スペインの燦き (新国立劇場)

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04年2月21日(土)

新国立劇場

 

作曲: モーリス・ラヴェル

オペラ台本: フラン・ノアン

指揮: マルク・ピオレ     管弦楽:東京交響楽団

演出・振付: ニコラ・ムシン

美術・衣裳: ダヴィデ・ピッツィゴーニ

照明: ペーター・ペッチニック

合唱指揮・音楽ヘッドコーチ: 三澤洋史

 

なんか妙な公演でした。スペインをテーマにラヴェルの音楽によるオペラとコンテンポラリーダンスを上演し,それをモーリス(←つまりラヴェルね)役の小劇場系の女優がつなぐという斬新な試みのようでしたが・・・なんか,とにかく妙でしたわ。
えーと,つまり・・・その試みは失敗に終わったのではないでしょうかねえ。

 

I オペラ 『スペインの時』

コンセプティオン: グラシェラ・アラヤ   トルケマダ:ハインツ・ツェドニク   ゴンサルヴェ:羽山晃生   ラミーロ: クラウディオ・オテッリ   ドン・イニーゴ・ゴメス: 彭康亮   モーリス:美加里   バレエ: 新国立劇場バレエ団 

私はオペラには不案内なので,字幕装置などを眺めたり,ヒロイン役の歌手はやはりかなり立派な体格だなーと感心したり,力持ちの役は実際に力がないとできないのかなーと考察したりして,それなりに楽しみましたが,上演としては,あらすじ(→新国立劇場こちらのページに簡単なモノが)からするとコミカルなオペラだし,字幕を見てもそうだし,衣裳や演出も一応そういう感じなのに,こんなに笑えなくていいのだろーか? と困ってしまう感じでした。

ダンサーは,男性5人が時計運搬係として,女性は1人が時計の精(←ちょっと違うか?)として登場。こちらは演出をよしとするかどうかは別として,なんのためにいたのか理解できるのですが,ほかにバレリ−ナ20人ほどがマリリン・モンローのような姿で最後に登場。集団で媚態を振りまいておりました。(湯川麻美子さんがうまいっ) あれはいったいなんだったのだろうか???

 

II バレエ 『ダフニスとクロエ』第二組曲

バレエ・ソリスト: 酒井はな, 市川透     モーリス:美加里

バレエ: 新国立劇場バレエ団     合唱: 新国立劇場合唱団

オフホワイトの麻のような感じのツーピース(男性もスカート)で踊られるコンテンポラリーダンス。

最初のほうで,頭に角をつけたダンサーがしずしずと行進を繰り返していたときは,この先どうなることかと心配になりました。
ところで,この角は鹿のように見えるが,『ダフニスとクロエ』ならパンの神だから山羊のはず,どっちかなー,と思っていたら,あとのほうでモーリス役がホルスタイン種乳牛のような衣裳で角をつけて登場。うーむ,牛の角だったのだろうか?(そう言えば,オペラには牛のセットがあったし,全体の緞帳も牛の絵でありました。闘牛用の牛ですから茶色で・・・うーむ,関連不明だわ)

その後は,ごく普通のコンテンポラリーダンスになりました。(←凡庸とも) 
特に目新しい動きでもなく,似たような振りが多かったとは思いますが,ダンサーの出入りも多いし,組合せもデュエット,デュエット2組,群舞など変化も多く,とても楽しめました。

特に,遠藤睦子/白石貴之,湯川麻美子/貝川鐵夫の2組が踊った場面がスピード感もあり,動きもいかにも「コンテンポラリー」で印象的。中心は,酒井さんと市川さんでしたが,こちらは普通かな。市川さんには失礼ながら,「コンテンポラリーはやっぱり山本隆之さんが出ないと・・・」とつい思ってしまいました。

 

III 言葉のない小品 『洋上の小舟』 

モーリス: 美加里

車輪のついた白いバスタブを小舟に見立てて,モーリス役が無言で演技を行う場・・・だったようです。
モーリス役は,この場面以外にも,第1部の冒頭(オペラの始まる前)から最後の『ボレロ』まで随所に登場。演出者にはそれなりの意図があったのでしょうが,ううむ・・・私にとってはいなくても差し支えないというか,いないほうがよかったような。まあ,たまに出演者に絡んだりもしますが,あまり関係なく「その辺にいる人」だったので,邪魔で困るというほどでもなかったですが。

 

IV バレエ 『ボレロ』

バレエ・ソリスト: 湯川麻美子, 市川透     モーリス:美加里

バレエ: 新国立劇場バレエ団     

16組の男女が登場。女性は1950年代風のとりどりの柄のワンピース(ツーピースだったかも)。男性はシャツは色違いで黒のパンツ姿でした。
小道具としてけっこう大きい時計が使われていて,各カップルごとの16個登場していたかも。で,これを転がしたりしながらの場面もあったりしました。第1部のオペラが時計がテーマだったからここでも登場させて一貫性を持たせたのかとは思いますが・・・うううむ,特に効果的とも言えないような。小道具を使った踊りをたまに見てもいいから,ま,いいですけどー。
あと,奥に透明な筒が6本か8本くらい舞台の幅いっぱいに並んでいて,球体が上下したりしていたかも。

これもコンテンポラリーですが,『ダフニスとクロエ』より「くねくね」系だったかな。
それなりに変化はあったから退屈はしませんでしたが,また見たいとは思えないなあ。そうですねえ・・・振付が「音楽とともに徐々に盛り上がる」というこの作品に必須の条件を満たしていなかったように思います。

ダンサーについては,16組も登場させると「全然コンテンポラリーになっとらんのでは?」という方もいるなー,という感じ。
よかったほうは湯川さん,白石さん,井口裕之さんのほかブルーのシャツの桑原文生さん。片脚を斜め上(150度くらい?)に上げてずーっと制止するという難しそうな技も見せていましたし,動きのキレもよかったです。

 

それにしても,盛り上がらない客席でした。空いている中劇場での新しいモノ中心の公演では経験がありますが,満席のオペラ劇場であのカーテンコールの少なさというのは珍しいですなー。オペラのお客様が多いような感じなのに,オペラよりダンスのほうが拍手がまだ多かったりするんだもんねえ。まあ,私も盛り上がらなかったから,異論があるわけではないですけどー。

 

(04.2.22)

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