,2楽章はシャルキナとの,3楽章はブラッドネイとの,4楽章はロスとのデュエットで,間の無音のところでマリオンと踊っていたんだったかな。

女性たちのレオタードの色や形も品がよく,きれいな作品でした。動きはかなりクラシック風で,小道具や演技でなく踊りそのもので表現する感じでしたし,女性ダンサーは踊れる人を揃えていたんじゃないのかな,安心して「きれいだな〜」と見られて,私向きだったみたい。この日の四つの上演の中で,一番気に入りました。

しかし,見ながら「・・・これでいいのだろーか???」と首を捻ってしまう上演でもありました。
なぜかというと,ファブローがあまりに幸せそうなんだわ。口元が凛々しくない個性を生かしたというか,甘い個性を生かしたというか,過去の女たちとそりゃもう嬉しそうに踊るの。(しかも,「愛の束縛」さんとも,満更でもなさそうに踊る)

ほら,死を扱った作品だから,もっと深刻な内容を予想していたわけよ。いや,ちょっと違うな。「死を扱った」からではない。死の直前に,自分の人生を振り返るわけでしょう?(だからこそ「その生涯において愛した3人の女性たち」が登場するわけよね?) その振り返った人生には,幸福なときもあれば,辛い瞬間もある。どっちが多いかは別として,いろいろ紆余曲折があるのが普通の人生というものだと思います。

ところが,ファブローの場合,すべてが幸せな思い出のように見える。誰とでもにこにこ,どんなときでもにこにこ。
いや,うらやましい人生だとは思いました。死に際に現れる過去の女たちがみーんな幸福な思い出で,後悔とか苦い別れの類が出てこないなんて。こういうふうに死んでいけたらいいだろうなー,と。

でも,なんか違うような気がするんですけどー? 
女性たちは,瑞々しいとか大人っぽいとかミステリアスとか,それぞれの魅力を見せているのに,博愛精神の権化(または素直な少年)のようにどの女性にも同じように接して,あげくに「愛の束縛」にも似たような感じで対応して,いつのまにか死んでいく・・・。あのー,そういう表現でいいのでしょーか???

 

バクチ

振付: モーリス・ベジャール

音楽: インドの伝統音楽     衣裳: ジェルミナル・カサド

I  ラーマ: ティリー・デバル   シータ: 長谷川万里子   崇拝者: バプティスト・ガオン

II クリシュナ: ジュリアーノ・カルドーネ   ラダー: クリスティーヌ・ブラン   崇拝者: イゴール・ピオヴァノ

III シヴァ: オクタヴィオ・スタンリー   シャクティ: カトリーヌ・ズアナバール   崇拝者: スタン・カバール=ロエ

ふむふむ,全体としてはこういう作品であったのか,と興味深く見ました。白,黄色とピンク,赤の3組の神とそれぞれ一人ずつの崇拝者とたくさんの教徒たち。
でも,そんなに好きではないです。IIIはルジマトフで見てさえ「見られて嬉しいなー」という気分にはならなかったくらいだから,まして・・・という感じ。たぶん,私はインド音楽が苦手なのだと思います。

それから,全体に,神様たちがあまり踊りが上手でなかったです。踊るのでせいいっぱいという感じの出演者が続いて・・・ブランも精彩がなかったし・・・。(妊娠中だったらしいですね) 
中でよかったのは,Iのラーマを踊ったデバル。きれいな動きでした。それから,IIIのシャクティのズアナバールが,キレがあってエネルギッシュで,とてもよかったと思います。

 

全体としては・・・そもそも私がベジャールのファンでないということを差し引いて考えても,低調な公演だったと思います。
そうそう,カーテンコールでベジャールが登場しましたが,かなり年齢を感じてしまいました。飛行機に乗ったりして大丈夫なのかなー。身体を労ってくださいねー。

(04.8.22)

サイト内検索 上に戻る 04年一覧表に戻る 表紙に戻る