ピンク・フロイド・バレエ (牧阿佐美バレヱ団)

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04年2月7日(土)ソワレ

NHKホール

 

演出・振付: ローラン・プティ

音楽: ピンク・フロイド

照明: ジャン=ミッシェル・デジレ

振付指導: ルイジ・ボニーノ, ジャン=フィリップ・アルノー

振付参加: 辻本知彦, 佐藤洋介, 森川次朗, 柴一平

マリ=アニエス・ジロ, シャーロット・タルボット, 草刈民代, 上野水香

リエンツ・チャン, アルタンフヤグ・ドゥガラー, 菊地研

辻本知彦, 佐藤洋介, 森川次朗, 柴一平

金澤千稲, 田中祐子, 平塚由紀子, 佐藤朱実, 橋本尚美, 櫛方麻末, 吉岡まな美, 山井絵里奈, 奥田さやか, 小橋美矢子, 笠井裕子, 駒崎友紀, 柄本奈美, 坂梨仁美, 本島美和, 山口恵理子, 青山季可, 海寳暁子, 伊藤友季子, さいとう美帆

相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 秋山聡, 保坂アントン慶, 邵治軍, 伊藤隆仁, 武藤顕三, 徳永太一, 今勇也, 三國典央, 阿南誠, 笠原崇広, 中島哲也, 高橋章, 岡田兼宜, 芝崎健太, 菅村浩行, 杉本崇

 

そうですねー,私には特に面白い舞台ではなかったです。
あちこちにきれいだったり楽しかったり心動かされたりする部分はあるのですが,全体としては散漫な印象で楽しめなかったなあ。

衣裳は,女性はベジャール『春の祭典』風(マリ=アニエス・ジロさんだけは白のレオタード),男性は白タイツ(ジロさんの場面の出演者は上半身に白のタンクトップも)。
装置はなく,照明はレーザー光線(?)を用いておりました。

 

1 Run Like Hell

菊地研

ううむ・・・よかったとは言いかねます。
菊地さんは,幕開きでソロを踊るには「十年早いよ」という感じ。いや,10年でなく3年かもしれないし,もしかしたら1年とか半年かもしれないけれど,とにかく現時点ではかなり苦しい。踊るので精一杯で,何かを表現したり自分の魅力を見せたりはできていないと思いました。

踊りの傾向としては,「舞台の上を駆け回る」系。もしかすると小嶋直也さんが踊る予定だったのかな,と雑念が少し心をよぎりました。

 

2 Money

相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 保坂アントン慶, 邵治軍, 佐藤洋介, 今勇也,阿南誠, 中島哲也, 高橋章, 森川次朗, 秋山聡

ええと・・・キャスト表には載っていませんでしたが,最初リエンツ・チャンさんが登場して,お金の音に合わせてちょっとマイムというか演技というかを見せて,その後,男性陣が踊りました。傾向としては「力強い」系というか「床面で跳ねる」系というか。

佐藤さんと森川さんは,今回の4人のゲスト,ストリート・ダンサーの方。「お,それらしい」という動きもありましたが,全体としては牧のダンサーと区別がつかないので,「ふーむ,そういうものか」とちょっと驚いたというか感心したというか不思議だったというか。

 

3 Is There Anybody Out There

リエンツ・チャン

チャンさんはプティ芸術監督時代のマルセイユ・バレエ所属のダンサーで,私の記憶とはだいぶイメージと体型が変わっておりました。バレエダンサーにしてはたくましい(太い?)上半身と鋭い眼光で,沖仲仕の親分とか柔道の達人のような雰囲気。踊りの感じもそれを生かした「おじさんの人生」の雰囲気・・・かな。

 

4 Nobody Home

アルタンフヤグ・ドゥガラー

前の曲とつなげて踊られたというか,そのように音楽が編集されていたというか。

ドゥガラーさんはよいですね〜。ナチュラルメイクのためお顔立ちの純朴さが目立ちますが,それがピュアな雰囲気を感じさせるとも言えますし,なにより動きが柔らかく美しいです〜。そして,アクセントをつける振りはきちんとアクセントになっている。
音楽もメロディー(歌つき)中心の感じのものでしたし,踊りからは詩的な雰囲気が感じられました。そうねえ・・・「少年は何かを求める」とか。

うん,とてもよかったと思います。うっとりしたとまでは言いませんが,たいへん舞台に引き込まれました。

 

5 Hey You

シャーロット・タルボット, リエンツ・チャン

お,この曲はなんとなく聞いたことがあるわ〜。
きれいなメロディー(歌つき)に乗せて踊られるきれいなパ・ド・ドゥ。タルボットさんは,清楚でチャーミングでした。

 

6 One of These days

20 Couples

リズム中心のインストゥルメント曲による物量作戦集団ダンス。縄跳び風の動きなどが取り入れられておりました。
そうよ〜,こういうのが見たかったのよ〜♪ 「総勢100人」という話を聞いてこういうのを期待していたのよ〜♪ と思いましたが,冷静に考えてみるとこの曲に出ていないソリストをたしても約50人にとどまっておりますね。(JAROに通報するべきだろーか?)

この中にもストリート・ダンサー中の3人が加わっていたようですが,さっぱり見分けがつかないで場に溶け込んでいるのがいいんだか悪いんだか・・・。

 

7 Careful with That Axe Eugene

シャーロット・タルボット, 草刈民代, 上野水香 
アルタンフヤグ・ドゥガラー,逸見智彦, 菊地研

下手から,上野/ドゥガラー,タルボット/逸見,草刈/菊地の3組のカップルで踊られました。
草刈さんと菊地さんが組むとは意表を突かれたとか,こういうシーンで逸見さんが登場するというのは森田健太郎さんが出ていないからであろうかとか,雑念に終始するうちに終わってしまいました。全体の中で見ると珍しい感じの場面だったから,もっと集中して見ればよかった,と後悔。
雰囲気としては「しっとり」系かな。

 

8 When Youre In

辻本知彦, 佐藤洋介

おお,ストリート・ダンスだわっ。
珍しいしかっこいいし,楽しかったです。

 

9 Obscured by Clouds

20 Couples

はて,どういう踊りだったですかね? 舞台前面に横一列に並んだ男性の股下に女性が横向き一直線に並んで宙に浮く一糸乱れぬ集団演技の見事さ・・・は2部の Echoes だったかなぁ?

そうそう,ストリート・ダンサーズは少し見分けがつくようになってきたのですが,彼らも周りと同様に女性のリフトまでしているのでますます混迷に陥りました。その道に疎いのでよくわからないのですが,こういう舞台に招かれるクラスのダンサーだとそういう技も持っているのでしょうかしらん?

 

10 The Great Gig in the Sky

草刈民代, リエンツ・チャン

前の曲と継ぎ目なく踊られました。

あら,またチャンさんの登場ですわ。「サポート要員」と評しては失礼かもしれませんが・・・でも,なんかそういう印象が残るなあ。
草刈さんが美しかったです。私はチュチュで踊るバレエでの彼女はよくないと思っていますが,こういう衣裳のこういう作品で雰囲気を出せるのはさすがだなー,と思いました。

踊りとしては,チャンさんに支えられて空中を散歩する趣。これは絶対あちこちで聞いたことがあるから有名な曲に違いないと思われる音楽でした。

 

(休憩)

11 Echoes

上野水香, アルタンフヤグ・ドゥガラー
相羽源氏, 今勇也
菊地研
20 Couples

この曲はかなり長いもので,前半は上野/ドゥガラーのパ・ド・ドゥ。後半は人が出たり入ったり,いろいろな組合せがあったり,短いソロが混ざったりしながら20 Couplesの場面となりました。キャスト表にはないですが,最後のほうで草刈さんが群舞の中を回転系の技で横切っていったような記憶が・・・。

ここでもドゥガラーさんが印象的。
床の上に腰を落として開脚〜閉脚系の技を見せる上野さんを片手でひきずって(←というのも無粋な説明だが),もう一方の腕を斜め上に向けて舞台を横切るゆっくりとした動きが印象的。伸ばした指の先には何があるの? と聞いてみたいよう。
その後は組んだ動きではなくユニゾンや対象の動きが多かったのですが,いやー,きれいだねえ,彼。好きだわ〜♪

相羽さんと今さんはペアで登場。
そして,ここでの菊地さんはとてもよかったです〜。自分の個性(不敵な笑みの中に覗くかわいげとか年齢に似合わぬ「黒」の色気とか)を魅力的に見せていました。

 

12 Run Like Hell

マリ=アニエス・ジロ
辻本知彦, 佐藤洋介, 森川次朗, 柴一平

あ,また知っている曲だわ,と思いましたが,あとからキャスト表を見たら,オープニングと同じ曲だったのでそんな気がしたのであったらしい。わはは,恥ずかしいなー。

舞台中央に黒の衣裳に身を包んでうつむくジロさん。ストリート・ダンサーズ4人が現れ彼女をちょっと意識しつつちょっと踊ったのちに周りを取り囲んで布を剥ぎ取ると,白いレオタード姿の美しく強い女神の姿が現れる・・・と。
4人が登場した段階でこの展開は想像がついてしまったのですが,ジロさんはさすがの存在感と輝き,わかっていても「おお」と思いました。
しかし,布の剥ぎ取り方はなんとかしてほしい。なんであんなにお行儀いいわけ? 牧の若いコール・ドが草刈さんの衣裳を剥ぎ取るわけじゃないんだからさー。

そして,その後の展開も予想通り。
ジロさんは4人の男たちに囲まれて賛美されたり,1対4で向き合って対抗しあったりしながら,力強く美しいソロを踊り,ストリート・ダンサーズはバレエダンサーと違う個性を見せ,最後は4人を従える感じになって終わりました。

うん,よかったです。ジロさんの踊りはたいへん見事なものでしたし,全体としても,ストーリー性があるシーンだったこともあり,楽しめました。
ただ,そのストーリーがあまりにも「ありきたり」だなー,おまけに振付もものすごくバレエで(フェッテがやたらに多かったような)こちらも「ありきたり」だなー,これを踊るためだけに日本まで来るとはご苦労様だなー,とも思ってしまいました。でも,考えてみると,そういうテクニックの強さも彼女の個性なのでしょうし,他にそういう方面を担当するバレリーナはいなかったわけだから,上手な使い方なのかな?

 

13 Echoes

リエンツ・チャン, シャーロット・タルボット
菊地研
(Final) 全員

前半は少人数の踊りで,記憶が定かでないですが,キャスト表から察するにタルボット/チャンのデュエットと菊地さんのソロだったのでしょう。

その後,暗くなって全員が中央奥に固まって登場。スローモーションのようなうごめくような動きがあって,その後舞台前に整列,観客にごあいさつというか思いを送るマイムというかが踊られました。ここで拍手がわくという構想だったのかなー,と思うのですが(というか,ここまでの舞台で満足していれば,私はここで拍手したと思いますが)そうはならず,再度全員が中央奥に固まって照明が暗くなって終わりとなりました。

 

カーテンコールで,通常のごあいさつのほか,One of These daysが2回踊られました。

1回目は上演の内容として織り込み済みだったようで,発見としては,奥で集団の上に突如リフトされる人がいるなー,と思っっていたら,男女一人ずつのベジャール『春の祭典』状態であったこと。それから,最後のほうで男女二組がソリストっぽくなるのですが,それが吉岡まな美/今勇也と平塚由紀子/ストリート・ダンサー(佐藤洋介?)であったこと。佐藤さんの発達した上半身に感心しました。

2回目は,その場でプティさんが音楽をかけさせてしまったみたいで,ダンサーたちは「え? もう一度踊るの?」という感じで始まりました。で,プティさんのアレンジ(←無理強いとも)により,ソリストの何人かが即興で参加。辻本知彦さんがたいへん魅力的かつ上手に周りに合わせて踊っていて,これにも感心しました。

 

結局全然盛り上がれませんでしたが,「まあ,こんなもんかなー」という気がしないでもないです。「どうなることやら・・・」とおそるおそる見にいった『デューク・エリントン・バレエ』が予想を裏切って楽しめるものだったので,少々期待しすぎだったのかも。

衣裳も簡素だし,ストーリー性(情景とかキャラクターとか)が排除されたモダン・バレエの雰囲気なので,私向きではなかったということもあるでしょう。あと,もちろん,小嶋さんが出ていなかったという要素もありますし,そうねえ,しかたないかしらん。

(04.2.11)

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