小林紀子バレエ・シアター 第76回公演

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指揮:デヴィッド・ラマーシュ

演奏:東京ニューフィルハーモニック管弦楽団

 

バレエの情景

振付: フレデリック・アシュトン   ステイジド・バイ: ジュリー・リンコン

作曲: I・ストラヴィンスキー

美術: A・ボールペール 

吉田都   パトリック・アルモン

奥田慎也, 中尾充宏, 冨川祐樹, 中村誠

大森結城, 楠元郁子, 近藤義子, 齊木眞耶子, 大和雅美, 濱口円香, 斎藤美絵子, 駒形祥子, 難波美保, 中村麻弥, 伊藤真知子, 中村恵子

この作品を見るのは3回目ですが,どうも私向きではないみたいです。

たぶん音楽が合わないのでしょうなー。私の耳は19世紀の人と似ているらしく,ストラヴィンスキーの不協和音は苦手なのですわ。『春の祭典』みたいな内容のものならまあいいのですが,「なぜにこの音楽でチュチュを着て踊るのだ?」と思ってしまいましたよ。
本家ロイヤルで見ても楽しめなかったし,いわば「きわめつき」であろう吉田さんでも盛り上がれなかったので,諦めの心境に達しました。嫌いだとか見たくないということではないのですが,「特に見なくてもいい作品」に分類して棚の上のほうに収納しておくことにします。

なお,フォーメーションに凝った作品なので,2階席から見たほうが楽しめるかもしれません。

吉田さんはたいそう軽やかで美しく踊っていましたが,絶好調ではなかったのかも。いつもほど(というほど見ているわけではないですが)表情に,柔らかさや余裕が感じられなかったような・・・。それとも結局,こちらのノリが悪かったせいかなあ?
アルモンとコール・ド・バレエは,普通によかったと思います。

 

レ・パティヌール

振付: フレデリック・アシュトン   ステイジド・バイ: ジュリー・リンコン

作曲: G・マイヤベール   編曲: C・ランベール

美術: W・チャペル

オントレ: 大和雅美, 難波美保

パ・ド・パティヌール: 中村麻弥, 中村恵子, 荻野曰子, 山嵜由美, 宮澤芽実, 小野朝子(←交替出演だったのでこのうちの4人)
奥田慎也, 冨川直樹, 冨川祐樹, 原田公司

ヴァリアシオン: 小出顕太郎

パ・ド・ドゥ: 高橋怜子, 中尾充宏

アンサンブル: 大和雅美, 難波美保, 小出顕太郎, パ・ド・パティヌール

パ・ド・トロワ: 大和雅美, 難波美保, 小出顕太郎 

パ・ド・フィーユ: 大森結城, 楠本郁子

アンサンブル: 大森結城, 楠本郁子, 奥田慎也, 冨川直樹, 冨川祐樹, 原田公司

フィナーレ: 全員

スケートを楽しむ若者たちを描写した小品。以前から見てみたかったのですが機会がなくて,今回一番のお目当てでした。
期待に違わずとても楽しかったです。

本当にスケートしているように見えるのかな? という点についてはそれほどではなかったですが,ダンサーたちが入れ代わり立ち代わり登場して,元気がよかったり,初心者スケーターのようだったり,幸せな恋人どうしだったり・・・。とても微笑ましくて,思わずにこにこしてしまう感じ。
衣裳もかわいいし(ただ,パ・ド・フィーユの桃色頭巾に白いボンボンの縁取りはどうかと思いましたけどー),舞台美術もよく雰囲気を表していてとても気に入りました。公園の池が冬になると凍るので,夜になるとランタン灯して,たぶん簡単な屋台なんかも出て,若い人たちが楽しむのよね〜,健全でいいわよね〜,ほのぼのするわ〜,なんて。

ダンサーについては,一応中心はホワイトカップルとブルーボーイなのでしょうが,(よくも悪くも)この3人が目立つことはなく,皆さんそれぞれ魅力的でした。
中では,大和さん(軽やかでキレがある)と難波さん(フェッテも披露)のブルーガール(らしいですが,衣裳は紫色)が,小柄なことも手伝ってでしょうか,一際愛らしかったです。

 

パキータ

振付: マリウス・プティパ   演出: 小林紀子

作曲: L・ミンクス

美術: G・ハリス

オントレ: 島添亮子   楠元郁子, 難波美保, 中村麻耶, 濱口円香, 駒形祥子

アダージオ: 島添亮子, パトリック・アルモン

ヴァリエーションI: 高橋怜子

ヴァリエーションII: 大森結城

ヴァリエーションIII: 斎藤美絵子

ヴァリエーションIV: 大和雅美

ヴァリエーションV: パトリック・アルモン

ヴァリエーションVI: 島添亮子

フィナーレ: 全員

そうですねー,それほどよくなかったとは思いますが,この作品が難しいのは,6月の新国立劇場バレエ団や8月の世界バレエフェスティバルでの東京バレエ団を見てわかっていたので・・・。
ただ,上記二つのバレエ団に比べた場合,コール・ド・バレエの体格(身長)を揃えられない陣容なのが苦しいなー,とは思いました。身体の方向や腕の上げ方以前に,ずらっと並んだときに身長のでこぼこがあると,きれいだなー,と思いにくいですよね。

衣裳はプリンシパルの島添さんまで全員オフホワイトのお揃いで,品がよくてすてきでしたが,同じくお揃いのティアラは少々派手すぎたかも。

島添さんについては,最初は「よくない」あるいは「ミスキャストなのでは?」と思いました。彼女はたおやかさやしっとりした感じが魅力のバレリーナであって,この作品の主役に必要な華やテクニックは足りないなー,と。
ご本人がパワフル(?)な感じを出そうと努力しているのはわかりましたが,成功しているとは思えなかったのでした。

ところがっっ!! ヴァリアシオンがとーーってもよかった♪♪

今まで,このヴァリアシオンは難しそうな割に魅力的でない振付だなー,なんて思っていたのですが,島添さんはとてもていねいで繊細で・・・そうかー,このヴァリアシオンはこういうふうに優しげに踊ればこんなにすてきに見えるんだー,と目から鱗が落ちる思いでした。(雰囲気や見せ方としては,私は,例えばヴィシニョーワより好きです)
ただ,フィナーレになると,主役の貫禄はそれなりにあるものの,やはり少々押し出しが弱い・・・。グラン・フェッテはこなしてはいましたが,軸足の位置が前にずれていってしまったし・・・。ううむ・・・難しいものです。

アルモンは,上手ではあったのですが,率直に言って,年齢的・体型的に,こういう作品はそろそろ苦しくなっているのかなー,という感じでした。
島添さんと踊っているときはすてきなパートナーなのですが,ソロに余裕がないし,踊り終えてポーズをとったあと袖に入るまで集中力が続かないというのは,見ていてちょっとつらいなぁ・・・。

ソリストの中では,跳躍の多いヴァリアシオンを踊った斎藤さんが印象に残りました。はつらつとしていたし,ちょっとコケティッシュな感じの美人でしたし。

全体としては,音楽の盛り上がりとともに雰囲気が盛り上がっていって大団円を迎える感じで,楽しめました。
ミンクスは作曲家としての評価はストラヴィンスキーに遠く及ばないのかもしれませんが,バレエの音楽としては,こういうふうに場の雰囲気を助けてくれるほうが私はずっと好きだなー。

(03.11.29)

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