コッペリア (ロシア国立ノボシビルスクバレエ)

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03年11月19日(水)

イズミティ21

 

作曲: L.ドリーブ

台本: C.ニュイッテル, A.サン・レオン

振付: M.プティパ     演出: S.ヴィハレフ

美術・衣裳: Y.ポノマレフ

指揮: セルゲイ・カラーギン     演奏: 国立ノボシビルスク・バレエ・オペラ管弦楽団

スワニルダ: エレーナ・リトキナ     フランツ: デニス・バルディヤン

コッペリウス: アンドレイ・シャンシン

フォリー: ナターリア・エルショーヴァ     オーロラ: ガリーナ・セドーヴァ

祈りの踊り: エレーナ・マラチェンコーヴァ     仕事の踊り: マリーヤ・シレモーヴァ

マズルカの踊り: アナスタシア・リフェンツォヴァ, アンナ・センコヴァ, ヴラディスラフ・カザコフ, オレグ・ブィコフスキー

チャルダッシュの踊り: アナスタシア・リフェンツォヴァ, アレクセイ・サイコーフ

 

ヴィハレフ復元による1894年プティパ版の上演。
ノボシビルスク・バレエはこの作品で,「ロシアで最も有名な演劇賞(←プログラムの説明)」である黄金のマスク賞(の最優秀バレエ演技賞)を受賞したとのことでした。

それなりに楽しくはあったのですが,「なるほど! 黄金のマスク賞を受賞するだけのことはある!」とは全く思えませんでした。
実のところ,この賞が何を対象に評価するのか知らないのですが・・・振付演出だとしたら「復元ということで興味深くはあるが・・・でも,復元で新演出ではないですよね?」ですし,上演だとしたら「このレベルでロシアで一番?」という感じ。復元への功労賞なのでしょうかね? 
まあ,考えてみると,日本でも,芸術祭賞受賞の舞台がその年一番の舞台だとは思えませんから,同じことなのかもしれませんねー。

 

1幕は,特に「?」が続出してしまいました。

特に,マズルカとチャルダッシュの衣裳の色彩感覚には唖然。上半身が赤でスカートが青緑とか・・・。それも彩度も明度も高い色なのよ。
こちらも復元だそうで,100年以上前の照明技術のもとではあれくらい明るくはっきりした色彩が魅力的だったのかもしれませんが,今見ると「・・・けばけばしすぎないか?」という感じ。(レニングラード国立バレエや新国立劇場バレエ団の衣裳でおなじみのオークネフの色遣いは,もしやこの系譜の上にあるのだろうか?)

いや,私としては面白くはあったのですが,すてきとか美しいとは言いかねるというか,大人には勧められないというか・・・。

で,そのマズルカとチャルダッシュは主役による「麦の穂の踊り(?)」を挟んで踊られるのですが,なんとこの間に着替えたらしく,同じダンサーの皆さんが両方を踊るんですねー。びっくり。いや,別に文句を言っているわけではないのですが・・・総勢110人のバレエ団ではなかったのか??

踊りについては,キャラクターダンスにしては迫力不足に思われました。もっとも,舞台が狭くて混雑している感じでしたから,踊りにくかったのかもしれませんが。

 

一方主役のほうも,さして魅力的には思えなかったのでした。

リトキナはたいへん小柄なダンサー。技術的には軽やかで上手に思われましたが,ちょっと柔らかさやていねいさが足りないかな。失礼ながら,ロシアのダンサーにしてはプロポーションというかスタイルが美しくないとも思いました。
それから,フランツと仲良くしているときも,彼がスワニルダに気を引かれているので怒ったり拗ねたりしているときも,友人たちといっしょにコッペリウスの家に入っていくときも,顔の表情が同じなの。いたずらっぽい笑顔でコケティッシュでもあり魅力的ではあるのですが,あまりに変化がなさすぎると思うんですけどー? (01年に学校を卒業したばかりだそうだから,その辺りは今後の課題なのでしょうか)

バルディヤンは,可もなく不可もなくというか,さほど印象的でないというか。「村の青年」らしさはあったけれど,フランツ役にはもう少しかっこよさか愛嬌かどちらかがほしいなー,と思いました。

コッペリウスのシャンシンは・・・若すぎるなあ。見た目の違和感がありましたし,芝居も不自然な感じを受けてしまいました。

 

まあ,そういうわけで,幕間は「・・・」という気分ですごして,2幕。

この幕も最初のうちは,スワニルダと友人たちの「おっかなびっくり」の演技が今ひとつで,あまり楽しめませんでした。
思うに,ダンサーが全体に若すぎるのでしょうねえ。日本のバレエ団などに間々見られる「教わったとおりに演技している」感じの典型で,全然いきいきして見えないし,面白くもない。いったいヴィハレフはどういう指導をしているのか? と不審に思ったり,たいへんだなー,と同情したりしました。

ところが,からくり人形の館(?)であることが判明して,舞台の上がそれを楽しみ出してからは,見ている側もとても楽しくなりました。
人形が凝ってるわ〜。コレはなんだろう? ガリレオ・ガリレイであろうか? お,あんなところからも出てきた,などなど。

その後は,コッペリウスの書物を開いての大仰な演技も楽しく,フランツも純朴でちょっと抜けている感じで(←誉めてます),勢い込んでコッペリアのところに行こうとして引き止められる芝居などが上手。

なにより,コッペリア姿のリトキナの愛らしさ♪ 小柄なのもよかったのでしょうか,人形振りがよく似合いますし,動くと軽くて威勢のよい踊り。ワガママ言って,大暴れもして,コッペリウスを困らせるところがとーってもチャーミングでした。(顔の表情はここでも同じでしたが,この場面ならそういう表情がふさわしいわけです)

というわけで,この幕が終わったときは「コッペリアって楽しいな〜。小学生の子どもがいれば連れてきたい気分だわ〜。この際自分の子でなくてもいいから誰か誘えばよかったわ〜」とすっかり嬉しくなりました。

 

3幕は,なかなか楽しかったです。というより,衣裳が面白かったというべきか。

まず「時の踊り」で24人のコール・ドが踊るのですが,チュチュが6人ずつピンク(夜明け),黄色(昼),薄紫(黄昏),黒(夜)でした。効果的だったかどうかは別として,なるほどなあ,と感心。

次に「オーロラ」のソロ。(なお,オーロラではなく「夜明けの踊り」とか「曙」と訳すべきでしょう) この衣裳がすごかった。
大きめのチュチュでスカートがたしか4段になっていて,色が下から白,ピンク,赤,黄色。おお,太陽ですねー。しかも,頭には自由の女神のような形の金色の冠を着けていて,わはは,ますます太陽ですねー。

続いて「祈りの踊り」ですが,これはベールのようなものをかぶって修道女のような趣。わかりやすいですー。
このソロを踊ったマラチェーンコヴァは,腕の動きが柔らかく優美で,美しい踊りでした。お顔の感じなどからかなりのベテランらしく見え,フィナーレで揃ってフェッテを披露するシーンなどでは多少苦しい感じもあったのですが,元気はいいが少々ていねいさに欠ける踊りが続く中では,彼女の品のよい表現は非常に貴重に思われました。

「仕事の踊り」は,4人(だったかな?)のコール・ドを従えたソロでしたが,黄緑基調に,上体に斜めに黄色で麦の穂をかたどったデザイン。なるほど,仕事とは麦の刈入れなのですね。

続いて,たぶん「婚約の踊り」。これは,4組のカップルでしたが,女性はピンク系,男性は麦藁帽子をかぶっていたかな。農民風の結婚衣裳という感じでしょうか。

そして,主役カップルのグラン・パ・ド・ドゥになりましたが,紫・藤色系の衣裳で,少々垢抜けていない印象。まあ,田舎の庶民の結婚式ですからね。こういうのもいいでしょう。
アダージオと男性ヴァリアシオンの間だったかに,女性ソリストのヴァリアシオンが一つ入りました。白系の衣裳ですから,花嫁の付添いでしょうかね。(役名は消去法でいくと「フォリー」になりますが・・・どういう意味なのだろう,これは?)

リトキナは,細やかなステップが得意なのでしょうか,上手でしたし,かわいらしかったです。ただ,もうちょっと華がほしいかも。バルディヤンは特に感心もしませんでしたが,悪くもなかったです。

フィナーレは総踊りという感じで盛り上がり,盛大に拍手したい雰囲気で,幕が下りました。いや,しかし,色彩的にはすごかったなー。

 

全体としては,コール・ド・バレエもソリストも優雅さが足りない感じで,それほどのレベルとは思いませんでした。私の印象としては,レニングラード国立バレエよりは下,インペリアル・ロシア・バレエよりは上という感じでしょうか。

でも,若いダンサーが多いようで,はつらつとしていて作品の雰囲気には合っていたと思いますし,オーケストラ付きの引っ越し公演ですし,『コッペリア』はなかなか見る機会のない作品ですから,楽しめる公演でした。(交通費もかからずチケットも東京公演より安かったという要素も大きかったような気はしますが)

(03.12.7)

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